631話 憂鬱な朝
631話 憂鬱な朝
12月11日、護衛2日目の朝、今日もアリアは何故かベルの部屋へと来ていた
「ねぇ……」
「どうしました?」
「一応聞いておきたいんだけど、昨日アマリアさんはどうしたの?」
「あぁ〜、そんなこともありましたね。それがどうしました?」
「消してないよね?」
「どうでしょう? もしかしたら、もう会えないかもしれませんね」
アリアは一瞬、言葉を失った
「……ねぇ、本当にやめてよ? 冗談に聞こえないから」
ベルは答えず、ふっと微笑んだだけだった
「大丈夫ですよ。学園に行けば……答え合わせできますから」
「はぁ……もういいわ。あなたをここに残していくと、ろくなことにならない気がするから。一緒に連れて行きます」
「え? 嫌です。全力で」
「子どもか」
「10歳の、れっきとした子供です!」
「誤差みたいなもんでしょ。ほら、行くわよ!」
「ちょ、ちょっと!!」
アリアに手を引っ張られ、ベルは半ば無理やり連行されていた
「国王様に! 国王様に許可をもらってください!」
「お父様に?」
「そうです! 許可が出たら……行ってもいいです!」
「じゃあ、今から聞きに行きましょ♪」
「聞くだけ! ……って聞いてます!? だから引っ張らないでくださいってばーっ!」
ベルの抗議もむなしく、アリアに手を引かれながら、2人は国王のもとへと向かった――
「お父様、ベルを学園に連れて行っても構いませんか?」
「朝から騒がしいな……さっきからベルの声が聞こえていたからわかるが、ものすごく嫌がっているじゃないか」
ベルは引っ張られながら、声を張り上げて全力で抗議していた
「ベルは昨日も一昨日も問題行動をしたので、私が直接監視します。なので、ベルを学園に連れていく許可をください」
(ふむ……そういう理由か。まあ、それなら都合がいい)
「一応聞くが、ベルは何歳なんだ?」
「10歳みたいです。誤差みたいなものなので、許可をください」
「ん〜……俺が今から親書を書いてやる。それを学園長に見せてみなさい。それまでの学園に入る許可は、俺が出す」
「わかりました」
(ちょっと、許可しないでよ!!)
ベルは声に出さず、必死に抗議していた
「書くから、部屋の外で待っていなさい」
「……わかりました」
そう言ってアリアは、ベルを引っ張って部屋を出た
待っている間の数分間、ベルは小声で文句を言い続け、アリアはそれを涼しい顔で受け流していた
やがて国王が扉を開け、手に封筒を持って現れた
「はい。これを学園長に渡しなさい。読んでもらえれば、許可は下りるはずだ」
「わかりました。ありがとうございます」
「2人とも――頑張りなさい」
「はい」
「……はい」
2人は軽く頭を下げ、ベルはアリアに手を引かれながら、学園へと向かう道を歩き出した
「早く馬車に乗りなさいよ!」
「行きたくありません」
アリアは一瞬、ベルを見下ろした
「……早くしないと、着替えさせるわよ」
少しトーンを落とした声で、アリアはベルに言った
「なんでそうなるんですか?」
「学園に行くんだから、本当は制服を着せたいところだけど……今回はそれができないから、もっとしっかりした服を着せたいのを我慢してあげてるんだから」
ベルの服は今日も白で、変わり映えしない、いつものあの服だった
「どうせドレスとか着せるつもりなんですよね? 嫌です」
「なら、早く乗りなさい」
「……はい」
アリアの言葉に負けて、ベルは馬車へと乗り込んだ
そしてそのすぐあと、ゆっくりと馬車は動き始め、学園へと向かった