身内観光 その12
身内観光 その12
タクマは図書館で情報収集中。
偽装都市よりも多くの情報が得られるそこで、何が得られたのかを後で俺も聞いておくとしよう。
「──ん? 着信か……」
それは[メニュー]の機能の一つ、離れた者とやり取りできる[ウィスパー]……とは別に用意した、連絡機器の通知音。
わざわざこんな物を用意してまで、やり取りを行っている者は限られている。
──具体的には、アイスプルに居ながら離れた大陸に隔離された連中とか。
「こほん……どうかなさいましたか?」
『ええ、一大事です。状況は理解されていますか?』
「? いえ、少しお待ちください…………何が起きている?」
《旦那様、こちらを》
通話先は偽装都市に住んでいる、非合法犯罪クラン『AAA』のサブリーダー。
実質的に代表を務める女傑なのだが、何やら問題が起きているらしい。
とはいえ、俺は先ほどまでアイテム作りをしていた関係で何も分からなかった。
なのでその内容について『SEBAS』に確認を取れば、UIの映像が切り替わる。
「…………迷宮、でしょうね」
『これは偶発的なものでしょうか? それとも……意図して仕掛けられたものですか?』
偽装都市に迷宮は無かった。
大陸から都市、その細部に至るまで俺というか『SEBAS』が監修し、デザインされている。
その中に迷宮は組み込んでいないし、その予定も無かった。
……だというのに、都市の外から現れる魔物たち──そしてそれが出てくる穴。
何も無い平原に、ポツンと存在していた。
それは門として機能し、無尽蔵の魔物たちが溢れ出している。
「……偶発的なモノです」
『反応からしてそうなのでしょう。しかし、なぜ今なのでしょうか。何かトリガーとなるようなものに心当たりは?』
「いえ、特には…………あー、ありました」
ルリが願い、起きた奇跡。
それは魔物たちが予想しえない動きをした結果、風兎が持っていたポーションの原液が湖に飛ぶという漫画みたいな話。
原液は結果として、湖に住まう魔物に多大な影響を与えた…………が、それ以外の効果があったとしたら?
たとえばそう、湖から地脈を通じてアイスプルに何かしらの影響が及ぶ。
星脈を通じ、偽装大陸まで届いたソレが結果的に暴走──迷宮を生み出した。
それをそのまま伝えるわけにはいかない。
犬が歩いていたら棒に当たり、そこを掘ったら黄金小判がザックザク……ぐらいのありえない話だからだ。
「少々実験をしておりまして、それが地脈を通じてエネルギーの暴走、迷宮の発生を引き起きしたようです。こちらの不手際です、申し訳ございません」
『謝罪は受け取ります……ですが、そう悪いことでもありません。思う存分力が奮えるということで、すでに攻略を始めています。発生原因を聞くに、止める必要は無いということでよろしいですね?』
「ええ。何でしたら、使用した消耗品などはこちらで補填します。その辺りでどうでしょうか?」
『……本気ですか?』
「それぐらいに、ご迷惑をおかけしていると判断しましたので。お手を煩わせてしまっている以上、後からでもできる最大限のサポートをさせていただきますよ」
彼らは非合法ながらトップレベルに強いクラン、犯罪行為をしながら捕縛されないぐらいには戦闘力を有している。
そんな彼らなので、使用するアイテムも強大で消耗品も高級なものが多い。
それらの補填というのは、なかなかに大変なのだろう……だからこそ詫びとなる。
俺の実情を知らない者からすれば、それは間違いない。
まさか素材を無尽蔵に用意できる、なんて思いもしないだろうからな。