615話 護衛の始まり
615話 護衛の始まり
カールン王国第1王女アリアの護衛をお願いされたあと
「護衛期間中はこの城へ泊まってください」
「わかりました。お世話になります」
「うむ。アリアはちょっと勘が鋭いからな、違和感があるとすぐ気付かれるかもしれない。違和感なく頼むぞ」
「できるだけやってみるね」
国王はどこか申し訳なさそうに息をついた
「苦労をかけるな。それからすぐに部屋を用意させる。朝昼夜の3食は部屋へ持っていかせよう。風呂も毎日、夜の19時から23時まで入れる。時間が遅れても言ってくれれば用意させよう」
「ありがとうございます」
「最後に……傍付きは必要かな? 希望があれば、執事でもメイドでも用意させよう」
「いや、必要ないよ。傍付きなんていたら隠密行動とかできないし」
「わかった、必要なら言ってくれ。ラルド、部屋を用意してくれ」
「わかりました。少々お待ちください」
そう言って、ラルドはすぐに部屋を出ていった
静かになった空間には、ほんのりと緊張の余韻が残っていた
「他に護衛をするのに必要なものはあるか?」
「特にはないかな。なので後で城の中を散策させてもらいますね」
「そのくらい構わない。俺の許可をもらったと言えばどこでも入らせてもらえる」
「わかりました。じゃあ、好きに歩かせてもらいますね」
その後、ラルドが部屋を用意して戻ってくるまで、二人は軽く雑談をして待っていた
「あ、そういえば……これお返ししますね」
ベルは空間収納からそっと何かを取り出し、机へ置いた
「……っ! これは!」
国王はそれを見た瞬間、椅子を押しのける勢いで立ち上がった。
驚きと安堵が混じった表情が揺れている
「どうしてあなたがこれを!」
「俺が冒険者なの知ってるでしょ? 盗賊のアジトで拾ったの。実はこの依頼を受けたのも、これを見つけたからなんだよね」
「……実は、3ヶ月ほど前に玉座の間に飾られていた国王の短剣が、何者かに盗まれてしまいまして……本当に、戻ってきてよかった……」
国王の声は震えていた。そこには深い安堵が宿っていた
「一体どの辺りの盗賊が持っていた?」
「マーベルドとドルナードの間にある、マーベルド寄りの森だね」
「そんな所まで移動していたのか……国内を探し回っても見つからないわけだ……」
国王は少し目を伏せて呟いた
その手はわずかに震えている
「……戻ってきてよかった」
「そうだね。これがないと王位継承もできないし、作り直すのも大変」
「まったくだ。国王の短剣は素材も精巧さも特別だからな」
「うん、だからこそ戻ってきて本当に良かったよ」
そんなことを話していると、部屋を用意しに向かっていたラルドが戻ってきた
「お待たせしました! お部屋の準備が整いました」
「わかった。ベル、どうする?」
「とりあえず部屋の場所だけ確認して、そのあと城の中を散策するよ」
「ラルド、案内してやってくれ」
「かしこまりました。お嬢様、参りましょう」
「はい。あと、一応言っときますけど、俺は男ですからね」
「そうだったのか!?」
「そうなのですか?!」
二人は、吸い寄せられるようにベルを見つめた
「そうだよ? まぁ今回の護衛中は臨機応変に対応するつもりだから、気にしなくてもいいけどね」
「わかった。どうなるかは分からないが、言ってくれれば、その通りに対応する」
「お願いします」
そう話しながら、ベルとラルドは用意された部屋へと向かっていった