アトランティス世界開放 その15
アトランティス世界開放 その15
空間の歪み前に到着。
運搬部隊が次々と分解してあった装置を組み立てていく中、何かが起こると警戒している俺と戦闘部隊。
何も無ければいいし、それが大半だろう。
……が、仮にもクエストという形で引き受けたこの依頼──何事も無く終わることの方が、ある意味稀有だと信じていた。
「……やはり。皆さん、準備を!」
『おう!』
『は、はい!』
歪みが目に見えて波打っている。
運搬部隊は作業を中断、仕舞えるだけ装置の部品を回収して後方へ。
代わりに歪みの前には戦闘部隊が立つ。
全員がプロットテクトとロジカルシリーズで武装し、すでに臨界状態にしている。
俺もまた、何が起こるか分からないため構えだけは取っていた。
……実際に対処するのは『SEBAS』なのだが、まあそれはさておき。
必要以上に警戒をし、待つこと数十秒。
本当に何か起こるのか、そう気を緩める者が現れだしたその時──
「……な──」
「構えろぉおお!!」
なあ、と言いかけたのだろう。
隣を向こうとした戦闘部隊の一人、その頭部が突如吹っ飛ぶ。
それは歪みの先から現れたモノ。
機械……ではない、俺でも説明できるたとえならば──黒くてデカい触手だ。
ただしそれは、タコやイカのような生存のためのものではない。
黒色の中で渦巻くマーブル模様、それはとても筆舌しづらい……名状しがたさを──
《視界にフィルターを掛けます》
「! ……助かりました」
前にも経験したことのあるそれは、精神に直接影響を与えるナニカ。
先ほどまで捉えていたものをもう覚えてはいられず、視界に映るそれを再度見る。
フィルターが掛かり、再び黒い触手とだけ認識できるようになった。
……どうやら見れば見るほど、深淵を覗き込めば込むほど囚われてしまうようだ。
「他の方々は……運搬部隊の方々はダメみたいですね」
「おいおい先生、ありゃいったいなんなんだよおい!」
「アレですよ、見てはいけない存在。狂気の神話生物……その残滓ですかね。皆さんのソレで防げているということは、完全体ということでは無いのでしょう」
「アレでか!? 向こうの連中、おかしなことになってんじゃねぇか!」
酔っ払い……というかラリってるな。
ある者は頭を激しく掻き乱し、またある者は自分の首を絞めながら何かをぶつぶつと呟いている。
エテーテルドライバーにより稼働する、ロジカルシリーズを装備する戦闘部隊は、複数の世界の理の恩恵を受けているため無事だったが……運搬部隊は素の状態だった。
俺もあのままであれば、彼らと同じ状態になっていたかもしれない。
治す方法はある……が、今の状態だとすぐに発狂しておしまいだろう。
「こういう時、精神保護が働いて[緊急ログアウト]が機能するはずだよな?」
「……クエストだからですかね。いえ、おそらくアバターだけあの状態で、彼ら自身の精神は 例の真っ白な場所 かくりくうかん のはずです。我々が全滅した時、敗北ということで全員纏めてそれらの処置が行われるのかもしれません」
「なるほどな……で、アレは倒せるのか?」
「さあ、やってみないと分かりません。ですが、倒さなければ道を切り開くことはできないでしょうね」
「はっ、そりゃそうだ」
なぜ現れたのか、はともかく。
このままでは、運搬部隊に装置を組み立ててもらうことができない……怖気ずいた体に喝を入れ、戦闘部隊は戦いを始めた。