580話 狙われた聖女
580話 狙われた聖女
ベルの城にある教室に併設された訓練所兼遊び場——そこでリリィとたっぷりボール遊びをしたあと
「疲れた?」
ワウ〜……
ボールをくわえて戻ってきたリリィは、ベルにボールを渡すと、そのまま手足を伸ばしてぺたんと床に伏せた。小さな体が、ちょこんとお昼寝の準備をしているようで可愛い
「いっぱい食べて、たくさん遊んだもんね……今日はもうおしまい」
そう言って、ベルはリリィを抱き抱えた
すると、リリィはあっという間にベルの腕の中で眠ってしまった
「俺の部屋でもいいけど、1人だと心配だし、エイルのとこに寝かせようか」
『転移』
そう言って、ベルはエイルの部屋へと戻ってきた
「ここに寝かせとくから、起きたらよろしくね」
リリィを元々寝かせていたクッションの上にそっと置くと、安心したように小さく寝息を立て始めた
「そこはもうリリィの場所で決定なのか?」
エイルはチラッと確認して、そう聞いた
「俺の部屋でもいいんだけど、それだと誰もいないとき困るじゃん? だからここならエイルもいるしいいと思ったんだけど、嫌だった?」
「いや、俺は別に構わないけど……ここだと自力で外にも出られないけどいいのか?」
「そこはまぁエイルがいるし、リリィに俺の部屋とか見せてあげてから、どこが一番落ち着けるか考えるよ」
「わかった」
それだけ伝え、ベルはその場を後にした
(俺はどうするかな……まぁ、学園に戻ろっか)
1人でそんなことを考えていると
〔ベル様、今よろしいですか?〕
〔ハデス、どうしたの?〕
ハデスから念話がかかってきた
〔現在城に滞在している聖女が、何者かに襲われたようです〕
〔え!? 大丈夫なの?〕
〔かなり危ない状況です。護衛の者が城へと急いで運び、治療魔法の使える者を集めて全力で治療に当たっています。ですが、治療魔法で何とか命をつなぎ止めているような状況です〕
〔すぐ行く〕
『転移』
それを聞いたベルは、すぐに聖女の元へと転移した
「……腹部に1発、胸部に3発、首をかすめるように1発か」
『完全回復』
状況を瞬時に把握すると、ベルはためらうことなく回復魔法を発動した。
聖女の身体は淡く光に包まれ、傷ひとつ残さず、元の美しい姿へと回復していった
「とりあえず、これで一安心かな……目が覚めたら、血が作りやすい食べ物を食べさせてあげて」
「かしこまりました」
ベルの言葉を聞いたメイドが一礼し、足早に部屋を出ていく
「ここまで手厚い治療をしていただき、誠にありがとうございます」
そばで控えていた護衛たちも、深々と頭を下げて礼を述べた
「君たちは大切な客人だからね。当然だよ。とりあえず、誰にやられて、どんな状況でこうなったのか教えて」
「俺たちも突然のことで詳しくは……」
「それでもいいよ、話して」
「わかりました。俺たちは今日、ここを出発するための準備のために買い出しに出ていました。その帰り道、どこかから爆発音が聞こえたと思ったら、聖女様が血を吐きうずくまっていました。何事かと駆け寄ると、今度は連続でバンバンバンと爆発音が聞こえたと思うと、聖女様が倒れてしまいました」
「どこから鳴ったとか、誰がやったとかは分からない?」
「……分かりません」
「そっか……ありがと。ハデス」
お礼を言い、ハデスを連れて一旦部屋を出た
「俺が来てなかったら、正直あと数分で死んでてもおかしくなかった」
「やはりそうですか。あそこまで重症化してしまうと、私たちの魔法では対処できませんね」
「でも、みんなが回復を続けて延命できたから助かったんだよ。みんなも、もちろんハデスも、よくやった」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げていた
「……命中箇所は首のかすり傷が1発、心臓付近に1発、肺に2発、肝臓に1発。首と心臓は動いたことで外れたんだと思う。もし正確に当たってたら即死だった。狙いが急所に集中してるし、かなりの腕だね」
「犯人は、帝都内のどこかに潜んでいると」
「だね。とりあえず、銃を使うやつを片っ端から探して。もちろん、慎重にね」
「かしこまりました」
ハデスは即座に捜索の指示を出しに向かった
(まぁ、すぐには見つからないだろうけど……聖女が目を覚ましたら、考えよう)
その後、ベルは聖女の様子を見守りつつ、次に取るべき行動を考えていた