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665話 華やかな会場とかくれんぼ

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665話 華やかな会場とかくれんぼ

机の下に身を潜めていると、次第に美味しそうな匂いが漂い始めた

匂いにつられ、ベルが顔を覗かせると、隠れている机も含め、会場のあちこちに料理が並べられていた

全ての机へ料理が並べられたのを確認したルーカスが、高らかに宣言した

「皆の者、アリアの成人の誕生日を迎えられたことを感謝し、ささやかだが宴会料理を用意した! 料理を思い思いに手に取り、好きなように楽しんでくれ!」

(やばっ! 出ておかないと出れなくなる!!)

ベルはすぐに飛び出し、目についた知り合いの後ろに隠れた

会場内では、参加者たちが好きな料理を取り、歩きながら食べたり会話を楽しんだりしている

料理の並べられた机は会場の左右にあり、人々は思い思いの場所で宴を楽しんでいた

「なぁ、俺も取りに行っていいか?」

「テレスの目につかないように動いてくれるならいいですよ」

「無理だろ、お前さっきからめっちゃ目立ってんだから」

次に隠れ蓑にされたのはシモンだった

シモンは笑いながらそう言った

「見つかるのが嫌なんだったらずっと隠れてりゃ良かったのによ」

「ご飯食べたいじゃないですか」

「ふっ……なんて言うか危機感ないな」

「文句あります?」

「ないない。行くぞ、しっかり着いてこいよ」

なんだかんだ言いながら、シモンは体を大きく見せて、ベルを守るように歩いてくれていた

(ミーファがちっちゃかった時のこと思い出すな……こうして隠れてると、まるで小さな子が親の後ろに隠れてるみたいだ)

「俺が隠せるのは前からの視線だけだからな?」

「最悪それで十分です」

そう話しているうちに、料理の並べられた机の前へと到着した

「こんだけ人が集まってりゃ、早々バレんだろ。好きなの取ってこい」

「はい」

ベルは空間探知でテレスの位置を確認しつつ、周りの人を盾にして、小さな子が親の後ろでそっと様子をうかがうように、慎重に料理を小皿へと取っていった

「もういいのか?」

「はい」

「意外と食べないんだな」

ベルが手に持った皿を見て、シモンは笑った

「歩いて落としたら困るので」

「確かに……隠れるならどこがいい?」

「どこでもいいですよ。私はシモンさんの背中に隠れるだけなので」

「ほな、端の方に行くか」

そう言って、シモンはベルを前に歩かせ、後ろからの視線を自分の体で隠しながら、会場の角へと移動した

「俺がここで隠しておくから、隠れてな」

「迷惑をかけます」

「アマリアからちょっとだけ聞いたけど、アリアのためにそんな格好してんだろ? なら俺にも協力する義務がある」

「ありがとうございます」

シモンはL字の角を背にして立ち、その間にベルを入れるようにして隠していた

「そういやさ、ミーファは元気か?」

「元気ですよ。体調を崩したとか、怪我をしたとかも聞きません」

「そっか、元気ならいい」

それを聞き、シモンは少し微笑んでいた

色々話しながら、背中合わせになるような形で過ごしていると――

「お、おい……テレスがこっち来てる」

シモンは小さな声でベルに伝えた

「えっ……」

(こっち来てるってことは、今から逃げても見られるよね……)

