621話 食後のやりとり
621話 食後のやりとり
まるで見られていたかのような完璧なタイミングで、扉がノックされた
「どうぞ〜」
「失礼いたします」
「失礼する」
先程の使用人に続いて、もうひとり――聞き覚えのある声の主が姿を現した
「お皿を片付けさせていただきます」
「ありがとう」
そう言うと、使用人は軽く一礼し、手早くお皿を回収して部屋を出ていった
部屋に残ったのは、ベルともうひとりだけだった
「なにか御用ですか? 国王様」
その声の主は、この国の国王その人だった
「夕食の際にアリアから報告を受けてな。あなたがアリアを狙った毒を食べてしまったと」
「確かに食べたよ。毒効かないけど」
「体調に問題は無いか?」
国王はかなり心配した様子だった
「例え効いていたとしても、毒くらいなら簡単に解毒できるから問題ないよ」
「それでも、心配するから気付いたならもう食べないで欲しい」
「……勿体ないじゃん?」
ベルは目を逸らし、小さな声で呟いた
「はぁ……とにかく、アリアが心配してたから次からは気をつけてな」
その返答に、国王は少し頭を抱えた
「はい」
「それから、毒入りケーキを作った犯人は捕まった」
「そうなんだ。その人はどうなるの?」
「王族を狙った犯行だ。だから、なぜ毒を入れたのか、共犯者がいるのか、どうしてアリアを狙ったのかを調べたうえで、判断が下される」
「そっか。毒は入ってたけど、ケーキは美味しかったって伝えといて」
「わかった」
「あと、俺のことはベルって呼んでくれたらいいよ。アリアさんにもそう名乗ったから」
「ベルだな。わかった。それじゃあ要件も伝えたし、俺は失礼する」
「分かりました」
そう言って、国王は部屋を出ていった
「多分……というかほぼ確実に死刑だよね……美味しいケーキを作るのに、残念」
《仕方ありませんよ。王族を狙ったということは、当人も死刑になることは覚悟していたでしょうから》
「それも、そっか」
その後は特に何もなく、ベルは誰もいない時間を見計らってお風呂へと向かった
(あ、ちょっと待って……この場合って俺どっち?)
《女湯行きますか? いいと思いますよ? 少しあとが怖いですけどね》
《冗談じゃん冗談。俺が女湯に入っちゃうと、どう考えても恐ろしいことになるんだから、絶対に嫌》
《えぇ、そういうことなので大人しく男湯で我慢してください》
《我慢してくださいって、そもそも男湯以外に入るつもり無かったから》
その後、誰も来ないうちにパパっとお風呂を済ませた――
そして、その日は静かに終わった