663話 華やかな会場の片隅で
663話 華やかな会場の片隅で
アリアの15歳の誕生日パーティーが始まり、会場はたちまち賑わいに包まれた
《ピクシー、あの3人がグラスを掲げているところも保存できた?》
《もちろんです。アリアさんの笑顔もしっかり納めました》
《おっけー……多分後で使うから、下から見た画角と正面からの3人を切り抜いたものを、ポストカードみたいに3枚ずつ作っておいて》
《わかりました》
そんなやり取りをしているうちに、アリアたち王族は上の階から下へとゆっくり降りてきた。周囲には人々が集まり、我先にと列をなしていた
(さすが王族、すごい人の数だ……まぁ俺は関係ないから、眺めてるだけでいいもんね〜)
他人事のようにその光景を見ながら、余裕綽々といった様子で壁にもたれて休んでいた
「随分余裕そうね」
「アマリアさんはあっちに行かなくていいんですか?」
のんびりしていると、アマリアが話しかけてきた
「毎日学園で顔合わせてるのに、わざわざあんな人混みに行く必要ないわ。それに……気配を消してないと、私のところにも集まる可能性があるし」
「王族の宿命ですね。私もマーベルドでのパーティーに参加する際は、いつも大変です」
苦労を知る二人はアリアの方を見ながら、同情の笑みを浮かべていた
「それよりさ、なんでもいいから変装でもしておいたら?」
「何がですか?」
(あのことは言わない方が面白いか……)
「ううん、なんでもない。これだけ伝えとくね。私のお父さんボルトと、この国の国王ルーカスさんは古い友達らしいよ」
「それが何か?」
「だから、二人が友達みたいだから変装した方がいいんじゃない? って思って」
「それになんの関係が?」
「ただのお知らせよ。まぁ、気にしなくてもいいわ。あっち見てたら多分わかる。あなたなら、多分気付けるでしょ?」
そう言ってマーベルド方面の壁を指さしていた
「あっち?」
そう言ってアマリアの指さした方を見た
「ん!? なんで!?」
「そういうこと。だから簡単にでもいいから変装した方が、あなたのためね」
「もっと直接教えてくださいよ!」
「伝えるより、見た方が早いでしょ?」
「どんな言い訳ですか……」
アマリアが指さした方角を見ると、まだかなり離れてはいるが、ものすごい速度でテレスの乗った馬車が空中を走っていた
(あんなの作れるヤツ、俺は1人しか知らない……後で絶対殴ってやる。余計なことしやがって……)
その馬車を作ったであろう人物の顔を思い浮かべ、ベルは静かに握りこぶしを作っていた
「それで、アマリアさんはなんで知ってるんですか?」
「あぁ、それはね。昨日手紙が届いたのよ。なんか、すごい馬車をお父さんが貰ったから、それを使って今日来るって」
「なんで?」
「お父さんが国王になってから忙しくて、プライベートでは全然会えてないの。それに、ルーカスさんの娘、アリアにも会ったことが無くて……。しかも、誕生会の今日も来たかったけど来れないらしいの」
「ふーん……」
「だから代わりにテレスを向かわせるって感じみたいね。自分は会えないけど、娘だけでもルーカスさんに会わせたいのかもね」
「なんて迷惑な……アマリアさんだけでも嫌なのに」
そう言いながら肩を落としていた
「本人の前でそれ言う?」
「私のこんな姿は、知り合いの誰にも見せたくないので」
「アリアより目立つくらいの格好しておいて、それ言う? こんな可愛いのに勿体ないの〜」
「はいはい、どうも。アマリアさんも素敵ですよ〜」
「自分より素敵なドレスの人に言われても、あんまり嬉しくないわね」
特に気にした様子もなく、笑って答えていた
「そんなことより、変装ってどんなのがいいと思います?」
「あのメガネとかいいんじゃない? アリアに渡してたあれ。あれならアリアも毒の確認してるんだなって自然にわかるし、あなた普段はメガネとかかけないんでしょ? なら分からないわよ」
カールンに到着してから2日目のお茶会で、アリアに渡したメガネのことを言っているようだ
「あれですか……」
(メガネなら自然に見えるか……?)
ベルは心の中でそう考え、同じものを作り、空間収納から取り出して眼鏡をかけた
「どうです?」
「ん〜……あんまり意味ない」
メガネをかけたベルをじっと見つめ、笑いながら言う
「ダメなんですか……」
ベルは少しムッとしながらも、アマリアをジト目で見返した
「わ、私悪くないじゃん! ベルの可愛さがメガネを貫通してるのよ」
(見た目を変えすぎるとアリアさんに怒られるし……このメガネで何とか……)
「そうですか……見た目を完全に変えることも出来ますが、それをするとアリアさんに後で怒られそうなので、このメガネで何とか誤魔化します」
「いいんじゃない? あなたがぼろを出さなければ誤魔化せるし、私も協力してあげるわ」
「お願いします、くれぐれもばらさないでくださいね。ばらしたら……一生恨みますから、ついでに呪います」
アマリアは軽く笑いながら、肩をすくめた
「わかってるって。あなたに恨まれて、しかも呪われたらほんとに怖いもの」
そんなことを話していると、パーティー最初の行事である交流の場は、そろそろ中盤にさしかかろうとしていた
「それにしても、すごいドレスね。どこで作ったの?」
アマリアは少し前からベルのドレスを眺めていた
「私の友達の自信作らしいですよ。今日のためにお願いしたら、こんなことになりましたけど」
自分の着たドレスを眺め、呆れたような笑みを浮かべる
「あらあら、可愛いお嬢様はご機嫌ななめですか?」
「……そんなこと言ってると、ここにマーベルドの王女様がいるよって叫びますよ?」
「あら? そんなことしたら、ここにドルナードの帝王様がいるぞって叫ぶわよ?」
お互いに笑みを浮かべ、冗談を言い合う
「残念、こんな小娘が帝王だなんて誰も信じません。なので私の勝ちです」
「……確かに」
少し悔しそうに、相手の言葉を認めていた
「のんびりしてるけど、護衛の方は大丈夫なの?」
「はい。こう見えて、この城全体を監視中です」
「聞いた私がバカだったわ。さすが最強の帝王様ね。一応聞くけど、そのドレスで動けるの?」
ベルの着るドレスは地面を少し引きずるくらいの長さで、ぱっと見ただけでも動きにくそうに見えた
「さぁ? 始まる10分前くらいに初めて着たので分かりません」
「何よそれ」
呆れたように笑っていた
「最悪、魔法で何とかします」
「結界あるけど?」
「私ならこの程度の結界ぐらい、容易に貫通できます」
二人は誰にも気づかれないように気配を消しつつ、そんな話を続けていた
だが、まだ誰にも見つからず、のんびりと過ごしていた