アンヤク 中篇(24)
アンヤク 中篇(24)
アトランティス世界
『ふむふむ、ここがハウスね!』
「……マキナちゃん、古過ぎるよ」
メカメカ団に提供された仮の拠点。
信用と実績から広めに与えられたその場所に、新たな機材が設置された。
サーカスの天幕のような巨大なテント、それを丸々使うような巨大な装置。
──体裁を整えるため、わざわざでっち上げた演算機である。
なお、ここに居る休人の名はモブニック。
最終チェックの任を請け負った、どこにでもいる──と自認している──一般休人だ。
『こほんっ、これが私の仮住まいですね……普通に使ったら即廃棄ですよ、これ』
「こっち側の機械をいくつか繋げてみたんだけど……それでも?」
『はい。まあ、1%程度に抑えるならギリギリですか? 解析に時間が掛かってしまいますが……たぶん、大丈夫です』
機械精霊、本来存在しないイレギュラーな存在。
マキナと自らを定義するそのアバターは、住まいを離れ別世界を訪れていた。
『かなり機能を抑えてきたんですけど、これでも過剰だったみたい。あっ、溜まっていたデータは纏めておいたから、あとで確認してみてね』
「…………セ、セキュリティは?」
『あー、在りましたね。もう少し厳重にした方がいいと思いますよ』
「こっちの技術で強化したはずなんだよね」
そのスペックの高さは、たった1%で高い機密性を発揮する暗号を解くほど。
加えて資料の内容を理解し、それらを休人が分かる形に落とし込む。
それらをこちら側にデータを持ち込み、起動させて数秒ほどでこなす。
電脳世界の申し子、彼女はそう呼ぶに相応しい力を証明した。
『観測データ、見ましたよ。やっぱり、人工よりも天然ものの方が効果はあったみたいですねー』
「【科法師】も【魔学者】も、やっぱりこの世界の方が性能が出てるんですよね。世界特有の職業の検証が進んでますよ」
冒険世界の【探険者】など、その世界でしか就くことのできない職業が存在する。
アトランティス世界の二職は、中でも自世界での運用に特化していた。
本来、アトランティス世界にしか存在しないナノマシンを介する能力の行使。
休人たちはその代替物を用意したが、それでは十全な性能を発揮しなかった。
「あのー、マキナちゃん。例の物について、何かいい方法はありましたか?」
『例の物ですか?』
「……ほら、アレだよアレ。先生が見つけられなかった……」
『あっ、理物ですね。それと、いちいち隠さなくて大丈夫ですよ。きちんと外部に漏れないようにしてありますから』
マキナがこちらの世界に来た最大の理由、それはツクルの代わりに理物を得るため。
抽出したエネルギーの解析だけでなく、正攻法からの入手のサポートも行うのだ。
「あっ、テントの外に伝わらないようにしてくれて──」
『そうじゃなくてですね。アトランティス世界全部、ナノマシンで監視されてますので。今はモブニックさんがこの機材のチェックをしているだけ、みたいな情報を送り付けて誤魔化してます』
「!!!?」
それは休人たちが知り得なかった情報。
本物のナノマシンによって行われている、世界規模の情報収集。
『とはいえ、ずっとそうだったみたいじゃないんですよね。正確には、侵略されてからはきちんと監視できていなかった。で、みんなが頑張って場所を取り返しているので、再度監視しているみたいです』
「…………」
『仕方ないと言えば、仕方ないんですけど。例えるなら、停電しちゃったから一時的にできなくなっていたようなもので、実際には世界中に監視カメラがあったようなものなんですよ。で、それを今は再起動していると』
イベントが終わってからも、休人たちはアトランティス世界で活動していた。
その積み重ね、貢献の結果として少しずつ元の形を取り戻そうとしている。
──ただその中で、もともとあった管理社会……否、管理世界も戻っているというだけの話なのだ。