575話 魔道具の授業⑤
575話 魔道具の授業⑤
メガネの検証が終わり――いよいよ、生徒たちが待ち望んでいた“魔剣の時間”がやってきた
「魔剣を使ってみる前に、注意事項だけ話すね」
そう言って、ベルは魔剣の説明を始めた
「まず、魔剣に魔力を込めすぎないように注意して。込めすぎると、飛んでいく魔法の威力が強くなりすぎて危ないからね」
ベルは真剣な表情で説明を続けた
「あと、テレスたち三人に限った話なんだけど、込めすぎたら魔剣が壊れるから気をつけて」
「魔力を込めたら、魔法の威力が上がるだけじゃないんですか?」
生徒の1人が質問を投げかけた
「魔剣にもよるけど、それぞれ“受け付けられる魔力量”が決まってるの。この魔剣の場合は、100万まで。それ以上込めると壊れちゃうよ」
「そんなことあるんですか?」
「……実演してみようか。よく見ておいて」
そう言ってベルは、生徒たちから10メートルほど距離を取り、魔剣を構えた
「いくよ」
その言葉とともに、魔剣へと徐々に魔力を込め始める。そして、ベルが示した“100万”の魔力量に到達した瞬間――
ピキピキッ
不穏な音が鳴ったかと思った、次の瞬間――
ドンッ!
「爆発した?!」
「壊れた!?」
「ホントだったんだ!」
魔剣は、込められた魔力量に耐えきれず爆発してしまった
「とまぁ、こんなふうに魔力を込めすぎると爆発するから、3人は気をつけてね」
そう言いながら、ベルは何事もなかったかのように生徒たちの元へ戻ってきた
「爆発に巻き込まれて普通に帰ってきた……」
「巻き込まれたよね?」
「無傷……」
{※補足:魔剣が爆発する際は、その魔剣に込められた魔法を元にした形で爆発が起こる。今回の魔剣にはファイヤーボールの魔法が仕込まれており、つまり100万の魔力が込められた超高威力のファイヤーボールが、ベルの真横で爆発したことになる}
「残念、先生はこのくらいじゃダメージになりませんよ」
「それがおかしいんだよ……」
「これで同じ人間とは思えない」
「先生より地面の方が被害受けてるよ」
爆発した場所の地面には、直径3メートルほどのクレーターができていた
「注意事項は2つ。魔力を込めすぎないことと、魔剣の許容量を超える魔力を込めないこと。この2つが守れるなら魔剣を渡します」
「守るも何も、一つできないものがあるんですけど……」
「大丈夫なら問題なし。じゃあ、みんなに配るね」
『空間収納にある魔剣を、生徒の前へ転移』
そう言った次の瞬間、それぞれの生徒の目の前に、魔剣が地面に“突き刺さった状態”で現れた
「手に取っても大丈夫だけど、危ないからまだ魔力は込めないでね」
『空間拡張』
『この場所を囲うように、5メートル間隔で的を設置』
『的から10メートル離れた位置に、正面の線を引く』
パチン――
ベルが指を鳴らすと同時に、空間がゆるやかに広がり、四方に練習用の的が現れた。地面には、各的の正面10メートルの位置に白い線が引かれていく。
「周りに的を用意したから、線のところに立って、順番に試してみてね」
「いつの間に!?」
「前のは見てたけど、周りのは気づかなかった!」
「広っ……!」
気付かぬうちに設置されていた的に驚きつつ、空間が広がっていることにも気づいた生徒たちは、期待に胸を膨らませながら、我先にと線の場所へ並び始めた
「みんな準備はいいかな? じゃあ使い方を説明するね。まず、手に持ってる魔剣に魔力を込めます。そして、魔力が溜まったら、当てたい場所に意識を向けながらその方向へ剣を振ると、魔法が飛ぶよ」
「やってみます!」
「わかりました!」
「魔力を込めて、狙って……振る!」
――ドン
――トン
――ドォーン!
ベルの説明を受け、生徒たちは一斉に魔剣を振った。
威力の弱いものから強烈なものまで、さまざまなファイヤーボールが的へと放たれていく
「すごい! ちゃんと飛んだ!」
「見て見て、的に当たった!」
「うわっ、外れた……でも楽しい!」
生徒たちはそれぞれに結果へ一喜一憂しながらも、初めて使う魔剣の力に目を輝かせていた。
ベルはそんな様子を見て、満足げにうなずく
「うんうん、みんな上手。じゃあ次は――」
ドンッ!!
一際大きな爆発音が響き、ひとつの的が丸ごと吹き飛んだ
「……ちょっと待って、それ誰!?」
「ごめんねベルくん! ちょっと多めに込めてみたら……やりすぎた!」
ベルは呆れたように笑いながら、その生徒の方へと歩いていった
「うん、ほどほどにね? テレスはやりすぎると、魔剣の方が先に壊れるからほんとに気をつけて」
「わかってるわ。100万までは込めてないから」
「ならいいけど」
『的と地面を修復』
そう言いつつ、ベルは吹き飛ばされた的と地面を元通りに戻した。
その後も生徒たちは、嬉しそうに魔剣を試し続けていった