身内観光 その16
身内観光 その16
迷宮の攻略を進める方法、それは影法師たちに対して適切なやり取りを行うこと。
……誰も彼もが首を傾げている、まあ説明不足だから仕方がない。
「こほんっ、では詳細を。影法師たちですが先ほどご説明した通り、あれらはこの世界に元居た存在の残影。そして、無数の世界から訪れた来訪者でもあります」
「……おいおい、まさか──」
「ええ。武闘世界や魔導世界といった今なお存在する世界ではない……また、ムー世界のような場所とも違う。存在がすでに失われ、泡と消えた世界……泡沫世界のかつての住民だったのです」
そう、俺もこれは知らなかった。
アイスプルが何も無かった頃から居たが、それらの痕跡はいっさい無く、本当に無からのスタートだ。
ゲームで言えば初めからのリセット以下、プレイするフィールドも存在せず、その開拓から始めなければいけなかった。
古い時代の痕跡が、遺跡やら文献として残されるというのは定番だ。
俺も『SEBAS』と調べたことはあったが、やはりそれは見つけられなかった。
……が、迷宮の登場により一変。
まるで今までは条件を満たしていなかったため動いていなかった物語が、突然始まったかのような怒涛の情報開示である。
「お父さん、泡沫世界って……何?」
「もう存在しない世界です。ちょうどいいたとえで言うと……とにかくいろんな美味しい食べ物がある世界がありました。美味しいモノを食べれば食べるほど強くなれる世界でしたが……それでも滅びました」
「理由は?」
「……不明です。しかし、そんな世界から一部の者たちがここに避難していました。そして、そんな彼らの生きた証を迷宮が投影しているのです」
……ルリ、ひそひそとグルメ漫画の名前を口に出さないでくれ。
そういうのあるけど、たしかに分かるけども……俺も初見はそう思ったから。
「ごほんごほんっ! さて、そんな彼らと出会う条件はシンプルです、料理系の職業やスキルを有していること。そういった者たちが彼らと出会い、条件に応えることで次の階層へ向かう資格を得られます」
「はいはーい、美味しい物を食べたり捕獲していたりは条件になりませんかー?」
「……あくまでこちらへ避難していたのは、そういった方々では無かったようですので。彼らが求められているのは、料理人ということです」
ルリのツッコミも想定されていたことだ。
ただ、そういう専門家ってのはだいたい泡沫世界の終わりに抗っていたはずだ……そして、結果は言うまでもなく。
「そして重要なのは、人によって現れる人影が異なること──そのうえで、複数人が同時に入るとその全員に合わせた人影が、一気に現れてしまうことなのです」
「……つまり、一つの分野に統一して入らないと──」
「条件未達成、あるいは一人でもパーティー内に満たせない者が居る場合はそもそも何も起きません。魔物として襲い掛かってきますので、倒すしかありません」
なお、ゲーム的な言い方をすると、何度でも出現するとのこと。
あくまで過去の存在、迷宮がある限りは消えたりしないのだ。