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595話 女の子の先輩

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595話 女の子の先輩

ベルの作った空間から、ドルナード城の前へと転移してきた

「はい、とうちゃーく!」

目の前にそびえ立つのは、真っ白で美しく、堂々たる佇まいの城

「でか! 思ってたより大きい!」

「……すごい」

2人は目を輝かせ、興奮した様子で城を見上げていた

〔ハデス、今いける?〕

〔はい。どういった御用でしょうか?〕

〔傍付きを2人、用意して欲しい。ある程度戦えるのを〕

〔……ベル様の隣にいるお2人のためですね?〕

〔そうそう〕

〔かしこまりました、少々お待ちください〕

〔了解〕

「2人とも、ちょっと待っててね」

「どうしたの?」

「ん?」

「2人に傍付きを用意させるから、少し待ってて」

「そんなのお願いしていいの?」

「……ありがとう」

「短い間にはなると思うけど、仲良くしてあげてね」

そんなことを話していると、すぐに2人のメイドがその場へとやってきた。

やってきたメイドたちは、ベルの前でぴたりと揃い、丁寧に一礼して名乗った

「お待たせいたしました」

「お待たせいたしました」

「……早すぎない?」

ハデスにお願いしてから、まだ2分も経っていなかった

「近くで作業をしていた私たちに、ハデス様よりお声がけがありました。そのためすぐに参上いたしました」

「ありがとう。この2人の傍付き、お願いできる?」

「専属でよろしいのですね。かしこまりました」

そう返すと、メイドたちはすぐにカナエとナギの後ろへと控えた

「それじゃ、2人とも自由に探検してきていいよ。俺はカナエちゃんの女の子の先輩――とりあえず1人、声掛けてくるから」

「勝手に動いていいの?」

「もちろん。ダメな場所はそのとき注意されるから、気にせず見て回って大丈夫だよ」

「やったー! ナギ、行こ!」

「う、うん」

カナエに手を引かれ、ナギは少し戸惑いながらも一緒に城の中へと入っていった

2人を見送ったベルは1人、とある人物のもとへと向かった

「みつき、お願いがあるんだけど、いい?」

ベルが向かったのは、この世界に召喚された現勇者の1人、みつきのもとだった

(珍しい格好ね)

