LNCrawler

649話 上機嫌の帰り道、そして拘束

転生して進化したら最強になって無双します — novelba.com · All chapters

649話 上機嫌の帰り道、そして拘束

桟橋で出会ったおっちゃんにお土産を貰い、上機嫌で城へと帰っていた

(いいお土産貰っちゃった!)

ベルはニコニコしながら歩いていた

《良かったですね。鮮度もとてもいい状態で貰ったので、美味しいはずですよ》

《だよね! ……ポケットに大金貨でも忍ばせたら良かったかな?》

《あのおっちゃんもマスターに抱きつかれて喜んでいたので、大丈夫だと思いますよ?》

(羨ましい限りです)

《だといいけど、俺が抱きついただけで金貨1枚の価値なんてある?》

《なら帰ったらテレス様方に聞いてみてください。俺が1分抱きしめてあげるって言ったら、どのくらい払う? と、ボロボロ稼げますよ》

《テレスたちならほんとにいくらでも払いそうだからやらない》

そんなやり取りをしながら歩いていると、ベルの真横に馬車が停止し、勢いよく扉が開かれた

「おいお前、俺の嫁になれ!」

「……は?」

突然の出来事に、ベルは状況を理解できなかった

「だから、俺様の嫁になれ!」

馬車から降りてきた体格の大きな男が、ベルに迫ってきた

周囲からは「また被害者が出てるよ」や「可哀想に、さっきまであんなニコニコだったのに」などの声が聞こえてくる

「え、普通に嫌だけど」

(さっきまで気分良かったのに、最悪……)

「……女が俺様に逆らうつもりか?」

ドスの効いた声で睨みつけてきた

「そもそもお前誰なの?」

「俺様を知らないのか。これだから女は……」

男は呆れたようにため息をついた

「俺様はオーロック公爵家の長男だぞ? 公爵家の俺様の決定に逆らう気か?」

「公爵家ねぇ……ふっ、お前じゃ私の相手は務まらんよ」

「このやろう……!!」

男は歯茎をむき出しにして拳を振り上げた

「はぁ……」

ドンッ!

次の瞬間、男の頭が地面に叩きつけられた

その衝撃で、男はうつ伏せのまま石畳に沈み込むように倒れ込む。

微かに手足をばたつかせたが、すぐに意識を失い、動かなくなった

「忠告……一応言っておくけど、俺はこれでも急いでるし忙しいの。もう喧嘩売ってくるんじゃないぞ」

そこには拳を振り上げた男の姿はなく、ただ可憐な少女だけが立っていた。

地面に伏す公爵家の長男を横目に、周囲の人々は「あいつがやられたよ、ざまぁないな」「ご愁傷さま」「あの子凄いね」と小声でささやき合っていた

「見てないで、さっさと片付けなよ。こんなところでずっと止まってたら邪魔だから、なんならこんなゴミ、海にでも沈めておいたら?」

馬車を操縦していた従者に声をかけ、ベルはそのまま城へと帰っていった

――城に帰ると、疲れ切っているアリアと鉢合わせてしまった

「あっ」

「ベル、あなたとんでもないことしてくれたわね。どうして助けてくれなかったのよ〜」

アリアは、まるでゾンビのような声で訴えていた

「だってお勉強の邪魔したらいけないと思って」

「……勉強よりも私を優先しなさいよ!」

「えぇ〜……」

「だからって私の助けを求める声を無視するのは酷いじゃない! このこのー!」

そう言ってアリアは、ベルのほっぺを両手で引っ張りながら文句を言っていた

「いたいれす!」

「この程度の痛み、私が勉強地獄で味わった苦痛よりましよ!!」

ベルの抗議も虚しく、アリアの手はさらに力を込めていた

「はぁ……ちょっと来なさい」

「どこへ?」

そう言うと、アリアはベルの手をぐいっと引っ張った。

ベルは抵抗せず、大人しくその後に続いた

「横になって」

「えっと……?」

「いいから」

アリアはベルを部屋へと連れていくと、ベッドを指さして促した

「……え?」

状況が呑み込めず、ベルは戸惑う

「もう、ほら!」

「ちょ!」

痺れを切らしたアリアは、ベルに背後から抱きつき、そのまま2人はベッドへ飛び込んだ

「ちょっと! 何するんですか!」

「私を地獄へ送った罰よ。そのまま大人しくしてなさい」

ベルの抗議をさらりと受け流すと、アリアはそのままベルに抱きつき、やがて安らかな寝息を立て始めた

「えっ……寝たの?」

そう聞いたが、返ってきたのは静かな寝息だけだった

(俺にはこの王女様が何考えてるのかわからん)

《マスターはただでさえいい匂いがするので、抱きついてしまえば安眠効果は高いでしょうね。羨ましい……》

《……俺の気持ちも考えてよ》

ベルはすっかり抱き枕にされ、身動きも取れずにただ大人しく横たわっていた

(起こしたらまた怒られそうだし……仕方ないから大人しくしてよ)

そう心の中で小さくため息をつきながら、ベルはそのまましばらく抱き枕として過ごすことになった