561話 聖女との謁見
561話 聖女との謁見
職業体験が終了した次の日、ベルが伝えた通りに職業体験に冒険者役として参加した騎士が朝の訓練所へと集まっていた
「全員集まってるね?」
「はい!」
ベルがそう聞くと、騎士たちは元気よく返事をした
「よろしい、じゃあ準備するから待ってね」
そう言って騎士が10人並べる長机を出した
「この机の前にみんな並んで、配るからさ」
「分かりました」
騎士は速やかに、机の前へ一列に並んだ
「今からそれぞれの前にこの布袋を置いていく、全員の前に並べられたら中身を確認してね」
「了解しました!」
ベルは騎士たちの返事をきいて、順番に布袋を並べていった
「最後にひとつ、伝えてなかったけど、俺が君たちの活躍を見させてもらってたんだ。その結果に応じてボーナスを入れてるからね、袋の見た目は同じだから、誰がどのくらい貰ったかは見ただけでは分からない。中身を他の人と共有するかどうかは各自で考えて、自由に決めていいよ。じゃあ開けていいよ」
「わかりました、ありがたく頂戴します」
感謝を述べつつ、布袋を手に取り中身を確認していった
「その布袋にはアイテムボックスが付与してあって、その中に身を呈して守った英雄ボーナス、かっこいいところを見せたボーナス、活躍度ボーナス……みたいな感じでそれぞれ分けてあるよ。どのボーナスでどのくらい貰えたのか、すぐに分かるはず」
「お気遣いありがとうございます!」
そう言ってそれぞれ中身を確認していた
「じゃあ、俺はこれから先生しないといけないから、それぞれ楽しんで。あの布袋もボーナスのうちだと思っといて。あと、机は適当に隅の方に置いといて、後で回収するから。それじゃ」
そう言ってベルは、騎士たちの元を後にした
{ボーナス内容はこんな感じ。身を呈して守った人には白金額10枚、かっこいいところを見せた人には生徒たちの評価を反映させて配布。活躍度ボーナスは、その人がトラブル対応で全体的にどの程度活躍したかを基に、反映して配布した}
そしてベルは学園へ。三限目と四限目の授業を終えた後、再び城へと戻ってきた
「何時って伝えてる?」
「昼には到着していると伝えてあるため、昼以降になるかと」
「了解。謁見の間の準備は?」
「できています」
「参加するメンバーに、いつでも準備できるよう伝えておいて」
「分かりました」
ベルも軽く準備を済ませ、聖女の到着を待った
{準備といっても、ベルはただマントを羽織っただけ。ちなみにこのマントはいつの間にか用意されていた}
「聖女一行が到着したようです」
「思ったより早かったね。じゃあ、みんなに通達して。こちらが全員集まったら、聖女たちを謁見の間へ連れてきて」
「分かりました」
ベルは謁見の間で1人、聖女をどう相手しようか考えていた
(さて、どうなるかな)
その後、謁見に参加するメンバーの騎士団長、魔導士団長が謁見の間へ到着し、魔導士団長、ハデス、ベル、騎士団長の順で整列した
メンバーが揃ったのを確認し、ハデスが念話を使い、聖女を呼ぶために使いを出した
それから数分後、直ぐに謁見の間の扉が開かれた
扉が完全に開くと同時に、聖女と神官長が現れ、その後ろに護衛の従者4人が整然と並ぶ。ゆっくりと歩を進め、整然と膝をつき、礼を示した
「お初にお目にかかります、帝王様。私は今代の聖女に就命されました、リズベル・ミラル・フジリースでございます。本日は貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございます」
聖女は片膝をついたまま、胸に手を当て、恭しくそう告げた
「遠路はるばるご苦労だった。疲れているだろうから、楽にしてくれ」
「有難く、そうさせていただきます」
ベルの言葉を聞き、聖女一行は姿勢を崩し、楽な体勢になった
「今日はどんな用でドルナードへ?」
「はい。私たちは現在、各地を巡り、瘴気を浄化する旅をしております。その道中、こちらに立ち寄らせていただきました」
「そうだったのか。ドルナードの様子はどうだった?」
「それが…不思議なことに、帝都内に入ってから一度も瘴気を確認できませんでした。僭越ながら、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「何かな?」
