残街鎮静 その09
残街鎮静 その09
アイスプル
ジンリがインスタントダンジョンに入り込み、追い出せなくなった、
……チート過ぎるフルフェイス、遺星具の所有者になっていたせいだ。
「──で、逃げ帰ってきたと。お前、いっつも負けっぱなしだよな」
「……鎮静化が済んだ以上、居る必要が無いからだ。そう、これはいわゆる戦略的撤退ってヤツ。決して、分が悪いからとんずらこいたわけじゃないんだ」
夜、ジンリとのやり取りを説明中。
今も迷宮を解析し、知れるところは粗方知り尽くしていることだろう……新規コンテンツなので、抑制はほとんどできていない。
また、『SEBAS』がロックを掛けていた部分も要所要所、それらがアンロックされているとのこと……万能キーになり得る物を持ち合わせているからこそだ。
「あと負けてるわけじゃない。毎度相性が悪かっただけだから……というか、ランダムで面白おかしく検証データも少ないような俺のキャラに、毎回ガンメタ張って潰しにかかるアイツが悪いだろう」
「いやー、その言いようはどうかと思うぞ。たしかに最高率かつ最強厨レベルだったが、今のお前みたいなチート級の力とかは無かったわけだし。金は持ってても無課金勢だったしよ」
「……無(理の無い)課金なだけだろ。コンテンツ的に必要だったら普通にやってたぞ」
そんな過去話はさておき、今はEHOにおけるジンリの話だ。
今は外に出られないが、まったく油断ならない……!
「──それで、私は何かした方がいいの? しない方がいいの? どっちかしら……もういっそのこと、『渡り船』を再結成するのもいいと思うわよ?」
「……元も子も無いこと言われた。だ、だけど……」
「ショウもマイも、自分たちでクランを作っているわけだし。アナタも、少し子離れした方がいいのかもしれないわね」
「そ、そんな……!」
ここに呼んでいたのは、タクマに加えてもう一人……愛する奥さんも。
残念ながら、対ジンリに彼女の助力を求めることはできない……あちらも対策済みだ。
長い付き合いだからこそ、あちらもあちらで人災の範疇で収まる事柄については対策しているのだ……だからこそこれまでは無理に動かず、問題の無い範疇でやってきた。
ここに来れたのは、あくまでアイスプルの所有者が俺ということになっているから。
これがルリだったならば絶対にやらない、確実にナニカが起きるから。
「嫌なの? なら、どうして?」
「……ぶっちゃけ、アイツが用意する環境だから何不自由無いとは思う」
「まあ、その辺はバッチリだろうな」
「それが悪いわけじゃない。何なら、ゲームのルートとかだったらそれが正解だと思う。でもさ、面白くないだろう? そういう決まり切ったものが嫌だからこそ、俺はランダムプレイをやってきたんだ」
そう、結局は自己満足に過ぎない。
たとえ他者を支援できないバッファーになろうと、拳を振るうことしかできない鍛冶師になろうと……俺はそれを楽しんできた。
今だってそう……だからこそ、最高のバックアップが約束されたジンリの下に向かうというのは、これまでの自分を否定するように思えてしまう。
「……今までやってきたじゃねぇかよ」
「そう、これまではな……逃げ道無くされるし外堀は埋められるし、何よりクラン系のイベントに参加したくてもできない。だからと少しだけ入ったらそのままずぶずぶ……けど今は違う、そしてこれからもな!」
「凄いわアナタ! もう完全にあとで失敗する人の 台詞 セリフ よ!」
「はっはっはっは! ……うん、そんな気がするから助けてほしいんだよ。お願いします助けてください、俺でもできる方法で」
大の大人が恥ずかしげも無く──子供たちが見ていないからこそ──土下座で助けを乞う……だがしかし、これぐらいしないとどうにもならないのもまた事実なんだよ!