最悪の事態に、ベルは次にどう動くか考えた

「適当に誤魔化してください、合わせます」

「俺に全部押し付けんのかよ」

ベルにだけ聞こえるように、小さく文句を言っていた

「助けてくれたら、ミーファの念写でもプレゼントしますよ」

「念写がイマイチわからんが、なんかくれるんだな。わかった」

そう言っている間に、テレスはシモンの目の前まで歩み寄ってきた

「お久しぶりです。シモンさん」

したたかな笑顔で話しかけた

「久しぶりだな。いつぶりだ?」

「最後にお会いしたのは私の誕生会のときですので、2ヶ月ほど前ですね」

「そうか……随分昔のことに感じるな。確かそのとき、ベル、テレス、ミーファ、レミアの4人が婚約の発表をしたんだよな」

「はい。あの時は一言も伝えられず、突然発表されたので私も驚きました」

テレスはそう言って微笑んだ

「参加してた全員が驚いたんじゃないか?」

「そうかもしれませんね……」

そう言いながら、テレスはシモンの背後にちらりと見えたドレスへ視線を向け、誰なのか確かめようと身を傾けた

だが、シモンが体をずらしてその視線を遮った

「そこに誰かいるのですか?」

「まぁな、俺の友達でな。人見知りだから、こうして隠してやってるんだ」

「そうなんですね。お顔を拝見することはできませんか?」

「無理だな。こいつ、仲いいヤツじゃないとすぐ逃げ出すから、これでもやっとなんだ」

「それなのに、どうしてパーティーに参加しているのですか?」

「こいつは嫌だって言ってたんだけどな。アリアの誕生会だし、居るだけでいいから参加しろって、俺が無理やり連れてきたんだよ」

「それにしては、とても素敵なドレスを着ていらっしゃいますね」

シモンの背に隠れていても、ドレスのスカートの膨らみは隠しきれず、それを見てテレスは感想を述べていた

「こんなんでも貴族は貴族だからな。それなりにいいドレスは持ってたんだ。それを着せて連れてきた」

「なるほど。では、そちらのドレスのブランドなどをお聞きしたりできませんか? とてもいいものなので、気になります」

「昨日ドレスの確認をしたみたいなんだよ。そのときアリアも聞いたみたいだが、本人は知らないらしい。母親が用意したみたいだから、自分では何も選んでないみたいだぞ」

「そうですか……それは残念ですね」

諦めたようで、少し悲しげな笑顔を見せていた

「……そういうことだ。諦めてくれ」

「わかりました。シモンさんがそう言うのであれば、私は身を引きます」

「そうしてくれ」

「では、失礼します」

そう言って、別の人の元へと歩いて行った

「これでいいか?」

「はい。見られたのはドレスだけなので、完璧です」

「そうか、ならよかったよ」

「お礼の品は後でいいですか?」

「そう……だな、後で頼む。今渡されてもしまう場所がない」

「わかりました」

「一応言っとくが、俺以外のやつにベルのこと聞かれても知らないからな?」

「私がここにいるのは、現状を見た人しか知らないと思うので、わかるとしたらミアラさんくらいですよ」

料理を取って壁際に移動する際に、ミアラが「今度はシモン兄さんか」とでも言うように苦笑いで見ていた

「ミアラか。言い訳が食い違っても知らんぞ? ほれ」

そう言いながらシモンは指さした

「なんですか? 指さされても見えません」

「そりゃそうか。テレスが今度はミアラんとこ行ったぞ」

「何とかしてください」

「できねぇよ」

そのとき、ミアラから「どうするの?」とでも言うような視線が飛んできた

それに対しシモンは口の前に人差し指を立てて「しー」と、黙るように伝えた

「今はこうして隠してやれるが、このあとはどうする?」

「その時はまた何とかします」

「ふっ……そんなバレたくないなら、いっそのことパーティー抜け出せばいいんじゃないのか?」

「それだと怖いアリアさんに怒られます。どうしていなかったのよって」

「そりゃおっかねぇな」

「なので会場内にはいないといけません」

「ならさ、透明化の魔法とか使えないんか? あれなら会場内にいることになるから大丈夫じゃね?」

「使えますが、それもアリアさんに怒られそうなのでできません。一応そこにいるっていう事実がないと、今みたいな感じで」

「絶望だな……なら隠密とかは?」

「それも透明化とあんまり変わりません」

「選択肢ないな」

「実質、誰かの後ろに隠れるか、机の下に隠れるかの2択なんですよね」

「机の下に隠れてたんかよ」

「はい。あっさり子供に見つかりました」

「子供ならわかるが、テレスはそんな行動しないからバレる可能性は低いわな」

「でも、机を移動されたら私は終わりです」

「まぁ頑張れ」

そう言いながらベルは、作戦会議の内容を頭の片隅に置きつつ、取ってきた料理を口に運んでいった