578話 拾った子犬のその後②
578話 拾った子犬のその後②
拾ってきた子犬――リリィに名前をつけてあげたあと
「飼うって決まったけど、何が必要なの?」
「首輪とか、体に付ける紋様みたいなのとか、なんでもいいから、ベルドの飼ってるペットのリリィって分かる何かはつけておけよ」
「いる?」
「そりゃいるだろ。リリィは可愛いけど魔獣判定だからな。付けておかないと、出会うヤツらみんなビビるぞ」
「そっか。リリィ、首輪をつけてもいい?」
くぅん?
「ちょっと待ってね」
『首輪 作成』
そう言ってすぐに、ベルの手の中にはミントグリーンの首輪が現れた。
桜のチャームが付いており、表には濃いピンク色の宝石が一つ輝いている。
それは――リリィだけの色。
裏面は全面金色になっていて、そこには“ドルナードの一員 リリィ”と、優しい文字が刻まれていた
「リリィにはこの首輪を付けてもらうね。ここについてるのは、家族の印。俺の家族はみんな、自分だけの色の宝石をつけてるんだ。もちろん、俺のには全員の色が入ってるよ」
そう言いながら、ベルは首輪を広げてリリィに見せた後、自分のつけている印もそっと見せてあげた。
そこには、子供たち一人ひとりの色が、きらめくように並んでいた
「つけてもいい?」
ワウ!!
リリィは元気よく鳴きながら、おしりの小さなしっぽを嬉しそうにブンブンと振り回していた
「わかった、つけてあげるから大人しくしててね」
そう優しく声をかけて、ベルはリリィに首輪をつけてあげた。
この首輪には自動調節の機能がついており、リリィの首にぴったりと、きつすぎず、外れないちょうど良い大きさに変化する。
さらに、リリィの体が大きくなれば、それに合わせて自然とサイズも調整されていく
「よし……これでリリィは正式に、ドルナードの一員だよ。よろしくね」
ワウッ!
その鳴き声は、どこか誇らしげで――嬉しさがいっぱいに詰まっていた
「リリィが家族になって、まずやることは……ご飯かな。4日食べてないのは確定だしね」
ワウ!
「それはいいけど、お前……何食べるの?」
くぅん?
《リリィは基本的にお肉ですね。あとは、魔石なんかも食べますよ》
《魔石!? ……食べられるの?》
《はい。この子の種族的には、おやつ感覚で魔石を食べます。もちろん、食べなくても問題はありませんよ》
《魔石か……》
《正確には“魔力を吸収して成長する”という仕組みなので、魔石を食べることで体が一気に大きくなる感じです》
《成長する……ってことは、あげないと成長しない?》
《いえ、あげなくても大丈夫です。普通の食べ物や周囲から少しずつ魔力を取り込んで、ゆっくり大きくなっていきます》
《つまり、すぐに大きくしたければ魔石をあげて、今のままがいいならあげない方がいいってことね》
《そういうことですね。とりあえず“普通の犬”だと思って育てても問題ありません》
《じゃあそうしよっか。お肉って、生? それともミディアム? ウェルダン?》
《なんでも大丈夫ですよ。そもそも野生なら、生以外ありませんから》
《確かに……》
《それに、焼いてしまうと肉に含まれている魔力が抜けてしまうんです》
《そうなの?》
《はい。簡単に言えば“肉汁”みたいなものですね。お肉を焼くと肉汁が外に出ますよね? それと同じように、焼くことで魔力も外に流れてしまいます》
《ならそのままがいいのか》
《どちらかといえば、ですね》
《じゃあとりあえずそのままあげよ。何の肉がいいとかはない?》
《特にありませんね。一般的に使われているお肉なら、なんでも大丈夫ですよ》
《ドラゴンは?》
《それはやめておいた方がいいかと》
《ダメな理由あるの?》
《はい。ドラゴンの肉には、普通のボア肉なんかとは比べものにならないほど強い魔力が含まれています。なので、生で食べると人間でも危険ですし、リリィにあげたら……一食でバカでかくなりますよ》
《なるほどね》
『リリィのお皿を 作成』
ベルの手の上へ、リリィと名前の入ったお皿が現れ、その後すぐに空間収納からボア肉を取り出した
「さすがにブロックだと食べにくいもんね」
そう言いながら、ベルは肉を食べやすいように適当に切り分けていく
「これでどうかな?」
切り分けたお肉をリリィ専用のお皿に乗せ、そっとリリィの前に差し出した
くぅん?
「食べていいよ」
少し困ったように見えるリリィに、ベルは優しく声をかけた
ワウ!
お礼を言うように元気よく鳴くと、リリィは嬉しそうにお肉へがっつき始めた
「体の大きさ的にこのくらいだと思ったけど、まだ大きいか……ちょっとごめんね」
ワウ!ワウ!
ベルにお皿ごとお肉を取られて、リリィはまるで「僕の!」と言いたげに怒っていた
「ごめんって、今のままだと食べにくいでしょ? 小さくしてあげるから待っててね」
元々3センチのサイコロ型に切り分けていたが、今度はそれをさらに4等分にし、ひと口で食べられるような小さなサイズに整えていった
「どうぞ」
ワウ!
お肉が戻ってきたのが嬉しかったのか、リリィは再び元気よくがっつき始めた
「今度は大丈夫そうだね……誰も取らないからゆっくりお食べ」
そう言ったが、リリィは気にせず勢いよくお肉を食べ進めていた
それから少しして、リリィはお肉を食べるのをやめて、ベルの前へと歩いてきた
ワウ!
「もういいの?」
ワウ!
「そっか、じゃあまたお腹すいたら教えてね」
そう言いながら、お肉の残ったお皿をそのまま空間収納へとしまった
ワウ!ワウ!
元気よく鳴きながら、しっぽをブンブンと振っていた
「どうした?」
ワウ!
そう鳴き、くるくるっと3回、嬉しそうに回った
「お腹いっぱいになったから遊びたいんじゃないか?」
エイルがそう翻訳してきた
「遊びたいのか?」
ワウ!
「そうか、遊びたいんだね。なら――ここで一番広い場所に連れてってあげるよ」
そう言ってベルはリリィを優しく抱き上げると、そのまま転移で目的地へと向かった