572話 魔道具の授業②
572話 魔道具の授業②
ベルは1つ目の魔道具の説明を終えると、新たに2つ目の魔道具を取り出した
「さて、これは──何に使うかわかるかな?」
そう言いながら、手にした魔道具を生徒たち全員に見えるよう、高く掲げて見せた
ベルの見せた魔道具は、剣のような形をしていた
「はい!」
「はい!」
その魔道具を見せるとすぐに、何人もの生徒が手を挙げた
「じゃあモンラクくん」
「はい!」
立ち上がるようにして元気よく答えるモンラクは、興味深そうに魔道具を見つめた
「それは主に戦うのに使います。恐らく、魔力を込めることで魔法などが発動する“魔剣”だと思います!」
「正解! じゃあ魔剣は魔道具、魔法道具、魔法具この3つのうちどれに入ると思う?」
「えっ……ん〜」
モンラクは腕を組んで首をひねりながら、必死に思い出そうとしている
「分からなければそのまま座ってもいいよ」
その言葉を聞いて、モンラクは少しホッとした顔でスッと座った
「じゃあ改めて。この魔剣は“魔道具”、“魔法道具”、“魔法具”──この3つのうち、どれに入るでしょう?」
「はい!」
ベルの問いかけに手を挙げた生徒はいたが、先ほどよりも数はぐっと減っており、その場の空気が少し静まり返った
「じゃあ、フリルちゃん」
「はい。魔剣は魔法具になると思います」
「具体的な理由は説明できる?」
「多分……」
少し不安げにそう答えると、ベルは優しい声で促した
「じゃあ、フリルちゃんの思う通りに答えてみて」
「わかりました。魔道具は、魔石を動力として使用者の魔力を使わずに動くものです。魔法道具は、物に付与魔法をかけて特定の効果を持たせたもの。そして魔法具は、使用者の魔力を消費して、あらかじめ込められた魔法を発動する道具のことです。なので魔剣は、魔力を込めることで魔法が発動するので、魔法具だと思います」
「ふむ……では、答えは?」
ベルは、先ほどの“物を軽くする魔道具”を再び手に取り、見せた
「それは、魔力を流すことで効果が出ていたので……魔法具だと思います」
「前半は正解。でも、後半は不正解だね」
「では、答えは?」
「さっきのこれは“魔道具”に分類されるよ」
「魔力を込めるのに、ですか?」
「うん。魔道具は基本的に魔石が動力だけど、実は魔力回路を少しいじれば、魔石じゃなくても、使用者の魔力を動力にできるんだ」
「そうなんですね……知りませんでした」
「知らないのも当然だよ。魔力を込めるタイプの魔道具は、少ないんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。魔石を動力にする方が比較的簡単で安定してる。逆に、使用者の魔力を使うとなると回路設計も難しくなるし、“誰でも使える”っていう魔道具の強みも失われるからね。だから需要も少なくて、作られる数も少ないんだよ」
「なるほど。じゃあ、さっきのは“魔力を込めるタイプの魔道具”だったんですね」
「そういうこと。じゃあ──次の問題」
ベルが言うと、フリルは小さくうなずいて席へ戻った
「“魔道具”と“魔法具”──どちらも魔力を込めて特定の効果を発動させることができます。では、この2つの違いはなんでしょう?」
続いての問題に、生徒たちは顔を見合わせながら考えていたが、誰も手を挙げようとはしなかった
「あれ? 誰も分からない?」
ベルの声に、少しざわついた空気が流れていた
「……じゃあ、はい」
ぽつりと声が上がる
「テレス、どうぞ」
誰も手を挙げない状況に、テレスは少し遠慮がちに手を挙げていた
「魔道具と魔法具は、効果や内容はほとんど同じです。ですが、魔道具は生活を便利にしてくれるもので、例えば水を出したり火をつけたりするもの。魔法具は、たとえば剣を振るとファイアボールが飛ぶような、攻撃用の道具になります」
「完璧! 正解だよ。魔道具は生活用、魔法具は戦闘用、こう覚えておけば間違えないよ」
「ベルくんが教えてくれたんだから間違えないよ」
「それもそうか。もし間違ってたら1週間おやつ抜きを宣告するところだった」
「ちょっとー! 危なかった!」
予想外のことに驚きつつも、正解できたことにホッとした様子だった
「じゃあ話を戻して。魔剣を試す……のは後回しにして、まずはこれから」
「えぇ〜」
ベルの「魔剣を試す」という言葉を聞いた瞬間、生徒たちの何人かは口角を上げて期待に満ちた顔をしていたが、後回しにされたことで一気にガッカリしてしまった
落ち込んだ空気をさらりと受け流すように、ベルは新しい魔道具を取り出した