574話 魔道具の授業④
574話 魔道具の授業④
ベルの許可により、テレスが普段は厳重に制御している魔力が開放された。
その瞬間、静かだった訓練所は、まるで空気の色まで変わったかのように、一瞬で別世界となった
その状態が30秒ほど続いたあと――
「じゃあ、終了」
「わかったわ」
短いやり取りのあと、テレスは再びその膨大な魔力を、何事もなかったかのように静かに内側へと制御していった
「見て、そして探知して、わかったかな? 強い魔法使いが魔力を制御している理由が」
「は、はい。あんな魔力を垂れ流してたら、見つけてくださいって言ってるようなものです」
「完全に飲み込まれてたから、見えても何が何だか分からなかった……」
「それだけじゃないよ。もう一つ理由がある。こっちは簡単だと思うけど、なんだと思う?」
「魔力量だろ? それくらいはわかる」
ハンクは手も挙げずに、ぼそっと答えた
「正解。魔力眼みたいに魔力を視覚でとらえられる人はもちろん、魔力探知でも相手の魔力量がどれくらい残っているか、なんとなく予想できるの。だからね、魔力が減っているってことを悟られないように、魔力を制御して情報を隠すんだよ」
「探知してそんなに変わるんですか?」
「試してみよっか。みんなはここで魔力探知しながら、そのメガネでテレスの魔力を見ておいて」
「わかりました」
「はい」
「テレスは先生と一緒に、少し離れようか」
「あ、はい」
そう言ってベルは生徒たちに指示を出し、テレスとともに少し離れた場所へと移動した
「この辺でいいかな」
「何も聞かずに着いてきたけど、何するの?」
「テレスたちは魔力量の探知とかできるでしょ?」
「うん。さすがにベルくんレベルで制御されてたら無理だけど、ミーファとかレミアくらいならできるよ」
「だよね。それを、4年生の生徒たちにもなんとなくでいいから感覚を掴んでもらうために、今からテレスの魔力を抜きます」
「全部?」
「まぁ、そうだね。行っていいなら0まで抜くけど」
「ならそれでお願い。0まで行けば魔力も増えるし」
「了解。じゃあ、準備できたらさっきみたいに魔力を解放して」
「はーい」
テレスの緩い返事とともに、魔力が解放され、再び訓練所へと広がった
「手を出して」
「はい」
何も聞かずに、手のひらを上に向けて差し出す
「じゃあ行くよ」
ベルはそう言ってテレスの手の上に自分の手を重ね、その状態で、10秒ごとに最大魔力量の5%ずつ魔力を抜いていった
テレスの魔力を抜き始めて、80%付近
「減ってるのかな?」
「減ってるの?」
「減ってる気もするし、しない気もする……?」
少しずつ抜かれているテレスの魔力を見て、生徒たちはまだはっきりとは分かっていない様子だった
「ちゃんと減ってるよ。テレスの魔力、最大から20%くらいは減ってる」
「レミアさん、よく分かるね。私たちには全然分からないよ」
そう話している間にも、テレスの魔力はじわじわと減っていく
そして、魔力を抜き始めて50%付近
「最初よりかなり減ったね」
「ここまで来たら、さすがに分かる」
「ほんと、かなり減ってきたね……」
この辺りでようやく、生徒たちは違いを実感し始めたようだった
そして、魔力が残り20%付近。
「変わってる?」
「さっきからぜんぜん変わらないんだけど」
「ほんとに減ってる?」
「ちょっと変わってる……気がする?」
テレスの魔力が10%を切る頃には、多くの生徒たちが変化を感じ取れなくなっていた
そして、最後の5%
「無くなったか?」
「まだ残ってる?」
「無くなったの?」
生徒たちは、テレスに魔力が残っているのかどうかも分からなくなっていた
「まだちょっとだけ残ってるわよ。それでも、ほんのわずか、残りカス程度だけどね」
「やっぱりミーファさんも、すごいね……」
先ほどのレミアと同じように、分からない生徒たちへ助言をすると、またしても感心の声が上がった
「あ、今無くなったよ」
「……分からないよ」
「ほんとか?」
「さっきと何も変わらないけど」
ミーファの言葉に、生徒たちは驚きつつも、見続けていた
テレスの魔力が尽きてしばらくすると、ベルとテレスは皆のもとへ戻ってきた
「さて、今テレスの魔力が徐々に減るところを見せたけど、魔力量の変化で魔力探知での反応が変わったでしょ?」
「はい。最初は反応が強すぎて何が何だかわかりませんでしたが、減っていくにつれて反応がわかりやすくなっていき、最後にはなくなりました」
「だよね。魔力探知でも相手の魔力量がわかったよね? だから魔法使い同士の戦いの時は、相手の魔力量も把握しておけばこちらが有利に戦えるよ。今すぐできるようになれとは言わないけど、覚えるだけ覚えといてね」
簡単にそう説明をして――
「……よし、じゃあみんなお待ちかね。これ、やろっか」
そう言って笑いながら、先ほど見せた魔剣を取り出した