559話 トラブル発生!②
559話 トラブル発生!②
ベル「突撃!」
その合図とともに、白銀の吹雪チームと騎士チームのメンバーが一斉に森へ向かって走り出した
突然の突撃に、森に潜んでいた盗賊たちは動揺を隠せなかった
盗賊「なんだ!? 気付かれたのか!?」
盗賊「まずい、迎え撃て!」
リーダー「落ち着け! 相手も所詮は人間だ。こっちは数も力も上だ! 数の有利を活かして冷静に迎え撃て!」
リーダーの声を合図に、慌てながらも盗賊たちは森の中から一斉に飛び出してきた
だが彼らはまだ知らない。
次の瞬間、自分たちに降りかかる“とんでもない一撃”の存在を
ベル「展開」
その言葉と同時に、まるで元からそこへ存在していたかのように、突如として上空に、巨大な炎の塊が現れた。周囲の空気が震え、誰もがそれを直視するよりも先に、無意識のうちにその圧倒的な存在を感じ取っていた
ベル「行け」
言葉とともに、炎の塊は静かに、だが圧倒的な力で森の中の盗賊たちに向けて落下していった
着弾の瞬間、爆発が大地を揺るがす音とともに広がり、その場にいた盗賊の四分の一が一瞬で吹き飛ばされた
爆風が収まると、残った炎は地面に広がり木々や草を次々に焼き払い、地面は焦土と化していく
ハクア「これはやりすぎじゃない!? 私たちも近づけないんだけど!」
ベル「それは想定済み」
『アクアプロテクト』
その魔法が発動すると、目に見えない水の膜が全身を包み込み、炎の熱さもダメージも感じないように守られた
ベル「アクアプロテクトって魔法で、周囲の炎の熱さもダメージも受けないようにしたから、気にしなくていいよ」
ハクア「ほんと?」
そう言いながら、燃え盛る地面に躊躇なく手を突っ込んだ
ハクア「ほんとだ、暑くない!」
ベル「だから気にしなくていいよ、もちろん身につけたり手に持っているものは一緒に守られるから安心して」
ハクア「じゃあ遠慮なく行かせてもらうわね!行くわよ!」
ハクアの力強い合図とともに、水の膜に守られた冒険者チームは躊躇なく炎の中へと飛び込んだ
ベル「じゃあ俺も俺の仕事をやろうか」
そう言って、ベルは一瞬でその場から移動した
ベル「さて、いいようにやられた気分はどうだい?」
盗賊リーダー「クソガキ、まさかお前があっちのリーダーか?」
ベル「どうだろうね」
盗賊リーダー「2発目が来る気配がないが、お前があの魔法の犯人か?」
ベル「2発目欲しい?」
そう言いながら不敵に笑っていた
盗賊リーダー「それが出来ねぇことはわかってる、今打ち込んだら仲間もろとも巻き込んじまうからな。お前にその覚悟はないだろ?」
ベル「覚悟はできてるけど、果たしてそれがどうかは試してみなきゃわからないね」
盗賊リーダー「ほざけ、俺の実力を前にして、そう簡単に上手くいくとは思わねぇがな!」
そう言い終わると、盗賊リーダーはどこからともなくマチェッタのような武器を手に取り、ベルに向かって突進してきた
キンッ
盗賊リーダー「俺の一撃を止めるか、なかなかの実力者のようだな」
ベル「そりゃどうも!」
ベルは相手の斬撃を指輪状態から杖状態へと変化させたインフィリネーハで受け止め、そのまま軽く蹴り飛ばした
盗賊リーダー「っと…危ねぇ危ねぇ、まともに食らってたらやばかったな」
ベル「降参して捕まってくれたら、無駄に痛めつけずに済むんだけど……降参、してくれる?」
盗賊リーダー「するわけねぇだろ。てめぇをぶちのめして、血まみれのツラをあいつらに見せてやるんだよ。男は皆殺し、女共は俺たちでたっぷり楽しませてもらうぜ!」
ベル「……そう。じゃあ…せいぜい、もがいて?」
そう言うと、ベルは手を払うようにして魔法を飛ばした
ドン!
