特訓ハードモード 前篇
特訓ハードモード 前篇
成功率五分の一。
まだまだ低い『抜刀』の成功率を上げるべく、風兎による特訓は続く。
他の派生技術にも手を出そうとすると、基本である『抜刀』の出来が悪くなる。
そう判断された俺は、とにかく『抜刀』一本で磨くことになった。
「そもそもさ、なんで俺より四足歩行をする風兎の方が上手いんだよ……」
『……偶然だ』
「あっ、そういえば前にライブの映像を見ながら──」
『ええい、続きだ続き! 休憩時間はもう終わりだ!』
ドルオタ兎はファンとしての精神も高潔なので、振り付けなども完璧。
当然、人族仕様のソレを理解しており、それに必要な技術はバッチリなのだ。
何なら、ペンライトを振り回す要領で武器も扱える最近の風兎。
……光の剣を二刀流で、とか多方面に才能がある兎である。
「始めてから数日、風兎に扱かれてある程度できるようにはなったけど……」
『どんな状況でも最低八割、こうして型に嵌めれば九割以上の成功率。それが『抜刀』使用者の練度なのだろう?』
「プロのな。いやまあ、もうここまでやっているとこれだけはプロ感が出てきた気もするけども……」
結果、二分の一ぐらいで成功するようになりました。
俺としては進歩なのだが、風兎的にはまだまだな成果な模様。
『──』
「!」
不意打ちで放たれた風の弾丸。
瞬時に[インベントリ]へアクセス、アイテムを指定──角度、出現場所を調整してこの場に取り出す。
「ぐぅううう!」
『……貴様の場合、武器で迎撃するよりかは盾で防ぐ方が最適か』
「それだけに専念した方が良かったんだよ。これだけなら、八割ぐらい成功するし」
通称『抜刀』となっている高速取り出し術だが、攻撃だけが使い方ではない。
今回の俺のように防御主体、あるいはポーションを取り出しての支援も可能だ。
風兎との特訓で、ある程度武器の取り出しそのものは学んだ俺。
しかしながら、精度50%では……ということで、防御面にも手を出していた。
タンクの皆様には申し訳ないが、俺の場合はそこまで苦労しないのだ。
なんせ受けたら衝撃で死ぬ、しかしそれだけ──無敵状態になり以降の事象は凌げる。
イメージ的には、通常攻撃では倒せないギミック式のボス。
俺はそのギミックに触れられないよう、間に盾を挟み防いでいるわけだ。
『『超越生者』……理不尽な権能だ。死んでいる間は無敵とは、生者とは真反対だな』
「俺もそれは思ってるんだけど、実際お世話になっているからな。まあ、無敵の無効化とか概念破壊の攻撃なんかには無意味だし、結局は相性なんだけどな」
星具だったり神器だったり、理不尽を体現するアイテムは多い。
他にも『逸脱者』の権能や最上位職業の固有能力、『プログレス』も今やその一種。
すべては出力次第ではあるものの、はっきり言って無敵化はそこまで強力ではない。
日常生活でも死ぬような虚弱な体を、守る殻程度にしかなっていないのだ。
壊すことができる者ならば、壊そうと思えば壊せてしまう……そんな仕様。
だからこそ、その干渉そのものを盾で防ぎ余波を権能で無効化するのだ。