566話 盗賊リーダーに聴取
566話 盗賊リーダーに聴取
ドルナードからマーベルド王都まで帰ってきた
《どこに投獄されてるかわかる?》
《マスターと戦ったリーダーは、現在城の地下に投獄されていますね》
《城の地下ね、ありがとう。ボルトに許可もらって、会いに行こう》
そう言って、マーベルド王城へと転移した
「ってことで、盗賊のリーダーに会わせて?」
「…どういう訳なんだよ、ちゃんと説明しろ」
ベルはお構いなしにボルトの近くへ転移し、何も伝えずすぐにそう聞いていた
「どこから話せばいい?」
「1番最初からだ」
「わかったよ」
そう言って、ベルはレストくんのお母さんを探していること、その最中で件の盗賊に襲われた可能性を確認しに来たことを伝えた
「そんなことがあったのか、ケカルダを連れて行っていいからすぐ確認してこい」
「私ですか?」
「あぁ、いきなりこいつが来たら警備の者がびっくりするだろ?だから頼む」
「構いませんが、こちらは大丈夫ですか?」
ボルトの前に置かれた大量の書類の山を見て、心配そうに尋ねた
「問題ない、今はただ紙とにらめっこしてるだけだ。だから俺よりも1人の命の方が大切だ、早く行け」
「わかりました。では行きましょうか、お嬢様?」
「…ケカルダさんまでその対応するなら、俺泣くよ?」
「おっと失礼しました、行きましょうかベルドくん」
「最初からそれでいいんだよ」
そう言って軽く笑うと、ベルはケカルダに連れられて、城の地下へと足を運んだ
城の奥に隠されるように続く石の階段を下りると、湿った空気と金属の匂いが鼻をついた。
ずらりと並ぶ牢屋の中でも、ひときわ異質な空気を放つ最奥。
そこに、魔封石で作られた檻の中で、同じく魔封石製の手枷と首輪をつけられた盗賊のリーダーが、静かに座っていた
「ここです。ベルドくんの求めているリーダーはこの牢に」
ケカルダの言葉にベルは小さくうなずき、鉄格子越しに中の様子をうかがった
「今から聞く俺の質問に答えて」
「ふっ…今度はお前が俺を痛めつけるのか?」
そう言って薄く笑うリーダーの体には、拷問の跡と思われる無数の傷が刻まれていた。
「お前がちゃんと答えてくれれば、痛めつけたりはしないよ。答えないなら、お望み通りにしてあげる」
「そうかよ。で、何が聞きてぇんだ?」
「昨日、俺たちを襲ったよな?」
「それがどうした」
「19日に俺たちが通ったのを見たって言ってたよな?」
「あぁ、確かに見たぞ。見てなけりゃ、今頃こんなとこに捕まってねぇ」
「その見たあと、昨日俺たちを襲うまでの間に誰か他に襲ったか?」
「覚えてねぇな、俺らは気が向いたら襲って物資を奪うだけだ。わざわざ数えねぇよ」
口元を吊り上げ、悪びれもせずに笑う
「そう、じゃあこの子と同じ髪の女の人、襲った?」
そう言いながら、例の写真をリーダーの視界に差し出した
(へぇ…こいつが探してるのはあの女か)
「さぁな……覚えてねぇ」
先ほどとは比べものにならないほど、不敵な笑みを浮かべていた
「知ってるんだな? 全部吐け」
「さぁ、どうだかな」
「あっそ。無理やり聞き出すけど……いい?」
リーダーの様子を見て、ベルはケカルダに視線を送り、許可を求めた
「問題ありません。すでにそれ相応の対応を取る許可はいただいています」
「そうなの? じゃあ、やっちゃうね」
「承知しました。すぐに牢の鍵を」
「行かなくていいよ」
ケカルダがすぐに鍵を取りに行こうとしたその時、ベルが軽く手を上げてそれを制した
「鍵がなければ入れませんよ?」
「大丈夫だよ。勝手に入るから」
そう言うと、ベルは牢の格子に手をかけ、そのまま力任せにグッと曲げ、中へと入っていった
(っ!? ベル君は相変わらずすごいことをやりますね……魔封石って、力で普通は曲がらないはずなんですが)
ベルが牢の中へと入ったその後ろで、ケカルダは静かに、しかし確かな驚きと共に呟いていた
魔封石とは、名前の通り“魔”を封じる力を持つ特殊な石。魔力を使用して発動する魔法やスキルを、触れている間はすべて無効化してしまう。その性質から、強力な魔術師や特殊能力者を拘束するために使われることが多い。
また、物理的な強度は鉄以上ミスリル未満とされ、簡単に破壊されることはない
「さて、どうしてやろうか」
牢に入ったベルは、小さく呟いた
(っ! こいつどんな力してんだよ!?)