盗賊リーダー「チッ…!」
ベルの魔法をかろうじてかわしたリーダーの背後で、魔法が地面に着弾。
その瞬間、ドリル状の岩の魔法が地面を抉り、大穴が穿たれる。
土が激しく跳ね上がり、削られた地面はめくれ上がるように波打った。
着弾地点を見たリーダーの表情が、凍りつく
ベル「どうしたどうした、もう終わりか?このままだと死ぬしかないぞ?」
盗賊リーダー「クッソ!」
(一撃がこれだけの威力だ、近付けば自爆しかねないから使えないはずだ!)
盗賊リーダーは、ベルの挑発に乗るかのように、新たに武器を取り出して両手にマチェッタを持ち、ベルへ一気に突撃してきた
盗賊リーダー「おらおら!さっきまでの勢いはどうした!」
ベル「お前、馬鹿なの?俺が魔法特化だと思ったら大間違いだよ」
そう言いながら、ベルは杖を振るって、盗賊リーダーのお腹に一撃を見舞った
盗賊リーダー「クッ……!今までお前ほどの強さのやつはいなかったな」
ベル「どうも、それで降参する気になった?」
盗賊リーダー「本当は見せしめのために原型は残したかったが、仕方ねぇ。跡形なく消してやる!」
『召喚!ソウルドラゴン!』
リーダーが空に向かって叫ぶと、宙に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから半透明の白いドラゴンが飛び出した
グオオオォォォ!!
咆哮とともに大地が震え、轟音が森中に響き渡る。天地がひっくり返るかのような衝撃が広がり、周囲の空気がざわめいた
ベル「…それが本気ってやつか」
森の中にいるベルたちの頭上を覆い尽くすほどの巨体は、外にいる者たちの目にもはっきりと映る。
その姿と声は、空間そのものを支配するような威圧感を放ち、見る者の心を恐怖で染め上げた
盗賊リーダー「こいつは物理攻撃が効かねぇし、魔法もほぼ通じねぇ。まさにバケモンだ、お前に倒せるか?」
その表情には、明らかな自信が浮かんでいた。まるでベルがどうあがいても勝てないと確信しているようだった
ベル「確かにめんどくさい相手だね。でも、勝てないわけじゃない」
盗賊リーダー「ソウルドラゴン!殺れ!」
盗賊リーダーはベルの言葉から何かを感じ取ったのか、即座に攻撃の指示を出した
指示を受けたソウルドラゴンは、その鋭い爪をベルのいる位置に向けて振り下ろした。爪が振り下ろされたその瞬間、直線上の森が一瞬にして無惨に引き裂かれ、爪の形に一帯が無くなった
盗賊リーダー「参ったか、これが俺様の力だ」
ベル「悪いんだけど、死んでないよ」
ベルはその場から一瞬で跳躍し、森の木々を越えるほどの高さへと舞い上がった。そしてその空中から、持っていたインフィリネーハをまるで槍投げのように、盗賊リーダーめがけて投げつけた
盗賊リーダー「お、くれんのか?ならありがたく貰うぜ」
ベルはそれなりの力を込めて投げたはずだったが、まるで何かに受け止められるようにインフィリネーハは急に減速し、そのまま盗賊リーダーの手に渡った
ベル「持ってるのはいいけど、それ持ってると危ないよ?」
盗賊リーダー「問題ねぇ。これは直接掴んでるんじゃなくて、周りの空気を掴んで支えてるだけだ。だから、他人が触れた時のデバフがあっても、俺には関係ねぇ」
ベル「空力操作か……珍しいね。そんなスキル、滅多に見ないよ」
盗賊リーダー「空力だけじゃねぇぞ。こんなこともできる」
リーダーの言葉と共に、その姿が一瞬掻き消える。そして次の瞬間――ベルの目の前に現れていた。反応する暇もなく、リーダーはベルの首に手をかけ、容赦なく持ち上げる。
盗賊リーダー「どうだ、これでお前も終わりだ」
ベル「がはっ……!」
ベルの足が地面から浮き、首にかかる圧力で呼吸が困難になっていく。目を閉じて喉を鳴らすが、顔色に一切の変化はない。顔が紅くなることもなく、体が震えることもない。ただ静かに息を漏らしながら、喉の奥で空気を詰まらせていた。
ベル「……空間操作か…やるじゃないか……でも、それだけじゃ……足りないよ」
