651話 引き出される本気
651話 引き出される本気
今日の2限目の剣術実技の授業が始まり、ベルとアリアの模擬戦がスタートした
「それ! えい! や!」
アリアの素早い3連撃を、ベルは軽く剣を合わせるだけで難なく受け止めた
「うーん、もう少し本気出さないとね!」
息を弾ませ、さらに力を込めて突きを繰り出す。しかしベルはほんの少し横に体をずらすだけで、すべての攻撃をかわしてみせた
「手加減してる?」
(してるに決まってるでしょ、今怪我したら大変なんだから)
「いやいや。アリアさんの攻撃がちょっと弱いなって」
アリアは眉をひそめ、さらに連続で突きや回転斬りを繰り出す。ベルは剣を払ったり体をひねったりして受け止めつつ、当てないように気をつけながら一閃し、アリアの腕や肩に軽く触れる程度の反撃も加えた
「ひゃっ!? な、何今の……!」
「ちょっと様子見してみただけ」
驚いたアリアは踏み込みをためらうが、すぐに気を取り直して再び突進。ベルも軽く剣を振り返し、威力を抑えつつ間合いを詰めるだけの反撃を返す
「くっ……次こそ!」
汗が額を伝い、息が荒くなるアリアに対し、ベルは微動だにせず柔らかい笑みを浮かべ、剣先で絶妙に牽制する。アリアは全力で突き、払うが、ベルは体をひねって受け流し、反撃で剣先を触れさせる
「はぁ……はぁ……ちょっと疲れてきた」
連続攻撃で腕や肩の筋肉が重くなる。それでもベルはまったく疲れた様子を見せず、踏み込みつつ小さく斬撃を返す。触れるだけの一撃でもアリアは体勢を崩し、思わず小さくつまずく
「くっ……ま、まだ……負けない……!」
アリアの動きには鈍さが出始め、連続攻撃のスピードも落ちる。ベルは一歩下がり、剣先で軽く弾くように触れてバランスを崩させる。その間にもアリアは必死で踏み込み、一撃ごとに力を込める
「はぁ……はぁ……うぅ、腕が……」
呼吸は荒く、汗が滴る。ベルは微笑みつつ、腕や剣先で誘導するようにアリアを動かし、軽く反撃を返すことで全力で避けさせ、攻防の流れを作る
「ふぅ……これでどう?」
アリアは最後の一撃を放つ。ベルは軽く剣で払い、微笑みながら一歩後ろに下がる。まったく疲れを見せないベルに、アリアは膝に手をつき、へとへとになりながら悔しそうに見上げた
「……や、やられた……」
「まだまだ甘いね」
ベルの声は柔らかく、しかし余裕に満ちていた。アリアは疲労で体を震わせつつも、どこか嬉しそうに息を整えながらベルを見つめた
「……くぅ、悔しい……でも……楽しかった」
アリアは膝に手をつき、息を整えながらも満足そうに笑う。ベルは剣を下ろし
「本気で来てくれたから楽しかったよ」
その瞬間、ベルはふっと構えを変え、瞬時に間合いを詰める
「えっ、なに……?」
アリアが身構えると、ベルはほんの軽い斬りで肩に触れ、微笑みながら距離を戻す
「今のはさっきよりちょっとだけ、真剣モードね」
「ちょ、ちょっと待って! 今の本気なの!? 私ももっとやる!」
アリアは驚きつつ再び木剣を握り直し、全力で突進する構えを見せる
「いいね〜」
ベルは柔らかく微笑みながら、再び戦いの間合いを整え、二人の模擬戦は再び熱を帯び始めた
アリアは息を整え、肩の力を抜いて木剣を前に構え直す
「……今度こそ、本気で行くよ!」
ベルは軽く頷き、わずかに剣先を下げる
「了解。アリアさんの全力、受けて立つよ」
一瞬の間の後、アリアは勢いよく突進した。ベルは微動だにせず、剣先をわずかにずらして攻撃を受け流す。しかし今度は斬撃の角度を変えて反撃を加え、アリアの腕に軽く触れさせた
