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655話 終わらせる決闘

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655話 終わらせる決闘

オルカという横暴な男にベルが決闘を申し込まれ、放課後までの時間は授業があったのかと思うほどあっという間に過ぎていった

「ベル、ほんとに気をつけてね」

アリアは心配そうにベルの手を握った

「大丈夫ですよ、アリアさんにとっていいことしかない決闘ですから」

「絶対勝ってね、負けたら私また泣くからね!」

「もちろんです」

ベルは笑顔で答え、ステージへと上がった

「逃げずに来たみたいだな、どうだ? お前が俺様にやられる姿を見に来たヤツらがいっぱいいるぜ? 国王まで来てるしな」

「国王様来てるんだね、じゃあ醜態を晒さないように気をつけなよ」

「はっ! お前がな!」

両者、ステージに上がるや否や言い合っていた

「それでは決闘のルールをおさらいいたします。どちらかが戦闘不能になるまで続けること。武器も魔法も自由です」

審判が簡潔にルールを説明する

「まず、決闘を申し込んだオルカ様、勝ったらどうしますか?」

オルカの前にマイクが差し出された

「俺様が勝ったらあの女を俺の女にする。そして壊れるまで楽しませてもらうぜ!」

気色悪い笑い声が響いた

「では、決闘を受けたベルさん、もし勝ったらどうしますか?」

「私が勝ったら、オーロック公爵家の存在価値を無くすような秘密を暴露します」

互いの勝利報酬を伝えた

「だそうです。続いて武器の確認です、まずはオルカ様から」

「これだ!」

大剣を片手で掲げ、観客がざわつく

「ベルさんは?」

「これ」

ベルの右手が光り、瞬時に杖が現れた。観客は驚きの声を上げた

「それでは、両者準備はいいですね?」

「あぁ」

「うん」

「始め!!」

そうして決闘が始まった

「手始めに、ファイヤーボールを10個くらい」

ベルがそう言うと、頭上に小さな火球が現れ、勢いよくオルカへと飛んでいった

「効かねぇーよ!」

オルカには全く効果がなく、そのまま一直線に突っ込んできていた

「なら倍ね、ファイヤーボール100」

ベルは少し微笑みながら言い、頭上に前よりも遥かに多い火球が現れた。火球は空気を切り裂く勢いでオルカに向かって飛んでいく

「こんなんじゃ俺様は倒せねぇぜ?」

全て直撃したはずだが、オルカは無傷でそこに立っていた

「まぁそうだよね、火属性耐性の魔法道具付けまくってるんだし」

「なんの事だかな、俺様にはわかんねぇな?」

「あっそ、温厚な私を怒らせたこと、後悔するなよ。それに火属性耐性つけてんだからまだ死ぬなよ?」

『ファイヤーボール』

ベルは詠唱を破棄し、魔法名だけを口にした。それでも十分だった。さらに、本来必要な魔力量50を自身の魔力で込め、追加でインフィリネーハを介して発動された火球は、近づくだけで鉄さえも一瞬で溶かすほどの威力を備えていた。

見た目こそ通常サイズだったが、その内に秘められた熱量は桁違いだった

(やべ、太陽みたいなのできちゃった……まぁいっか、死ね)

太陽を思わせるファイヤーボールを、ベルはボールを投げるようにオルカへと放つ

オルカは大剣で打ち返そうとするが、刃は触れる前に溶け落ち、火球はそのまま貫通

次の瞬間、ステージの地面へと到達したが――

「ここで爆発したら死人が出るでしょ」

ベルが小さく呟き、指を軽く指を鳴らした。

すると火球は爆発することなく、跡だけを残して静かに消滅した

場内に、遅れてざわめきが広がる

「剣が……溶けた?」

「今の、本当にファイヤーボールか……?」

観客たちは信じられない光景に言葉を失う

さらに、その火球が爆発する寸前に、ベルが自ら消し去ったとわかると――

「消した……? あの火球を……?」

「もし爆発してたら……学園ごと吹き飛んでたぞ……!」

静かすぎる余韻が、逆に火球の異常さを物語っていた。

国王ですら険しい表情を浮かべ、驚きを隠せなかった

そして国王は、今になってようやく理解した。

――自分がどれほどの存在に依頼をしてしまったのかを

静寂を破るように、ベルの声が響く

「避けるんじゃないよ。なんで避けたの?」

「お、お前が下手なだけじゃないか?」

溶けて貫通してしまった大剣を見ながら、オルカは今にも逃げ出したい気持ちを必死に抑え、強がりを口にしていた

「そうかな? 下手だって言うなら――今度は当ててあげる」

『ファイヤーボール×100』

ベルの頭上に、先ほど“太陽”と称されたほどの火球が、なんと100も並んで現れた。

一つ一つが鉄を溶かす威力を持つそれが、規則正しく整列して揺らめく光景に、観客たちは息を呑むしかなかった

「せっかく空が開けてるから――こいつの威力、見せてあげるよ」

そう言うとベルは、そのうちの一つを上空へと打ち上げた

次の瞬間――空の高みで、凄まじい閃光と共に爆発が起きる。

天地を震わせる轟音が遅れて響き渡り、観客席の誰もが思わず耳を塞いだ。

同時に、地上には焼けつくような熱波が降り注ぎ、まるで大気そのものが燃え上がったかのようだった

「……は? ……は?」

オルカは目の前で繰り広げられた光景を理解できず、震える声を漏らす。

そのまま膝から崩れ落ち、腰を抜かしたように地面へ尻をつき、放心状態で火球の残光を見上げていた

「さて、昨日は最高に良かった私の気分を害し、今日はアリアさんに暴力と暴言を吐いた。私さ、お前のせいで2回も気分が悪くなってるの……だからさ、鬱憤ばらしにこれを全部お前にぶつけるね」

ベルは笑顔を浮かべ、頭上に浮かぶ火球をゆっくりゆっくりと少しずつ降下させる

「お、おい待て! そんなの食らったらまじで死ぬから!」

「だから何?」

目が笑っていない笑顔で淡々と返す

「お、俺様を殺したら俺の親父が黙ってないぞ!」

「だから何? 私はお前を殺すためにここにいるんだけど」

「俺様を殺したら俺の親父がお前を殺すぞ!」

「好きにすれば? 私さ、あの火球をいくらでも作れるんだよね……これがどういう意味なのか、わかるよね?」

ベルは笑顔のまま、淡々と告げる

「だからさ、手始めにお前を殺す。その後に敵討ちで私を狙ってきたやつも殺す。最後に――お前の一族を根絶やしにする」

「お、俺様にそんなことしていいと思ってんのか!!」

「思ってるよ。王族の王女様に手を出し、トラウマまで植え付けた。その時点で、お前に残された選択肢は死だけだ」

「おい審判! こいつを止めろ!」

そう叫んで審判のいた場所を見たが、そこには誰もいなかった。

審判は――火球の爆発を目にした瞬間、一目散に逃げ出していたのだ

「あいつ! どこ行きやがった!!」

「審判に頼っても無駄だよ? どちらかが戦闘不能になるまで続けるってルールだったよね。だから――死ね」

その言葉とともに、上空に展開された火球が一斉に急降下を始めた