「どうしたの?」

「女の子の先輩として、いろいろ教えてあげてほしいんだ」

「ベル様に?」

不思議そうに首をかしげる

「俺じゃないよ。今日連れてきた子にね」

「どんな子なの?」

「ちょっと事情があってさ。もともとは男の子として生活してたんだけど、今は女の子の身体なんだ。だから、“女の子としての基本”を教えてあげてほしくて」

「……またクセの強い子、拾ってきたね」

みつきは半分呆れたように、けれどどこか楽しそうにそう言った

「見つけたっていうか……みつきも、聖女を襲った敵がいたって話、聞いてるよね?」

「うん。聞いたけど、それがどうしたの?」

「その子が、そう」

「ええっ!?」

みつきは目を見開いて、驚きの声をあげた

「まぁ、厳密にはちょっと違うんだけどね」

「私も……殺されたりしないよね?」

「大丈夫。俺が戦意を完膚なきまでに砕いたから。今はもう、戦う意思はないよ」

「そ、そう……ならいいけど。で、その子ってどんな子なの?」

ベルはカナエとナギの事情を簡単に説明した

「ナギって子は、今はもう完全に落ち着いてて戦うつもりはない。それに、魂には発信機みたいなの付けてあるから、何かあったらすぐわかるよ」

「……徹底してるんだね。わかった、じゃあ引き受けるよ」

みつきは真面目な顔でうなずいた

「女の子として“全部”を教えるって、どこまで?」

「ううん、簡単でいい。無理に強制するつもりはないから。たとえば座るときに足を閉じるとか、その程度で十分」

「そんなことでいいの?」

「うん。ただね、メインは“女の子の日”の対策。それだけはちゃんと教えてあげて」

「ああ、そっちか。確かに、元男の子だったらそのへんの知識ゼロだもんね」

「そうなの。だから、本格的に来る前に最低限だけでも教えてほしい」

「いいけど、私の方法だと参考にならないかもよ?」

「聞いていいのかわかんないけど、どうしてるの?」

「私は創造魔法でナプキン作ってるの。この世界に来たばかりの頃は、この世界のやり方でやってたけど……不便すぎてさ」

「……みつきって、創造魔法使えたっけ?」

「気づいたら、いつの間にか使えるようになってたの。まあ、ひとつ作るだけでとんでもない魔力持ってかれるけどね」

そう言って、みつきはどこか諦めたように笑っていた

「もっと早く言ってくれたら、俺が対策してあげたのに」

「だって……さすがにベル様にそんな相談するの恥ずかしいじゃん?」

少し照れたように、みつきは肩をすくめた

「今は?」

「別に? 最近はベル様を“女の子”だと思って接してるから平気なんだよね」

「ふざけんじゃないよ」

「……あっ」

(やば……口が滑った)

みつきは、ベルのツッコミにちょっと焦ったような顔を浮かべた

「ち、違うの!」

「何が違うの?」

ベルはニコッと笑いながら、ゆっくりと聞き返す

「いやね? ベル様って可愛いから……男の子だと思って接するより、女の子だと思った方が、色々と楽なの」

「うん、それ、全然言い訳になってないけど?」

ベルは変わらずニコニコしたまま、じわじわと追い詰めるように返していた

「だってこういう話、ベル様を男の子だと思ってたら絶対できないけど、女の子だと思ってるから話せるんだよ?」

「随分と都合のいい話だね」

「どうせベル様は可愛いんだから、いいじゃん」

「良くねぇよ」

「も〜、しつこいな〜……せっかく可愛いんだから、自覚持ってよね?」

「もうなんでもいいよ。それより、ナプキンのことは俺の方で何とかしてあげるから。明日には城内に完備されてると思ってて」

「えっ、そんなことしてくれるの?」

「もちろん。俺が男だから、今まで気づいてあげられなくてごめんね。きっと大変だったでしょ」

「たしかに、創造魔法が使えるようになるまでは結構大変だったかも。でもそれはベル様のせいじゃないし、気にしないで」

「ありがとう。一応、現代のものをちょっと改良して、こっちの世界で売り出す予定だから。楽しみにしてて」

「売るんだ」

「そりゃね。この世界に広めてあげたいし」

「ベル様らしいね。楽しみにしてるよ」

「すぐだけどね。一応、カナエの女の子の先生は、みつきともう1人お願いしようと思ってるから、2人で協力してね」

「わかった。いつから教え始めればいい?」

「さっき城の探検しておいでって送り出しちゃったから……じゃあ、明日からお願いできる?」

「おっけー! “女の子の先輩”は任せて!」

みつきは胸を張ってそう言った

「もう1人の子も明日連れてくる予定だから、その人と一緒にお願い」

「一応聞くけど……誰にお願いするの?」

「一番最初にこの世界に召喚された勇者チームにいた“聖女”を呼んでくるよ」

「へぇ〜」

興味はなさそうだった

「その人の方を、みつきより頼りにしてるんだよね」

「え!? 私は!?」

「ん〜……おまけ?」

「ひっど!! じゃあ私いらないじゃん!」

みつきは冗談めかして怒ってみせる

「いや、いるって。向こうはお母さんくらいの年齢だから、歳の近い子が一緒にいた方が、きっと心強いよ」

「カナエって子は何歳なのよ……」

「この世界だと15歳だね」

「前世と合わせたら?」

「うーん、30くらいかな」

「思いっきり年上じゃん!」

「大丈夫大丈夫。同級生くらいの感覚で接してくれたらいいよ」

「そう? じゃあ、そうする」

「うん、じゃあ頼んだよ。俺はまだやらなきゃいけないことがあるから、もう行くね」

「わかった。明日どこに集まればいいかだけ教えてね」

「うん、それじゃ」

そう言ってベルはみつきのもとを離れ、次の場所へと向かった