614話 隠された護衛依頼
614話 隠された護衛依頼
本格的に依頼の話が始まった
「今回の依頼は、私の娘、カールン王国第1王女の護衛をお願いしたい」
「名前は?」
「アリアという名だ」
「アリア王女ね」
「そうだ。12月15日がアリアの15歳の誕生日なんだ。その前後を含めた12月10日から12月20日まで、護衛をお願いしたい」
「なるほど……大事な一人娘の成人の誕生日、だからこその依頼ですね」
「本当はそのつもりだった。アリアは唯一の王位継承者だから、15の誕生日という大イベントには命を狙われる可能性がある。だからこそ、護衛を依頼した」
「なるほど、あり得ますね」
「だろ? だからそのつもりで依頼を出したんだが、状況が変わったんだ」
「変わった?」
「そうだ。5日前に、アリアが毒を盛られかけた」
そう言った国王の声は、先ほどまでとは違い、沈んだトーンに変わっていた
「大丈夫なんですか?」
「“かけた”だからな。毒味の段階で気づけたから無事だった。だが命を狙われたという事実は変わらない。だから、さっき君に毒の探知ができるか試させてもらったんだ」
ベルは静かに頷き、国王の意図を理解する
「なるほど。俺はアリア王女を守ればいいんだね」
「端的に言えばそうだ。攻撃、毒、暗殺……命を狙うあらゆるものからアリアを護ってほしい」
「了解。とりあえずそのアリアさんに会わせてくれる? 護衛するなら挨拶くらいはしないと」
「それはやめてくれ」
国王は少し困ったように眉をひそめながら言った
「なぜ?」
ベルは困惑した表情を浮かべた
「アリアはな、護衛を嫌がるんだよ。以前はつけていたが、それをひどく嫌がってな。結局、辞めさせた」
「なるほど……でもそれで毒殺未遂が?」
「毒殺未遂の後に護衛をつけてやったんだが、“護衛をつけるなら、もう外には出ない”って言われてな。本当にそのまま、3日も部屋にこもって飯も食わなかったんだ……結局、泣く泣く外したよ」
国王はその時の苦悩を思い返すように息を吐いた
「強いの?」
「この国の学園じゃ実力はトップレベルらしい。ただ、外の世界に出れば並のレベルだ。だからこそ護衛をつけたいんだが……頑なに嫌がるんだよ」
「確かに護衛は嫌だね。俺もそうだもん」
「あなたほどの力があれば、護衛なんて必要ありませんよね。けれどアリアは、普通の少女です。今の実力では、自分の身を守るのも難しい。だからこそ護衛をつけたいのですが、正面から付ければ嫌がられる。――そこで、アリアに気づかれないように護衛してほしいのです」
「じゃあ護衛としてじゃなくて、普通に会うのはいい?」
「もちろんそれは構わない。あなたは俺が招待した客人という扱いにする、ここでは自由にするといい」
ベルはその提案に少し肩の力を抜いた
「分かりました」
「改めて、アリアをよろしく頼む」
国王は深く頭を下げ、静かにそう告げた
「お任せ下さい」
ベルは軽く笑ってそう伝えた