「うっ……今の……!」
「気を抜いたらすぐこうなるよ」
アリアは小さく息を吐き、再び突きを繰り出す。ベルは剣をひねり、受け流しながら体勢を微調整し、小さな斬撃でアリアの動きを制限する
「はぁ……はぁ……ちょっと……きついかも」
それでもアリアは踏ん張り、全力で剣を振るう。ベルは動じず、体をひねるだけで攻撃をいなす。しかし、相手の勢いを逆手に取り、軽く斬撃を返す。木剣がかすめるたびにアリアは体勢を崩す
「くっ……! まだ……!」
アリアの動きは徐々に鈍くなり、呼吸も荒くなっていた。それでも目には戦う意志が光り、腕や肩に汗を滲ませながら再び突進。ベルは微笑みつつ、剣先をわずかに動かし、攻撃を受け流しながら小さな反撃を重ねる
「ふぅ……これでどう?」
アリアは最後の力を振り絞り、回転斬りを繰り出す。ベルは素早く体をひねり、剣先で弾くように受け流す。それでも攻撃の勢いでわずかにバランスを崩す瞬間を作られた
「はっ……! これ以上は……!」
「まだまだだね、もう少し早く反応しないと」
アリアはへとへとになりながらも瞳には意志が残る
「……くぅ、悔しい……でも……楽しい」
息を整えつつ、再び木剣を握り直す
ベルはにっこり微笑み、戦いを締めるようにそっとアリアのおでこに一撃を入れた
コンッ!
「いだっ!?」
「おしまい、よく頑張ったね」
アリアは地面にヘタリ込み、おでこを押さえながらも、まだ戦意が消えず、息を整えて呟く
「……次は、絶対勝つからね!」
ベルは微笑み、柔らかく答えた
「うん、その気持ちが大事だよ。次も楽しみにしてる」
訓練場には汗の匂いと二人の呼吸が響き、互いに全力を出し切った余韻が静かに残る
アリアはまだ疲れで震える体を抑えながら、ベルを見上げて小さく笑う
「ベルはまだ動けるの?」
「動けますよ?」
ケロッとして答える
「すごいわね……私はもう限界。腕とかもう動かないし」
「何回か攻撃当ててますからね、それもありますよ」
「あれは当ててるって言わないわ。ただ押してるって言うの。攻撃ってより重心ずらされて大変だったんだから」
疲れたように呟いた
「王女様を怪我させたら大変なので、最後のやつ以外はそうですね」
「そうだ、最後の! あれめっちゃ痛かったんだけど!? 頭割れるかと思った」
「それはごめんなさい……力加減が苦手なので」
「これこそ加減してほしかったわ」
アリアは叩かれたところを擦りながら言った
「ベルがまだ戦いたいなら先生とやっておいで。先生暇そうだし、あなたなら相手になりそうだからさ」
「めんどくさいのでいいです」
「……先生! この子が先生と戦いたいって言ってます!」
「ちょっと!」
アリアはベルのめんどくさがりを見て、大きな声で教師を呼んだ
「なんだなんだ? アリアはもうやられたんか?」
すぐに教師がどこか嬉しそうにやってきて、笑いながら聞いた
「終始余裕の相手に勝てるわけないですよ、むしろ指導されてる感じでした」
「へぇ〜、お前そんな強いんか?」
「人並みには」
「人並みじゃアリアは倒せんよ、これでもこの学年で1番くらいには強いからな」
「そうですか」
ベルは興味無さそうに答えた
「ふっ……それで俺と戦いたいんか?」
「暇なら先生と戦って来なさいって言われただけです」
「俺は暇してるぞ〜、だーれも相手してくれないからな」
「……ちょっとだけですよ」
「よっしゃ、じゃああの辺でやるか」
そう言って空いてるスペースを指さした
「わかりました」
そして、今度は教師との第2戦が始まった