死天真試練前夜 前篇
死天真試練前夜 前篇
アイスプル
風兎プレゼンツ、地獄のような特訓を終えた……世界でも珍しい、固有種たちによる扱きはいろんな意味で貴重なものだ。
「──そうか、明日か」
《はい。運営も準備を終え、試練が再開できると連絡が入っております》
「……ハイになっていろいろやったけど、どれかが実を結べばいいな。ぶっちゃけ、俺自身の強さってあんまり関係無いし」
これまでの特訓を全否定しているが、実際そんなものである。
トップランカーと呼ばれる優れた休人たちならばともかく、俺は基本権能のごり押し。
死んでも死なない……死してなおその場に残る休人としても異端な体、そして物作りの極致とも言える創造能力──これらを用いて死兵の如く突っ込んでいるだけ。
あえて挙げるとすれば、『SEBAS』こそが俺を高めてくれる立役者なのだろう。
術式やら体の操作やら、達人であれば容易にこなす戦闘系のタスクを代行してくれる。
だからこそ、『抜刀』やら補助系のアイテムで『SEBAS』の負担を軽減しようとしているわけだが……そもそもの話、俺が素でできれば何も要らないはずなんだよな。
「相手は触れたら即死、触れずとも条件次第で即死。そのうえ物理も魔力も完璧で、身のこなしも休人トップクラスの敵性ユニット。知能は高いだろうし、休人じゃない分裏を突くようなこともできないだろう」
《『騎士王』や【魔王】など、各世界でも有数の力を秘めていることは間違いないでしょう。しかし、旦那様であれば必ずや乗り越えられるかと》
「……うーん、なんでだ?」
《精神力です。旦那様は必要な場面ならば、決して諦めることがありません。やり直しの有無や立ちはだかる障害そのものではなく、旦那様がそれを決意する……折れない限り進み続ける、それが旦那様の固い信念かと》
「…………ルリに聞いたな?」
まあ、現実でもいろいろあったんだ。
一つ限りの命、なのにそれを失いかねない騒動の数々……それらを(真っ当とはいかないが)乗り越えたからこそ、今がある。
大切な子供たち、そして愛する女性。
特別な力なんて持たないのだから、有るものを振り絞ってきた……まあ、今回も同じようなものか。
「決戦前夜って感じのテンションになってきたな……なんで現代人が、そんなテンションになったことがあるのやら。まあでもそうだな、どこまでやるかが問題か」
《すでに兵器の類いは開示済み、当然情報も解析されているでしょう。そのうえで、運営は旦那様に関するいっさいを外部に漏らさずにいます》
「頑張ればできちゃうもんな……うん、その辺は気にしない!」
EHOの凄いところは、現実とほぼ同じ条件下で可能だった事象は、本当に再現することができる点。
EHOを始めて感覚が研ぎ澄まされるようになった結果、周囲の気配を感じ取れるように……なんて事例も上がっているらしい。
それは戦闘関連だけでなく、生産でも。
……表の世界はともかく、ルリやらショウ関連のちょっとファンタジーな地球を知っている俺だから、いろいろと考えてしまうよ。