アンヤク 前篇(23)
アンヤク 前篇(23)
??世界 ????
「──それで、ブロックされるようになったわけか」
『はい……空間系の術式、『プログレス』や遺製具を試してはいますが、どれも芳しくありません』
「一通りやってみて、ダメならば切り上げていい。おそらくは無駄だろう……手間賃は多めに払っておけ」
『わ、分かりました』
通信が切れ、男は椅子に深々と腰掛ける。
これまでできていたことが、唐突にできなくなる……その原因に心当たりがあった。
「アトランティス世界に行っていた代表が、戻ってきてすぐのことだ。メカメカ団が開発していたという『ワープジャマー』を用いたのだろう」
『( ..)φ』
「不要だ。改良版……違うな、上位互換のような性能になっている。すでにお前のことは知られている以上、簡単には突破できないようにしているだろう」
『(゜Д゜)』
男以外誰も居ないその部屋で、語りかけるように言葉を紡いでいく。
頭部に鎮座するフルフェイスのメット、そのシールド部分に顔文字を映しながら。
遺失世界の重要な任務も、クランにおける機密情報も。
多くの休人たちを直接・間接問わず従える彼にとって、容易に知り得ることができる。
この地もまた、そうして辿り着き手中に収めた世界。
泡沫のように消えかけていた世界を、その男──ジンリは支配した。
『"(-""-)"』
「そうむくれるな。元より五分と五分という話はしてあっただろう。代表と情報屋だけならまだしも、あそこには女神も居た。小数点以下であろうと、隙を作った時点で下策だったというだけのこと」
『((+_+))』
「いい刺激になっただろう。お前にとっても代表にとっても……とはいえ、ちょっかいを掛けただけで新マップを開拓してくれるのだから、やはり代表は代表だな」
思い返すのは過去の日々。
軽く促せば行動に移り、気が付けば想定以上の結果を叩きだす。
そんな彼の、玩具箱のような生き方に惹かれ多くの者が集まった。
彼自身が思う以上に、何でもない男の何でもなくない騒動は注目を浴びていたのだ。
「しばらくは様子見だ。溜まっている事案も多い、ガス抜きも必要だ……そうだな。この世界の格上げもせねばなるまい」
『!(^^)!』
「お前の力を強めるため、そして昇格報酬も手にしておきたい……手間は掛かるが、やっておかねばなるまい」
彼は多くのことを知っている。
世界の在り方も、襲い来る脅威も、そしてその意味と価値も。
しかしながら時間が必要だった。
複数の事業の采配を同時に取り仕切れる彼であっても、一筋縄ではいかない試練……再調整が必要となる。
「割り出してもらいたいものもある。力を使うぞ」
『('ω')ノ』
ジンリはそう伝え、意識を沈めていく。
シールド部分の顔文字だけが、刻々とその中で変化を繰り返していった。