第二回コラボイベント前篇 その05
第二回コラボイベント前篇 その05
ペンライトを振り回すホログラムのファンたち、そして実体を持つ一人のファン。
それは人に非ず、背中に『推し命!』と書かれた法被を纏う兎──風兎であった。
「…………振り付けが完璧だな、アレ」
《そうですね。やはり体格的に不可能な部分には修正を加えているようですが、逆にそのことを活かすような動きになっています。かなりの研鑽を積んだものと分かります》
「……本気だな、風兎」
なお、身長的な問題は休人たちにもあるからか、応援席には種族に合わせた踏み台が用意されている──その上にて、周りの迷惑にならないよう耳を鉢巻きで縛っている風兎。
周囲の爆音を抑えられているからか、はたまた……聞かずとも覚えているからか。
我流にカスタマイズしつつも、他との協調性を欠かさない振り付けで応援している。
「まあ、あっちについては風兎に任せておくとしよう。アレはアレでサポートになるし」
《振り付けを完璧に行うことで、防衛側にバフが発生する。あちらに集中したい休人たちに文句が入らない配慮となっています》
「まあ、バフを強化するためには応援グッズが必要なんだけど。その辺、風兎は全装備済みだから問題ないな」
何なら防衛を一切せずとも、警備兵のようなNPCたちが対応してくれる。
彼らが素の状態で勝つことは不可能となっているが、応援で強化すれば対処可能だ。
他にもアイドルたちに混ざる、破壊行為で最低限しか無い機材を修理する、話術で応援中のファンたちを魔物に嗾ける……など方法はいろいろ存在する。
こちらにも新規要素はあるかもしれないのだが、全部の検証をするつもりはない。
その辺は専門の人たちに任せるとして、俺は戦闘/生産面でのポイント稼ぎに徹する。
「──“万形代”、“改人創象”」
今、この場所に渦巻く想念。
それは決して負のものだけではない。
アイドルとファンそれぞれが抱く、このライブに対する熱い想い。
そして、それらを踏み躙ろうとする魔物の軍勢──それを拒絶しようとする意志。
そういったすべてを糧として、俺は二つの術式を起動した。
「応援グッズセットは装備済み、あと指示もしてないのにオタ芸をしながら魔物たちに向かっていったな……え~、想定外」
《我々の予想を遥かに超える、強い想念がここには存在したのでしょう……やはり、人とは凄まじいものですね》
「いや、そういうのってもっとこう……ラスボスが決戦の時とかに言いそうなヤツ。少なくとも、アイドルのライブじゃ言わんだろ」
とはいえ、言っているのだから仕方ない。
この場に残り聞こえない声で何かを歌うシルエットと共に、魔物とモブ怪人たちとの戦いを見守るのだった。