「ありがとうございます。ドルナードでは、瘴気を浄化するための魔法具を使用したり、聖属性魔法の使い手による浄化を行ったりしているのでしょうか?」
「いや、そういうことをした覚えはないよ」
「そうですか…失礼いたしました」
「原因は何かわかるの?」
「私の個人的な推測にはなりますが、よろしいでしょうか?」
「構わないよ、聞かせて」
「ありがとうございます。ここに瘴気が存在しない理由は、おそらく陛下がお住まいになっていることが原因かと思われます」
「ほう…俺が住んでいるから、か」
「はい。お城へ近づくにつれ、薄々感じておりましたが、陛下と直接お会いして、確信に変わりました」
「確信、とな」
「はい。陛下のお体からは、絶えず聖属性のオーラが溢れ出ています。その影響で、この場所では瘴気が存在できない環境になっているのだと思われます」
「そうなのか、それは知らなかった」
「聖属性は非常に稀に授かるものです。その力を感じ取ること自体が難しいため、分からなくても不思議ではありません」
「確かにそうだね。ところで、帝都内では特にやることがないみたいだけど、すぐに次へ出発する予定なの?」
「いえ、やることがないのは確かですが、この者たちも疲れておりますので、少し体を休めてから、次の地へ向かうつもりです」
「瘴気って、すぐに対処しなきゃダメってわけじゃないの?」
「はい。瘴気の濃度があまりに高いと問題ですが、少し程度なら大きな問題にはなりません。それに今代の聖女は私が就任いたしましたが、私以外にも聖女の資格を持つ者が存在します。その者たちも各地を回って浄化を行っているため、現在は大きな問題にはなっていません」
「そうなんだね。聖女って、どうやって決まるんだ?」
「聖女とは、主に2種類の条件を満たしている者の中で、最も優れた成績を収めた者が選ばれることになります」
「2種類ってことは、1つは聖魔法の成績、もう1つは人柄ってところかな」
「さすが陛下、ご明察です」
「本当にそうなんだ」
「はい。聖魔法の成績には、浄化速度や効果の強さなどが含まれます。2つ目の人柄に関しては、聖女と呼ばれるにふさわしい性格や言動などが見られます」
「大変そうだね」
「いえいえ、聖女とは人と寄り添い、そして人々を救う希望となる存在ですから」
「聖女については概ね理解した。今日の要件は以上か?」
「はい。この国に滞在するにあたり、帝王様への報告が主な目的ですので、本日の要件はこれで完了しました」
「では、謁見はこれにて終わりにして…この後、そちらさえよければ、少し楽に話さないか?」
「陛下がよろしければ」
「ならば少し話そう、少し聞きたいこともあるからね。じゃあマギアナ、みんなを応接間に案内してあげて」
「え?私がですか!?」
突然指名された魔導師団団長のマギアナは、想定外というふうに驚いていた
「うん、案内してあげて」
「分かりました」
そう言って、マギアナは聖女の元へ歩み寄り、案内しようとしたが
「一応、ご挨拶だけさせていただきます。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。では、これにて失礼いたします」
そう言って、聖女一行は頭を下げていた
そうして、マギアナに連れられ、聖女一行は応接間へと歩みを進めた
「何を話されるのですか?」
聖女一行が部屋の外に出たのを確認し、ハデスが声をかけてきた
「いや、特に何も。堅苦しくて仕方なかったから、諦めただけ」
「ベル様らしいですね。私はどうしましょうか?」
「とりあえず呼んだら来てくれたらいいよ」
「分かりました」
「ビルディも急にありがとね」
「いえいえ、相手が聖女なら、俺もちゃんとした対応をしないとダメですからね。騎士団長として、しっかりとその立場にふさわしい圧をかけてやりましたよ」
ビルディは両手を組み、胸を張っていた
「圧って、まぁいいけどさ」
「それより、魔導師団長のマギアナを案内に出してよかったのですか?」
「なんで?」
「あいつ、頭はいいくせに方向音痴ですぜ?」
半分笑いながらそう教えてくれた
「…そうだった……忘れてた。ハデス、お願い」
「分かりました」
その後ハデスはマギアナと聖女一行と合流し、マギアナはそのまま戻らせて、ハデスが案内役を引き継いで聖女一行を応接間へと案内した