「そ、そんなので脅しのつもりか?」
「別に? 少しでも早くお前を痛めつけて、情報を聞き出したかっただけ」
「そうかよ、簡単に吐くと思うなよ」
リーダーはベルを鋭く睨み、強がるように言い放った
「早く吐くのが身のためだよ? 本当に、いいの?」
「それで吐くと思うか?」
リーダーはニヤリと笑った
「俺は優しいからね。今話すなら、痛めつけずに置いてあげる。本当にいいの?」
まるで友達に語りかけるように、優しく笑いかけていた
「お前みたいなガキにできるのか? やれるもんならやってみろ」
まるで相手を小馬鹿にするかのような、薄ら笑いを浮かべていた
「……優しい俺の、最後の忠告を無視するなら仕方ないね。ところでお前、利き手はどっち?」
「あ? 利き手だぁ?」
「うん、利き手」
「んなこと、どうでもいいだろ」
「そっか。じゃあ右ってことで……右手と、お別れね」
ベルはそう言ってリーダーの前にしゃがみこみ、右肩の少し前あたりに人差し指を当てた。そして、上から下へとゆっくりなぞる
「ぐあぁぁぁ!!」
ベルの指先が下で止まった瞬間、リーダーの右肩がスパッと切り落とされ、鈍い音を立てて地面へと転がった
「これで俺の本気度は伝わるかな?」
「はぁ……はぁ……この程度で、お前の思い通りになると思うなよ」
リーダーは肩から血を流しながらも、鋭くベルを睨みつけていた
「早く話してよ。俺も本当は、こんなことしたくないしさ?」
「……ふっ、この程度でお前の思い通りになると思ってる時点で、大間違いだよ」
「この程度……ね。じゃああと4回だよ。あと4回までに話してね?」
(4……?)
「……4回、ねぇ? どこを切るってんだ?」
肩の痛みに耐えながらも、リーダーはベルを挑発してくる
「左腕、右足、左足……それから、最後に首」
ベルはまるで日常会話のような口調で、冷たく言い放った
「ふぅ……じゃあ、3回までなら耐えられるな」
「話す気はないってこと?」
「当たり前だろ。ガキの思い通りになると思ったら、大間違いだ……ばーか」
「そっか……可哀想だけど、左もバイバイ」
先ほどと同じように、ベルは左肩の前に指を当て、上から下へとゆっくりなぞった
「ぐあぁぁぁ!!」
右腕と同じように、スパッと切り落とされた
「さぁ、どうする? まだ耐える?」
(こいつ、躊躇がねぇ……このままだとマジで首までいかれんぞ…!)
「……どうだかな」
「もう一度改めて聞く。この髪の色の女性、見かけなかったか?」
「……あぁ。襲った馬車に、そんな奴が1人いたよ。それがどうした?」
「その人をどうした?」
(ちょろいな)
「知らねぇ」
「……」
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
ベルは無言で右足をなぞり、容赦なく切り落とした
「その人をどうしたんだ?」
「…クッソ! そんな女、知るかよ! 相手が女なんだ、どうなったか分かるだろうがよ!」
ベルのあまりの躊躇のなさに、リーダーは逆上していた
「だから、その人をどうしたかって聞いてるの。こっちも行かれたい?」
そう言いながら、残っている足を軽くトントンと叩いた
「チッ……アジトの牢屋の中だ。お前たちの馬車が通るのを見張ってたから、まだ何もしてねぇし、売り飛ばせてもねぇよ」
(殺されてはないっぽいね。よかった)
「そう。じゃあ、アジトの場所は?」
「自分で探せ」
「あっそ、バイバイ」
「ぐあぁぁ!!」
ベルは残った左足を切り落とした
「アジトの場所は?」
「……俺らが戦った場所の反対側の森だよ!」
「あの森の反対側ね。正確な場所は?」
(感覚で動いてたし、適当なんだから分かるわけねぇだろ……)
「知るかよ! そんなもん感覚だ! 覚えてねぇよ! クソが……手足全部飛ばしやがって……もう、何もできねぇじゃねぇか……」
今さら後悔したように、先ほどまでの挑発が嘘のように、リーダーは涙を流していた
「そう。俺が最初に聞いたとき、素直に答えていればこうはならなかったのにね。自業自得だよ。いっそのこと、首も飛ばして死んどく?」
「やめてくれ……」
力なく答えるリーダー
「そう」
ベルは、さっきまでと同じように、首の前に手を置いた
「ちゃんと話したんだから、そこまですることねぇだろ!」
「ベル君、さすがにそこまでは!」
「バイバイ」
リーダーとケカルダの声を、まるで聞いていないかのように無視し、ベルは静かに、左から右へとなぞった
「じゃあそういうことだから。次からは聞かれたことにはちゃんと答えるんだよ? 俺みたいに優しい人なんて、そうそういないんだからさ」
『外れた手枷を元の状態へ 反転』パチン
「……は?」
殺されたと思っていたリーダーは、牢の中で完全に脱力し、キョトンとした顔を浮かべていた
ベルに首をなぞられた時、てっきり命を奪われたと思った。しかし次の瞬間、彼の切り落とされたはずの両腕と両足が、元通りに戻っていることに気づいた
「よいしょっと……これで元に戻ったね」
ベルは放心状態のリーダーを放置したまま牢の外へ出ると、無理やり曲げた牢の格子を、まるで何事もなかったかのように元通りに戻していった
「戻ろっか」
「……はい」
ケカルダはわずかにうなずき、ベルの背中を追いかけるようにして歩き出した。
2人は、何も言わず、その場を静かに後にした
「本当に殺してしまうと思いましたよ」
「俺がやるわけないじゃん。首は早く話させるために出しただけで、答えなかったとしても回復させるつもりだったし」
「そうなんですね……雰囲気的に、完全に殺すつもりかと」
「ケカルダもそう感じたってことは、演技はうまくいってたってことだね。よかった」
(あれで演技ですか……恐ろしい)
「ベル君が子供のためならなんでもやることは知っていました、ですがさすがに驚きました」
「仕方ないよ。子供の笑顔は、何よりも大切だから。ボルトへの報告は頼んだよ。俺は行ってくる」
「……わかりました」
そう言い残して、ベルは聞いた森へと向かっていった