アトランティス世界開放 その21
アトランティス世界開放 その21
「──あの、ガンヴァリオンさん」
「おう、どうした? 何かやった方がいいことでもあるのか?」
「いえ、そうじゃなくて……先生って、どういう人なんですかね?」
先生──ツクルが前線にて機械仕掛けの獅子と戦う中、運搬部隊の代表はそんなことをガンヴァリオンに問いかけていた。
もっとも、その手はいっさい止まることなく設備を組み立てるために動いており、決して作業効率が下がっているわけでは無い。
それができるからこそ、こいつが選ばれたのか……そう思いながらも、暇潰しとして会話に応えることに。
「まあ、見ての通り良く分からん人だろう。この機装だったりお前さんの造っている装置の原案だったり、とんでもない物を俺たちにくれる人だ」
「それはそうなんですけど……」
「ん? これじゃあ不服か」
「同じ休人でも、ここまでできることに差があるのかって思いまして」
生産面だけでなく戦闘面、それも物理・魔力関連問わず。
眼前で行われる戦闘において、先生は多くのことを同時に行っている。
周囲に展開された魔力球、手の中で弄ぶ無数のメス、どれだけ攻撃されても吹き飛ばされることの無い耐久性……その一つひとつがかなり高度なものだと素人でも分かった。
「……先生の『プログレス』の力か職業の効果、なんですかね?」
「前に軽く教えてもらったんだが、少なくとも『プログレス』は当人的にハズレらしいんだよな。死活系らしいから」
「死活系と言うと……『ネバーギブアップ』や『コンテニュー』みたいな?」
「それ自体なのかは教えてくれなかったが。ただまあ、RSプログラムとかWITHシステムなんかもあるし、意外と『プログレス』が理由ってのはあるかもしんねぇな」
「…………RSって、あのエンドコンテンツみたいなヤツですよね。アレを使えてる人っているんでしょうか?」
RSプログラム──『プログレス』が有する擬似権能を削除する代わりに得られる、特殊なシステム。
それは固有種を討った際に得られる力の在り方を、形あるモノからそうでないモノへと作り替える。
「前提からして、MVP張りの活躍をしないとなんねぇからな。まあ、魔石でちょっと強化するぐらいは有りなんだから、昔の原人よかマシなんだろうよ」
「まあ、死にませんしね」
その難易度は高い、が休人は死んでもこの世界において何度でも復活する存在。
根気さえあれば、理論上誰でもできることではあった。
「で、先生もそれっぽいってか?」
「……実際にそうかはともかく、近い気がして。少なくとも、複数討伐経験がありそうだなって。機装だってたしか、先生専用の凄いのがありましたし」
「戦闘も生産も、機体の操縦も何でもできるからなあの人……漫画、っていうか一昔前のVR物小説の主人公みたいだよな」
「あー、そんな感じです! そっか、ゲームバランス崩壊級の作者の理想全盛り……みたいな人なんだ!」
手を停め、何かに納得するような仕草を取る運搬部隊の代表。
すでに装置は組み上がっており、残るはシステム面での調整のみ。
ガンヴァリオンがナノマシンでそれを補助し、プログラムを精査──アトランティス世界側から空間に干渉していく。
「…………あんまり言ってやんなよ。まあ、事実は小説よりも奇なりって言葉もあるし、案外もっととんでもねぇかもしんねぇな」
「それはそれで……っと。よし、繋がった。これで準備は完了です!」
「よしよし、じゃあもう大丈夫だな……向こうも援軍が来てるし、少しぐらい……」
「あっ、はい。連絡しましたし、援軍が来るはずです。ガンヴァリオンさんのお好きなようにしていただいて大丈──あっ」
すべてを言い切る前に、ガンヴァリオンはその機体を前線へ。
そのことに苦笑しながら、彼は装置に向き合いデータ収集を始めるのだった。