特訓ハードモード 中篇
特訓ハードモード 中篇
アイスプル 闘技領域
俺の権能『星敵:超越生者』。
その中には死亡中の無敵化というやや意味不明な効果があるが、それそのものはあんまり強くない。
そのもっとも有用な使い道は、余波などの概念干渉ではない影響の無効化。
磨いた『抜刀』術で盾を出し、攻撃そのものを防ぐ──これが導き出した戦い方だ。
『ここからは実戦だ。とにかく防げ』
「……あの、無理じゃない?」
『……民たちが求めているのだ、それに応えるのが主としての役割だろう?』
闘技領域、それはアイスプルにおいてとある法則を停止させた場所。
この地では、たとえ死んでも一日を待たずに蘇る……生まれ変わることも無く。
そして、その恩恵にあやかりたい住民たちがこの地には集う。
血気盛ん、武闘派、暇潰し……理由は多々あれど、そこには『力』が存在する。
風兎はここに俺を連れてきて、しばらく生き残るよう命じてきた。
アレだ、獅子が子供を谷に落とす的な……そのうえで、上から熔岩を墜としているな。
「……なんかさ、普段より多くない?」
『先んじて伝えておいたのだ、貴様が協力者には大盤振る舞いだとな』
「それぐらいならまあ、大した労力でも無いからいいんだけどさ……単純に、固有種相手とかいろいろと厳しいぞ」
『『SEBAS』から、最後の敵とやらが多彩な能力を有しているという話を聞いた。貴様の『死天』の性質を有している以上、それに匹敵する力を相手に対抗できなければ、本番でも無力化されるだろう』
休人だけの[称号]である『○天』。
その一つひとつが『逸脱者』の権能に匹敵するリソースと出力を有しており、相性次第では上回ることすら可能。
そんな『○天』の内、『死天』は自身の死因を基としたアイテムを生み出す。
死が条件だからこそ、とびっきりとんでもない出力なんだよな……。
だからこそ、それと同等となると一般的な事象や存在ではアウト。
ゆえに今回、この場には固有種の中でも特殊な能力持ちが集まっている。
「……盾だけじゃ、無理か」
『そうだな。短剣やポーションの投擲も磨いたのだ、きちんと慣らしておけ』
「…………いや、結局やること増えてる」
『貴様の『抜刀』は、もともと多様なアイテムを取り出すことがメインだろう。一つだけに絞る、それも一つの手ではある……が、貴様には無理だ』
盾を一つ構えているだけで、全方位を守れるほど世の中甘くは無い。
本来の盾使いであれば、盾を大きくしたり視覚や死角を補う職業能力やスキルがある。
だが俺にはそれが無い。
だからこそ、『超越生者』による無効化を使いこなさなければならない──盾で防げないならば、相殺をと選んだのが投擲だ。
「ええい、やってやるよこん畜生!」
『誰が畜生だ! 自暴自棄になるな、貴様は身体スペックで力を発揮できないのだ。頭を回せ、思考を巡らせ、貴様の神聖術式を体現してみせよ』
「! …………おう!」
修練を形に、努力を結果に。
現実でもできるその事象の名は『試行』。
俺が冠し、神として体現することを選んだそれは──誰でもできる技術に向いていた。