633話 特別入学
633話 特別入学
制服を用意してもらってから、ベルは言われた部屋に入り、すぐに制服へと着替えて戻ってきた
学園長室へ戻ってきたベルを見て、学園長は軽く頷く
「着替えました」
「うん、制服を着てたら生徒にしか見えないから大丈夫そうだね。じゃあ最後にこれ持っておきなさい」
そう言って、学園長はメダルのようなものをベルへと差し出した
「これは?」
「それは僕が学園長として、君に特別入学を認めた証だ。小さいけれど、学園内では正式な身分証明として通用するよ」
「ありがとうございます」
「それと、君は一時的とはいえこの学園の生徒という扱いになるから、護衛のためとはいえルールには従ってね」
「はい」
「アリアさん、入ってきて大丈夫ですよ」
「はい」
学園長が呼ぶとすぐに、アリアは部屋へと入ってきた
「あ、制服になってる。似合ってるじゃない」
「一時的に入学という扱いになるので、着替えさせました」
「そうでしたか、ありがとうございます」
「いえ。それとベルさんはアリアさんと共に行動することになります。授業内容は分からないと思いますが、基本的には静かにしていてくださいね。もし先生に当てられた場合は、事情を説明してアリアさんに代わってもらってください」
「わかりました」
「慣れない環境で戸惑うこともあると思いますが……無理せず、ゆっくり慣れていってくださいね」
「はい」
そう返事をして、ベルとアリアは学園長室を後にした
廊下に出て歩きながら、アリアがふと笑って言った
「さっきは何も言わなかったけど……あなた、本当にすごいのね」
「?」
ベルは首を傾げ、頭にハテナを浮かべる
「その制服のライン、あるでしょ? これはね、着てる人の魔力量を簡単に表示してるの。私のは金色ね」
そう言って、アリアは自分の制服の胸元を軽く示した
ベルたちが身に着けている制服は、白を基調とした格式あるデザインで、品位と清潔感を両立している。
王族や貴族の子弟も多く通う学園にふさわしく、見た目にも優雅さと実用性が融合された造りだ
男子用制服は、スリムなシルエットで無駄のない直線的なラインを強調している。
上着は立ち襟式のジャケットタイプで、前合わせは金属の留め具を用いた隠しボタン式。
肩から袖、胸元には銀糸で繊細な文様刺繍が施されており、格式と知性を印象づける。
ズボンはやや細身で、動きやすさと気品を両立している
魔力量を示すラインは、胸元から袖口、そしてジャケットの裾へと一本の線で繋がるように走っている。
このラインは特殊な発光素材を織り込んだ魔導繊維でできており、魔力量に応じて自然に発色する
女子用制服は、丸みのある柔らかいラインで構成され、可愛らしさと上品さを併せ持っている
上着はショートジャケット風で、やや絞られたウエストが印象的だ。
襟元は立ち襟と丸襟の選択式で、個性が出せる仕組みになっている。
下はスカートまたはズボンを自由に選択可能で、スカートは膝丈のプリーツ入り。
ズボンは男子よりややゆとりのあるストレートカットとなっている。
刺繍の意匠は男子と同様だが、配置は裾や袖口を中心とした、やや華やかな仕上がりになっている
魔力量ラインも男子と同様に、胸元から袖と裾へ向けて細く走っており、魔力に応じた色で発光する
このラインに使われている魔導繊維は、着用者の魔力量を感知し、色を自動的に変化させる仕組みになっている。
発光色は淡く輝く質感で、白い制服地によく映える。
控えめながら視認性の高いこの“魔力量ライン”は、学園内では一種のステータス表示としても機能しており、見る者が見ればその人物の実力がすぐにわかる
「色にはね、意味があるのよ。例えば――」
アリアは指を折って説明を続けた
「白は魔力ほぼゼロ、いわゆる非魔導士。青は平均的な生徒の色で、全体の6〜7割くらいがこの色ね。紫は高めの魔力を持つ子。貴族や魔導士の家系に多くて、優秀な子たち。私の金色は……かなり高い魔力量の証。王族や特待生なんかがこの色ね」
ベルは自分の袖をちらりと見た
「で、私のは……?」
アリアが少しだけ眉をひそめた
「黒はね、教師でも私は見たことない。正直、見た瞬間ちょっとゾッとしたわ」
「それって……」
「異常値、規格外ってこと。多すぎてむしろ危険視される色でもあるけど、逆に言えばものすごい才能を持ってるってことでもあるのよ」
ベルは返す言葉に少し困ったような顔をする
「他にも、暴走しやすい魔力の持ち主は“赤”。そっちはもっと危険扱いされるけど……あなたは不安定ではなさそうだから、そこは安心していいと思うわ」
「……なるほど」
「あとね、もしラインの色が“灰色”だった場合、それは測定不可能ってこと。魔力が封じられていたり、何らかの理由で測定ができない状態って意味」
「そんなのもあるんだね」
「ええ。灰色が一番、扱いにくいと言われてるわ。“わからない”って一番困るからね」
「不思議な制服ですね」
「確かにね。でも、その色を見ればその人のなんとなくの実力がわかるから、意外と便利よ?」
「なるほど」
(ここは魔法技術の最先端って言われるくらいだから、他では見られないすごいのが多いね)
そう思いながら、ベルは小さく頷いた
「簡単に説明するとね――この学園は、今の世界で一番進んだ魔法技術が集まる場所。魔法や魔道具、その他いろんな新しいものが、ここから生まれていくのよ」
「それなら、この広さも納得です」
「でしょ? あらゆる分野の研究者が集まって、この場所でさまざまな研究が行われてるの。その中に“教育機関”として組み込まれてるのが、この学園なのよ……すごいでしょ?」
アリアは少し得意げに、胸を張って言った
「さ、行きましょ。もうすぐ授業が始まっちゃう!」
「はい」
そう答えるベルの手を、アリアは当たり前のように握ると、そのまま迷いなく歩き出した。
ベルはその手に引かれるまま、後ろをついていった