死天真試練前夜 中篇
死天真試練前夜 中篇
冒険世界 始まりの街
やるからには全力で、それは持ち得るすべてで挑むということ。
運営は観ても見て見ぬふりをしてくれる、結構ヤバいことばっかりしてるんだけどな。
「──まあ、そんなわけでこっち的には数日後に隔離空間で暴れます。何かあったら、その時はよろしく」
「…………ハァ」
溜め息を吐き、頭を抱える『騎士王』。
言わなくても良かったのだが、ある懸念事項があったため連絡をしておいた。
「前に同じ状況で、召喚系の術式を連発していたら魔導世界のヤバいヤツが覗き込んできたからさ。そういう対策もしてくれてあるとは思うんだが、念のため」
「アルス・ナギマか……」
「なんだ、知ってたのか」
「各世界の特異戦力だ、把握するのが当然だろう。それに、アレは分かりやすいからな」
魔導世界における、術式の改良。
誰でも利用可能なその仕組みは、アルスナギマと神代魔道具によって成り立っている。
分からないように魔導世界側も秘匿しているだろうが、『騎士王』レベルともなればやはり理解できるのだろう。
「付け加えれば、『愚かな賢者』がアレを呼び出したことがある……『生者』がヤツから奪い取った、アレに似た術式でな」
「げっ、そんなヤバい術式だったのか?」
「禁忌指定の術式だ、貴公が気にする必要は無い。アルス・ナギマか……ヤツのみであれば、問題視する必要は無いのだろうが……」
「実力者で、かつこっちの影響で揺らぎが生じていれば覗ける可能性があるってこと。それが証明されている以上、どうしたもんかと思っているところだ」
俺にだって隠しておきたい情報はある。
運営は広めるわけではないのでいいとしても、各星々の勢力に俺の持つすべてを詳らかにする必要は無いだろう。
「それをこうして話す意味を、理解しているのだろうな?」
「ああ、別に『騎士王』たちに守ってほしいとかそういうことじゃなくてな。ただまあ、義理もあるしなるべく手は出さないでほしいということを伝えておきたかったんだ」
「ずいぶんと強気ではないか」
「ああ──ルリに守ってもらうからな」
「────」
うん、そんな死んだような顔になるよな。
毎度映像を見せていたので、最終決戦はルリ的にもかなり期待している…………そこに横槍が入ることを、嫌がるくらいには。
「何が起きるか分からない、少なくともルリは結果はともかく俺が全力を振るえる環境であることを望むんだ…………頼む、マジで冒険世界だけでも抑えてくれないか!?」
「…………貴公から、止められないのか?」
「無理。何なら子供たちが止めようとしてくれたぐらいだ……諦められちゃったけど」
「そうか……、そうか…………!」
冒険世界をメインに、あちこちで人々を救いあげているアズル教団。
だがまあ、創作物の主人公がそうであるように、周りへの影響が半端ないのだ。
良いか悪いかで言えば良いのだが、影響の余波が小さいかと言われれば確実にデカい。
……そりゃあ神獣を従えたり戦争を停めたりと、スケールがデカいので当然だけど。
そして、冒険世界がそうした影響に晒されれば、『超越者』たちも出ざるを得ない。
……最近だと、俺との繋がりもあって毎度『騎士王』が派遣されているらしいな。
「分かるよ、俺も向こうだとそんな感じだからさ……今度一杯やらないか? 串屋の店主にも、あと【円卓騎士】の皆さんにも話は付けておくからさ」
「…………そうさせてもらおう」
何というか、不憫だ。
俺もそれなりにやらかしている自覚はあるけども、ルリの場合は桁違いだからな……いつも夫婦共々お世話になってます。