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600話 可愛すぎる先生

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600話 可愛すぎる先生

魔法付与の授業をするはずが、気付けば“魔力付与”の実習が始まっていた

「まずは剣全体に、魔力を均等に纏わせるところから始めてみて」

そう説明すると、生徒たちは静かに頷き、それぞれの木剣に集中を始める

ほどなくして、薄く色づいた魔力が剣に広がりはじめた

「まぁ、さすがに5年生だね。このくらいなら全員できるか」

ベルが見渡すと、生徒たちは全員、しっかりと魔力を纏わせることに成功していた

「うん、いい感じ。じゃあ次のステップに進もうか」

そう言って、ベルは手元の剣を軽く持ち上げる

「今の状態だと、みんなの魔力は剣から少し外に“広がってる”よね? これはこれで悪くないけど――もっと精密に纏わせられるようになろう」

ベルの剣に纏った魔力は、まるで刃の形をなぞるように、ぴったりと貼り付いている

「目標はこれ。剣からはみ出さず、ぶれることなく、魔力を“剣の形に沿って”纏わせる。集中して、挑戦してみて」

ベルの言葉に、生徒たちは真剣な表情で軽く頷き、それぞれの木剣に意識を向け始めた

静まり返った訓練所に、わずかに木剣を握る手の衣擦れや、息を整える音が響く

その中を、ベルはゆっくりと歩きながら、生徒たちの魔力の流れを一人一人観察していく

「うん、いいね。そのまま焦らず……」

一方で

「お、そこもう少し剣の縁まで意識して」

ときおり声をかけながら、生徒たちの集中を切らさないように気を配っていた

「惜しいね……ここは、こうキュッとする感じでやれば上手くいくよ」

「は、はい」

そう言いながら、ベルはそっと横に立ち、生徒の木剣を握る手に軽く手を添えた。

ふわりと魔力を流し込むように、生徒の手の上からゆっくり導いていく

(顔が近い!!)

目の前にあるのは、整った横顔。少し前髪が揺れて、息がかかるほどの距離

(か、かわいい……!)

緊張で魔力の流れが一瞬ブレたのを見て、ベルは小さく笑った

「ふふっ……あれ、集中切れちゃった?」

「す、すみません……!」

慌てる生徒の様子に、ベルはくすっと微笑んだ

「大丈夫。よく頑張ってるよ。ゆっくりでいいからね」

「頑張ります!」

そう言ってベルは次の生徒のもとへと向かった

そのまま同じように何人かへ感覚を教えていると――

「せ、先生」

「ん? どうしたの?」

「先生が可愛すぎるせいで集中できません」

(よく言った!)

(よくぞ言ってくれた)

(ほんとそれだよ!)

1人の生徒の指摘に、同じように教えられた生徒たちは、心の中で盛大に頷いていた

「そう?」

「はい。わかりやすく教えてくれるのはいいんですが……顔が近すぎて、その……恥ずかしいです」

耳まで真っ赤にして顔をそらす様子に、ベルは少し驚き、ふっと笑う

「嫌だったら、もっと早く言ってくれたら良かったのに。ごめんね」

「いえ! 嫌ってわけじゃなくて……ただ、可愛い顔が真横にあると……緊張して……」

(近すぎて、いい匂いするし……)

「そっか。じゃあ次はできるだけ離れて、手だけ伸ばす感じで教えるね」

「は、はいっ……」

そう言って、ベルは次の生徒のもとへと向かい、今度は少し距離をとりながら、優しく手を添えて指導を続けた

「もうみんな、魔力付与の基本は理解できたかな? あとは自分で少しずつ練度を上げていけばいいからね」

「はい!」

生徒たちはそれぞれ簡単に返事をしながら、まだ余韻が残るように木剣を見つめていた

「それじゃ、前半の時間もそろそろ終わりそうだし、最後に“魔法付与”でできる面白いこと、見せてあげる」

そう言ってベルは剣を1本取り出し、さらに前方へ横に長い土の壁を作り出した

「今教えたばかりの魔力付与を、もう少し精密に、効率よく使えるようになると――こんなこともできるようになるんだよ」

ベルは剣にすっと魔力を纏わせ、軽く構えると――

上から下へ、一気に剣を振り下ろした

ベルが剣を振り下ろすと、その動きに合わせて――ズバッ! と空を裂くような鋭い飛ぶ斬撃が走った

魔力で形成された刃は、地を滑るように一直線に走り、前方の土壁を容赦なく斬り裂いた

ドシュッ――!

という重く鋭い音とともに、壁には斜めに刻まれた深い一筋の切り跡が残った

「凄っ!?」

「え、今、飛んだ!?」

「魔法とかじゃなくて……斬撃!?」

驚愕する生徒たちを前に、ベルはにこりと微笑んだ

「これが“魔力の刃”。魔力を剣に纏わせて、斬撃の形に放ったものだよ。ちゃんと制御すれば、こうやって遠距離にも攻撃できる」

そう説明しながら、今度は剣に魔法付与を重ねる

「面白いのは今のじゃなくて、この後に見せるやつね」

『魔法付与・複製』

そう言って再び剣を振り下ろすと――

今度は斬撃が扇状に5本、バシュッ!と勢いよく飛び出した

ズババババッ!!

一直線だった前の一撃とは違い、

今度は扇状に広がるように斬撃が走り、土壁にくっきりと5本の裂け目が刻まれていく

「増えた!?」

「一つでもあんな威力だったのに、五つって……」

「そんなの反則でしょ……」

驚きを通り越し、呆れたような声すら漏れていた

「今のはね、魔力付与とちょっとした魔法付与の合わせ技だよ」

「えっ、そんな付与の仕方もあるんですか?」

「一応ね。でも、めっちゃ難しいし魔力の消費も大きいから、別に覚えなくても問題ないよ?」

「いやでも……一振りで5本飛ぶのは強すぎると思うんですけど」

「……仕方ないな〜。やりたかったら教えてあげるから、その前に魔力付与をきちんと極めて、ちゃんと斬撃を飛ばせるようになってからね」

「はいっ!」

そうして、生徒たちの熱気が冷めやらぬ中、3限目の授業が終わった