喉を絞られながらも、ベルの目はリーダーを見据えたまま。一切の動揺もない冷徹な視線は、一瞬たりともぶれない
盗賊リーダー「へぇ〜、これがなんなのか分かるのか。なら、これで何ができるかも分かるよな?」
ベル「まぁね……」
盗賊リーダー「お前が降参するなら首を断ち切るのはやめて、生かしてやる。だが、降参しないなら、このまま斬り落とす」
ベル「首を…掴んだ程度で…勝ったと思ってる時点で、馬鹿だよ」
盗賊リーダー「何が言いたい」
ベル「俺の首を掴んでる癖に、まだ気付かない?」
盗賊リーダー「何がだ」
ベル「分からないなら……自分の首に手を当ててみるといい」
盗賊リーダーは意味が分からず、だが言われるがままにもう片方の手で自分の首を掴む
盗賊リーダー「……脈が……ねぇ!?……お前、何者だ!?なぜ生きているのに、首が動かねぇ!?」
驚愕と不安が、リーダーの顔に一気に広がる。その様子を見て、ベルの表情がふっと変わった。冷徹だった瞳が、ほんの僅かに愉快げな笑みに歪む
ベル「俺はベルド・ミカリス・ドルナード、ドルナード帝国の帝王だよ」
その名を告げた瞬間、ベルの姿がふっと掻き消える。次に現れた時には、まるで最初からそこにいたかのように、別の場所に立っていた
盗賊リーダー「ま、まじかよ……ドルナードの帝王だって?それなら…それならお前は、世界で唯一のSSSランクの冒険者ってことか!?」
驚きと焦りが交じった声が、リーダーの口から漏れた。息が荒くなり、目の前に立つベルが、ただの可愛い少女なんかじゃなく、圧倒的な存在であることをようやく実感し始めていた
ベル「御明答、色々やらかしてるから知ってる人には俺の名は広まっちゃってるね」
盗賊リーダー「ソウルドラゴン!こいつを足止めしろ!」
そう言うと、上空で待機していたソウルドラゴンが勢いよく降下してきた
ベル「それから、返してもらうよ」
『手元に転移』
リーダーの手に渡っていたインフィリネーハが、ベルの転移魔法によって手元に移動した
ベル「じゃあお前は邪魔だから消えろ」
そう言って、取り返したインフィリネーハを降下してきたソウルドラゴン目掛けて投げつけた
インフィリネーハが直撃したソウルドラゴンは、あっけなく霧散して消滅した
ベル「まぁ、逃げられるよね……でも、逃がさないよ?」
ベルはそのまま走り出し、何も無い空間を掴んだ
「がばっ……!」
ベル「この俺から逃げられると思ったわけ?」
空間操作で転移していたリーダーを、転移の移動の段階で首を掴んで捕まえた
盗賊リーダー「クソが…!」
『空間操作!』
リーダーは改めて空間操作で転移しようとしたが、何故かスキルが発動しなかった
盗賊リーダー「クソ!なぜ発動しない!」
ベル「俺に掴まれてるんだ、逃げられるわけないだろ」
盗賊リーダー「…ソウルドラゴンはどうした!」
ベル「あんなの、俺の相手にもならないよ」
盗賊リーダー「じゃあ、何故転移中に俺は捕まったんだ!」
ベル「それは単純に、空間支配というお前の持ってる空間操作の完全上位互換のスキルを使ったから。移動の段階で捕まえさせてもらったよ」
盗賊リーダー「クソが!」
手を振りほどこうと必死に暴れ始めた
ベル「抵抗するなら、黙っとけ」
ベルは冷徹に言い放ち、リーダーの首を掴んだまま、力強く地面へ叩きつけた
叩きつけた衝撃で地面が大きく沈み、途端に大地が震え、周囲にとてつもない衝撃波が広がった
ベル「あくまで捕縛だから、まだ生きてる。逃げられても面倒だから、スキルは封印しとこ」
『逃走に使えるスキルを全て封印』
ベルの足元には、叩きつけられて血を吐き、気を失ったリーダーが倒れていた
ベル「あ、ついでに俺に関する記憶も改ざんしておこう」
『記憶操作 俺に関する記憶を曖昧に』
スキルが発動され、盗賊リーダーの記憶からベルと戦った際に発生したベルに関する物事全てにモヤがかかった
ベル「帰りますか」
そう言ってベルはリーダーをロープでぐるぐる巻きにし、そのまま宙に浮かせてまるで風船でも持っているかのように、みんなの待つ場所へと帰って行った