アンヤク 後篇(25)
アンヤク 後篇(25)
魔導世界 第五魔道
そこは自然豊かな緑の領域。
魔導世界の中でも有数の景観を誇り、多様な種族や職業にとっての聖地にされている。
「──ねぇ、アイちゃん。なんかもう、凄いことになってるみたいなんだけど……」
その女性もまた、第五魔道のある場所を目的としてここを訪れていた。
手には一枚の紙、魔力で編まれた文字が踊り女性に情報を示している。
記されているのはこの魔道で起きた事件。
ある地帯に突如として発生した花畑、すでに何度も異なる場所で繰り返されたそれを、防ぐことができなかったという内容。
彼女にとってその事件は、決して他人事とは思うことができないもの。
相棒である少女に掛ける声も、とても重々しいものだった。
「やっぱり、私の責任なのかな? 私があのゲームを──」
「そんなはずないでしょう。道具も使い手次第、包丁は料理に使うもの。人殺しに使われたからといって、作り手に責任が生まれるようなものではありません」
「……でも銃はそういう目的だし、同じゲームって括りならやっぱり私が──」
「……『リトルマイガーデン』の開発者はたしかに貴女です。しかし、その管理を務めていたのはわたしですよ? なら、その責任とやらはわたしの方にあるのでは?」
リトルマイガーデン、それはかつて現実世界に存在したオンラインゲームの名称。
事件の犯人は、そのゲームこそ己の根幹であると高々に宣言している。
もともとEHOを異なる理由で始めていた彼女だが、この事件には衝撃を受けた。
願望のままに世界を塗り替え、過去を取り戻さんとするその姿に……胸を痛め。
「……あの人に、連絡できる?」
「可能です。しかし、オススメできません」
「迷惑になるよね」
女性はかつて、その立場から命を狙われていた──それは今も変わらない。
だがある時、一人の女性が手を差し伸べてくれた……結果、安全な場所に今は居る。
そんな命の恩人もまた、このEHOをプレイしている……ウワサによれば宗教のトップに君臨しているらしいが、あの人ならそうなるなぁと知った当時は笑っていた。
彼女に頼ればあるいは、そんなナニカを今も昔も感じている。
しかし相棒である少女は、異なる観点から連絡を快諾しない。
「いいえ、そうではなく。お話ししましたよね、『プログレス』について」
「? うん、たしかあの人の旦那さんが開発したんだよね……あっ、責任を感じちゃうってこと?」
「…………。それもあります、がそれだけではなく。今回の件、そこに記載されている以上の大事になってしまうかもしれません」
少女は知っていた、『プログレス』……その雛形が何なのかを。
ゆえに女性にも移植はさせず、装備式として使わせている。
その問題だけでなく、連絡を取れば起き得るであろう流れも検討がついていた。
──まず大前提、入界の時点から問題であることも。