533話 構造把握と帰り道
533話 構造把握と帰り道
温度計の作成をお願いしたあと
マグメル「とりあえずこれは後でやるとして、体験は何する?元々体験でやる予定だったことをあなたは全部できるからやることないんだけど」
ベル「どうしましょうか?」
そう聞かれてマグメルは少し考えていた
マグメル「やることも無いし、今のうちに温度計の構造把握をしてしまいましょうか、もし私に分からないところもあなたがいればすぐに聞けるでしょ?」
ベル「わかりました」
その後すぐにマグメルは温度計の分解を始め、細かく構造を把握していった
そして気がつくとかなりの時間が経過していた
マグメル「…あら、もうこんな時間?」
窓の外を見ると、空が茜色に染まっていた
マグメル「今日はもう終わりにしましょうか。そろそろ帰らないといけないでしょう?」
ベル「そうですね」
マグメル「私、集中すると周りが見えなくなっちゃって、休憩も取らなかったわね。ごめんなさい」
温度計の構造把握を始めてから、マグメルは一度も手を休めなかった。ベルもそれに付き合っていたため、当然お昼ご飯は二人とも食べていない。
ベル「大丈夫ですよ、逆にマグメルさんは大丈夫ですか?」
(俺は食べなくてもなんの問題もないし)
マグメル「私は慣れているから問題ないけど、育ち盛りの子にご飯を食べさせてあげられなかったほうが問題よ」
ベル「別に大丈夫ですけど」
ベルのさりげない返事に、マグメルはやれやれという顔で小さくため息をついた
マグメル「まだ子どもなんだから、ちゃんと食べなさい。お昼を食べなかった分、夜ご飯はしっかり食べるのよ?」
ベル「はい」
ベルが先に折れて素直に返事をすると、マグメルは少し満足そうに微笑んでいた
マグメル「まぁおかげで構造も全部把握出来たから、体験が終わったら試作品を見せるわね」
ベル「はい、試作品が出来たらいつでも呼んでください、都合が良ければすぐに見に来ます」
マグメル「わかった。時間も時間だしあなたも早く帰りなさい、本当ならもっと早く返すはずだったんだけど、私が集中していたせいでこんな時間になっちゃったわね」
現在約17時間
ベル「最後に挨拶とかはないんですか?」
マグメル「16時が終了時間だけど、それぞれの職人が生徒に教えている分が終わるまで続けて、終わったら自由に帰っていいって感じよ」
ベル「なるほど、じゃあもうみんな帰ってるんですね」
マグメル「そう、だから早く帰りなさい。あなたは無駄に見た目がいいから、夜道は危ないわ」
マグメルは少し心配そうに眉をひそめていた
ベル「返り討ちにしますよ」
マグメルの言葉に対し、安心させるように自信満々に答えた
マグメル「そう、ならいいけど。またね」
ベル「はい」
そう言ってベルは魔道具店マグテルを後にした
帰り道
ベル(温度計を作って欲しいとは言ったものの、あれは本当にこの世界の人に作れる物なの?)
ピクシー《実物を分解して構造を全て見せたので、恐らく可能でしょう。ただ、マスターが作ったものが魔石を動力に動くものではなく、使用者の魔力を流して使用するものの為、その変換が少し難しいかもしれませんね》
ベル《あ、確かにそうじゃん!何も気にせず作っちゃった》
ピクシー《まぁ大丈夫でしょう、仮にも魔道具を作るプロなので、そんなことではつまずかないでしょう》
ベル《ならいいけど。とりあえずさっさと帰りますかね、狙われているし》
ピクシー《マスターは可愛いのでいつもの事じゃないですか》
魔道具店マグテルから城へ帰る帰り道、薄暗くなり始めた街路をのんびりと歩くベルは、常時発動している気配探知に怪しい動きをする人物が引っかかったためあえて足を少し緩めた。複数の反応が規則的に動き、路地の影に気配を隠しながら少しずつベルに近づいて来ていた
ベル(こいつら、本当に面白いくらい怪しい動きしてるね)
《確かに夜とか歩いてると着いてくる人ちょいちょいいるけど、ナンパ目的じゃなかったら即警備隊に突き出してるからね?》
ピクシー《色々言ってますけど、その状況を楽しんでますよね?》
ベル《まあね》
1人の時は表情がほぼ変わらないのだが、今は口角が少し上がっていた
ベル《可愛い女の子がもうすぐ目の前って時に曲がり角を曲がったらその子はいない、その時のこいつらの表情が面白いんだよね》
『転移』
追ってきていた人物がすぐそこという所まで接近してきたことを確認し、ベルは人気の一切ない裏路地へサッと入って転移を発動した
ベル(はい、残念でした)
転移先で1人で静かに笑っていた