594話 新しい繋がり
594話 新しい繋がり
ナギとカナエの魂を繋ぐ作業が終わり、10分ほど2人の魂の状態を確認し、問題ないことが確認されたため、2人を半強制的に目を覚まさせた
「終わったよ」
「……寝てた?」
「うぅん……もう終わったの?」
2人は眠そうに聞いてきた
「もちろん、ナギくんはカナエちゃんの空間収納を、カナエちゃんはナギくんの魔銃生成を使ってみて」
「うん」
「わかった」
ナギが手をかざすと、何の違和感もなく空間収納が開き、カナエがそっと手を握ると、その中に魔銃がふわりと現れた
「ほんとだ……」
「すごい! こんな簡単にできちゃうんだ!」
「一応言っとくけど、全然簡単じゃないからね?」
「そうなの? 私たちは寝てたからどのくらいの時間でできたかなんて分からないけど、繋げるだけだったら簡単じゃないの?」
「もしかしたら伝わらないかもしれないけど――魂って、ものすごく大量の魔力の塊みたいなもの。10万とか100万なんて桁じゃなくて、もっともっと大きい」
「塊って、どのくらい?」
「ん〜……」
《どのくらい?》
《そうですね。この2人の魂を魔力に換算すると、合わせて“2不可思議”くらいですかね》
《そんなに?》
《ええ。“不可思議”というのは、もはや常識では測れないほど膨大な量の単位です。1人あたり1不可思議と考えれば良いかと。ただ――そもそも魂を魔力で表すこと自体が、正直“アホ”ですけどね》
《……アホって》
《失礼しました。けれど本質的には、そうなんです。魂というのは数値で測るものではありませんから。だから無理に数値化しようとすると、桁数も頭おかしいことになるんですよ》
《知らなかった……》
《まぁ魂の魔力量を測るなんて普通しませんからね。魂を“作る”場合は、世界管理装置でボタンを押すだけで創造魔法が自動でやってくれますし。消費もゼロです》
《神の権能すご……》
《では話を戻しますが、今回の作業で使用した魔力量は、おおよそ“100不可思議”くらいになります》
《桁おかしくない?》
《そういうものです。既存の“スキル”を使えば1で済みますけどね》
《えっ、じゃあピクシーはスキル使わずに……力技?》
《はい。私がやったのは最適化されたスキルではなく、圧倒的な魔力量をぶつけて制御する方法です。何事にも使いどころがありますから》
《今回は?》
《速さです。スキルだと、処理に10年くらいかかります》
《10年!?》
《ですが“力技”なら、魔力で直接魂を制御するので一瞬で済みます。ただし、安全装置など一切ないので、それなりにリスクはあります》
《なるほど……反転とかの力で無理やり繋いだら?》
《可能ですが、その分危険です。ただまぁ制御次第ですね》
《つまり俺の問題ね……まぁいいや、ありがとう》
《どういたしまして》
ベルは口には出さずにピクシーとのやり取りを終えると、2人に向き直って言った
「魂を純粋な魔力に換算すると、一人あたり“1不可思議”。だから2人で2不可思議だね」
「……え? それってやばいやつ?」
「うん。しかも今回は、それを繋ぐのに“100不可思議”くらい魔力を使ったかな」
特に気にした様子もなくそう言った
「えぇ!? それもう……神話とかで世界を創るレベルじゃないの?」
「まぁ、そんな感じだね。でも、そのほとんどは“直接使った”っていうより、“制御するために”使った魔力だよ」
「なんかもう……すごすぎて、よく分かんないけど、ありがとう!」
「……ありがとう」
2人はぽかんとしながらも、素直に頭を下げて感謝を伝えた
ベルはふっと微笑み、軽く肩をすくめてみせる
「まぁ、いいよ。――それじゃあ、これから2人がしばらく過ごすことになる場所へ案内するね」
「どこ?」
「やった!」
「じゃあ、クイズです。俺は誰でしょう?」
「すごい人」
「……強い人かな?」
2人は困ったように首をかしげて答えた
「なにそれ」
「だってあなたの名前、まだ聞いてないもん」
ベルのツッコミに、カナエが真顔で返す
「まだ名乗ってなかったっけ?」
「うん。帝王とかは聞いたけど、それだけ」
「ああ、そっか。じゃあ改めて名乗るね」
ベルは軽く笑って、堂々と宣言した
「俺の名前はベルド・ミカリス・ドルナード。この国、ドルナード帝国の帝王だよ。よろしく」
「ベルド様って呼べばいいの?」
「“様”なんていらないよ。好きに呼んで」
そう言いながら、ベルは手をひらひら振って否定してみせた
「じゃあ、周りからはなんて呼ばれてるの?」
「ベルドとか、ベルとかかな」
「じゃあ……ベルドちゃんだね!」
「俺、男だからね。勘違いしないで」
ベルは即座にツッコミを入れた
「ご、ごめんなさい。ベルドさん……」
「それでよろしい」
そう言って、ベルは少しだけ得意げに胸を張った
「俺が帝王ってことは、行き先はひとつだよね――お城へ行きます」
「おーっ!」
「あの、遠くから見えてたおっきいお城!?」
「そう。ただし、2つだけ条件がある」
ベルの声が少しだけ真剣になった
「城の中では、働く人たちの言うことをちゃんと聞くこと。それから――子供たちには絶対に危害を加えないこと。この二つ、守れる?」
「わかりました」
「守る守る! 早く行こ〜!」
ナギは静かにうなずき、カナエは目を輝かせながらハイテンションで言った
「じゃあ、行くよ」
パチンッ――
ベルが指を鳴らした瞬間、3人の姿はその場からふっと消え、次の瞬間には、城の中へと転移していた