悪人密入界 前篇
悪人密入界 前篇
闇厄街
犯罪者クランも欲しがるナノマシン関連の職業、このままだと犯罪者が暴動を起こす可能性があるらしい。
それをどうにかするためにも、またついでに俺もその職業を手にするため、あの手この手使っていくことに。
「──おや、誰かと思えば……」
「お久しぶりですね、【非業商人】さん」
「直接会うのはいつぶりですかね……一先ずは、中へどうぞ」
俺が訪れたのは闇厄街──暗躍街のアングラ区画──そこに居る【非業商人】の下。
案内されるがまま入室、彼は従業員に誰も居れないよう指示をして俺を迎える。
「さて、ご用件を伺いましょうか」
「──アトランティス世界について」
「ふむ……だいたい事情は理解しました」
「休人の中でも、特に問題児の多いクラン。『AAA』やその傘下、そしてそれ以外でも彼らに呼応する形で多くの犯罪者が動くことでしょう」
とそんなことを、カルマとサブオーナーであるマリィネから聞いていた。
このままだとほぼ確実にそうなるとのことなので、阻止せねばならない。
それをどうにかするため、【非業商人】を頼ったわけだ。
──多くの情報を有し、伝手を持つ彼だからこそ。
「いやはや、大変なことですね」
「……それを防ぐため、必要なのはあちら側の協力です。就職自体は望まれていること、しかし犯罪者という点がネックになっています。就職用の結晶に触れる、それを他の求人たちに知られないよう行いたいのです」
「…………」
「協力していただければ、彼らが保有しているアイテムを──こちらがリストです」
「拝見します」
それはマリィネが了承した、外部に出してもいいアイテムのリスト。
クランメンバーの内、【盗賊】系の職業持ちがやらかした結果溜まってしまった財宝。
価値はあるが売り捌けず、死蔵していたものなど……休人の中には多いんだよな、そういう創作物の怪盗に憧れてEHOでそれをやろうとする連中。
そんな品々だが、ここに居る【非業商人】ならばどうにかできる。
……もちろん手数料としてかなり引かれるだろうが、どうせ手持無沙汰な品々だし。
「これらは本物……なんでしょうね。他ならぬ『生者』さんの紹介です、そこは信用しましょう」
「ありがとうございます。では?」
「ええ、少々お時間を頂ければ。数日中に手配しましょう……それでは、値段の方を交渉しましょうか」
「それについては現物を持参する際、担当の方をお呼びします。とはいえ、空手形ではいけませんので──今回は、これをお納めすることでどうか一つ」
俺が[インベントリ]から取り出した、粉が詰まった瓶を観察する【非業商人】。
彼の職業、そして『プログレス』がその価値を査定し──首を縦に振らせる。
決して、彼も俺を信頼して話を進めてくれているわけでは無い。
信用されるために必要なものを、ただこの交渉の場に並べただけだ。
「なるほど……すでに準備はできていると。そちらにもご協力しましょうか?」
「ええ、ぜひとも」
それは人工ナノマシン、現在メカメカ団が増産中の品々。
マキナの力もあり、方法自体は確立している──そして増えるであろう就職者。
さながらインサイダー取り引き。
だがこれを咎める者はいない……誰も彼もがWinWinな交渉だったな!