小箱問題 前篇
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現実世界
《奥様、メッセージが届いております》
「──あら?」
始まりは唐突に。
アトランティス世界での理物捜索から数日が経過し、何事も無いゆったり……はしてないが比較的楽な日々を過ごしていたある日。
瑠璃に対して連絡があると、うちの万能AI執事が通知を入れてくれる。
……がこれはありふれた日常の出来事ではなく、むしろその逆なパターンが多い。
瑠璃はEHOをプレイする前から、その類まれな運命力的なものによって多くのイベントを経験している……俺は爪弾きにされたりされなかったりだな。
そうしたトラブルを経て築いた人脈、その中には表沙汰にできないものも。
それでも瑠璃に伝えたいことがある者が、送ってくる連絡がこれだ。
これまでも無造作に送られてきたヤバい案件を、今は『SEBAS』が先んじてキャッチして安全性を確認してくれている。
立場がアレなだけで、当人は温厚な人というのも多いからな……。
人知れずそんな連中を(間接直接問わず)救っているのが、うちの奥さんである。
「そうなの、相手は誰かしら?」
「送り主はAIと。しかし、悪戯では無いと判断しましたので確認していただきたく」
「アイちゃんね!」
「……アイちゃん? AIだから、アイ?」
今回の送り主は俺の知らない相手らしい。
瑠璃は送られてきたというメッセージを転送してもらい、中身を確認──しばらくすると、なぜかこちらを見てくる。
「アナタ、お願いがあるの」
「……俺、死んだりしないか?」
「大丈夫、EHOの中の問題らしいから」
「それなら……まあ。大丈夫か?」
いやでもなあ、ルリ関連の連中だと物理法則とか超越する人が居るし。
実際、仕様外の事象を持ち込んでいるヤツも居るみたいだし…………心配になるぞ。
◆ □ ◆ □ ◆
「──と、言うことらしいのよ」
「……はー、知らなかったな」
事情説明を受けた。
どうやら俺もかつてやっていたオンラインゲーム、『リトルマイガーデン』の製作者と瑠璃は知り合いになっていたらしい。
で、よく分からないが俺に対して依頼をしてきた。
──『プログレス:ガーディニアン』とその使い手、サンシンチを止めてほしいと。
「……なんで俺?」
「アナタのこと、分かっているみたいよ。開発者だって」
「…………うーん」
「あと、装備式にしてるらしいわ」
「確実に分かってるな、その人」
擬似権能形成装置『プログレス』。
それを使うにあたり、人々は装置を移植するか装備するかを選ぶことになる。
運営は移植を勧めているし、何なら今は初期設定時にほぼ移植しているが……何事にも例外があるため、装備式も決してなくならずに存在していた。
装備枠を使わなければならないのだが、その代わりに得られるメリット──それは、俺たちに情報を抜かれないこと。
少なくとも、行動[ログ]を俺が遠隔で回収することはできなくなる。
擬似権能が使えるわけだし、利用規約には同意しているはずだしな。
──がそれらのトラップをすべて掻い潜って、今なお装備式を使っている。
それだけで、かなりの知識を有していることがよく分かった。