562話 聖女とお話
562話 聖女とお話
聖女一行が応接間へと案内されてから少しして
コンコンコン
「入ってもいいかな?」
「どうぞ!」
返事を確認し、ベルは部屋へと入った
「まずはごめんね、マギアナが方向音痴なのを完全に忘れてて、無駄に歩かせちゃったね。少し迷わせてしまったかもしれないけど、許して」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
そう言って、聖女は全然気にしていないことを分かりやすく笑顔で伝えてくれた
「それなら良かった。じゃあ、ここでは完全にプライベートだから堅苦しさはいらないよ。好きな話して」
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
「うん、俺も楽に話すからさ」
「はい」
「聞こうと思ってたんだけどさ、この人、ほんとに護衛?」
そう言って、ベルは聖女の座る椅子の後ろに立って待機している1人の護衛を指さした
(本当に楽に話すのね)
「一応そうですよ、顔はあれですけど」
「だよね、むしろ盗賊と言われた方が納得する顔」
「そうですね…確かに、そう見えなくもないですね」
聖女は笑顔でそう答えていた。
ベルが指差した護衛の顔は、無愛想で鋭い目つき、そしてどこか不良っぽい雰囲気を醸し出していた。聖女の護衛と言うよりは、むしろ盗賊のリーダーと言われた方が納得する顔立ちだった
「聞きたかったことも聞けたし、俺に聞きたいことあったりする?」
「ではまず1つ」
「何かな?」
「私たちが初めにお城へ来た時は帝王様は外出中と伝えられました、ですが普通に帝都内にいましたよね?それの理由をお聞かせください」
「それはマーベルドにある学園の職業体験をやっていて、その生徒たちに俺が帝王だということを隠すために、外出中と伝えました。そこにあなた達が来たため、そうせざるをえなくなりました」
「では、私たちのタイミングが最悪だったということですか」
「そういうことです、職業体験の期間中じゃなければその日のうちにでも謁見できてたよ」
「神の導きに従った結果、神に見放されていたのですね」
「まぁ残念ってことで」
「それと私たちが初めて合った時、私はあなたを普通の女の子だと思って話していたけど大丈夫だった?」
「別に?危うくブチギレるところだった」
ベルは「どうでもいいよ」とでも言うように軽く答え、冗談混じりに笑い
「っ!失礼しました!」
ガン!
聖女は驚いて、勢いよく頭を下げた結果、机に頭をぶつけてしまい、慌てて謝っていた
「冗談冗談、いつものことだし、なんとも思ってないから」
「本当ですか?」
「ほんとほんと、俺を見て男だと思う人の方が少ないからさ」
《マスターを初見で男だと思う人なんていないと思いますけど》
《うるさいよ》
ピクシーの突っ込みを軽く流した
「まさか適当に話しかけた相手が帝王様だとは思わず」
「まぁそうだよね、俺って一見ただの小娘だし」
「…はい」
聖女はその言葉に少し迷いつつ、控えめに同意した
「誰もこんな奴が帝王だなんて思わないよね」
「ごもっともです」
「じゃあ、他に聞きたいこととかある?」
「では最後に1つだけ。私たちは今、街で出会ったとある“小娘”に教えてもらったスターライトという宿に宿泊しています。でも、さすがに1泊が高すぎて、このままでは路銀が尽きてしまいます。何とかなりませんか?」
「あ、ほんとに泊まってたんだ」
「はい、せっかく教えてもらったのですから、その親切を無下にはできません。ですが、その“小娘”のおかげで私たちの財布には大ダメージです」
「ごめんって、まさか本当に泊まるとは思わなくて、適当に言っただけなんだよ。だから滞在期間中は城に泊まっていいから。それで許して?」
「お城に!?いいんですか?」
「いいよ。その代わり、この先もしっかり浄化作業を頑張ってね」
「はい、もちろんです。聖女という大役を任されたからには、最後までやる抜くつもりです」
「それならここで思う存分体を癒して、もちろんご飯も朝昼晩、しっかり3回用意するし、お風呂も毎日用意するから安心して」
「あ、ありがとうございます!」
「それから、この城の中ではあなたたちの権力行使を禁じます」
「権力行使?」
「はい、例えば聖女だからなになにしなさい、例えば俺は聖女の護衛だから俺に何をしろ、そう言うものを全て禁じます」
「泊めていただけるだけでもありがたいのに、そのようなことはしませんよ」
「では、その右から2番目の人、昨日街の中で俺様は聖女の護衛だから今夜俺に付き合えとか言って罪のない女性を無理やり連れていこうとしましたね」
ベルは冷たい声で、淡々とそう述べていた
「い、いえ。そのような事をした記憶はありません」
「被害にあった女性がこう言ったようですよ。赤い髪で聖女の護衛を名乗る長身の男に、無理やり連れていかれそうになった。これをどう言い訳するつもりですか?」
「それは、その……」
図星を突かれ、返す言葉もなく沈黙していた。
聖女一行の護衛は緑髪2人、青髪1人、赤髪1人の4人構成
「しかも今回が初犯じゃないよね。少なくとも3回は別の場所でやってる」
「……」
(なんなんだよこいつ!)
何の言い訳もするつもりは無いようだ
「そういうことなので、守っていただけますか?」
「え、えぇ。そういうことなら仕方ないわよね」
「はい、それとこの城には子供たちもいるので、危害を加えた場合、その人物を犯罪者として俺がこの手で捕えるのでご覚悟を」
「わかったわ。心得ておくわ」
「お願いします、では最後にこちらをご覧下さい」
そう言って机の上に冒険者カードを置いた
「え!?」
「は!?」
冒険者カードのランクを見て、聖女一行はかなり驚いていた
「赤い髪の人、俺にすべてをバラされたからといって、報復しようとしても問答無用でやり返すから覚悟しろ」
ベルは睨みを聞かせつつ、声のトーンを落としてそう警告した
「そういう事なので、ご自由に。後で傍付きのメイドを用意してあげるから、分からないことや困ったことはその子に聞いて、手を出したら容赦しないからね。それじゃ」
そう言って冒険者カードを回収して、部屋を後にした
ベルが去った部屋の中では
「とりあえず今はあなたの行動の追求はしないわ。だからケイル、ここでは絶対に何もしないで。あの子を怒らせたら、聖都どころかこの世界が危ないわよ。いい?」
「……はい」
そんな話が繰り広げられていた