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666話 甘味とリスクの天秤

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666話 甘味とリスクの天秤

ベルとシモンは料理を口に運びながら、これからどうするかを話していた

「あ、なくなっちまった。取りに行ってもいいか?」

「ダメです。取りに行くなら、新しい盾を用意してください」

「だよな」

笑いながら言った。

すぐにシモンは辺りを見渡し、手招きで呼び寄せた

「兄さん、どうしたの?」

シモンが呼び寄せたのはミアラだった

「料理を取りに行きたいんだ。だから代わりに盾になってやってくれ」

「いいけど、ちょっと待ってて。自分の分を取ってくる」

「わかった」

そう言ってミアラは足早に料理の並ぶ机へ向かい、素早く食べたいものを取り分けて戻ってきた

「おまたせ。立ってるだけでいいの?」

「あぁ、ベルの顔が見えなきゃそれでいいみたいだぞ」

「わかったわ、交代ね」

「任せた」

そう言ってシモンはミアラにバトンタッチし、ミアラがベルを隠す盾となった

「兄さんは私を呼んだけど、盾は私でもいいの?」

「はい。シモンさんは大きいので立ってても隠れられますが、スカートまでは隠せません。ですが、ミアラさんならしゃがめば全部隠れるので、こちらの方が嬉しいです。それに、ミアラさんのドレスのおかげで横からの視線も少しは遮れますから」

「兄さんより盾としては優れてるわけね」

「そうなりますね。さっきテレスにドレス見られて大変でしたから」

「女の子だもん、そんないいドレス着てたら気になるわよね」

「そのせいで生きた心地がしませんでした」

「私も適当に誤魔化したけど、どうなるかはわかんないわ」

「とりあえず誤魔化してくれるだけでありがたいです」

「そう。もっと隠れるならミリアとマリアも呼ぶけど、どうする?」

「大丈夫ですよ、これ以上迷惑かけるわけにはいきません」

「その自覚はあるのね」

予想外というように笑っていた

「さすがにありますよ」

「できるだけ協力するって決めたから別に気にしないけど、何かくれるって言うならありがたく貰うわよ?」

そう言いながら、意地悪な笑みを浮かべていた

「なら、さっきシモンさんにあげる約束をしたものと同じものをプレゼントします」

「冗談で言ったつもりなのに、何かくれるの?」

「はい。可愛いミーファの念写をプレゼントしますよ」

「くれるなら、ありがたく貰うわ」

そう話していると、シモンが戻ってきた

「いい感じか?」

「多分ね」

「今見てきた感じ、新しくデザートとか追加されてたぞ」

「さっき私が取りに行った時にはあったよ」

「そうなのか、いつの間に追加されたんだろうな」

「さぁ?……ベル、取りに行きたい?」

「……」

(取りに行きたいけど、行ったら絶対にテレスに見つかる……どうしよう)

ベルはデザートの追加を聞き、ひとり悩んでいた

「行きたいです」

「そうか、ならまた人が増えるのを待つか。人が集まらないと顔見られるだろ?」

「そうですよね」

(早く食べたいよな〜)

《いっそのこと、堂々としてもいいのでは?》

《バレたら困るんだけど……》

《今のマスターが、テレス様の知るマスターだと気付かれなければいいんですよね?》

《最悪そうだけど……》

《それなら、バレた場合はシモンさんとミアラさんに前から学園にいたことにしてもらえばいいです。それなら今のマスターとテレス様の知るマスターは同一だとは思われません》

《それでもしバレたら、ピクシーは責任とってくれる?》

《もちろんです。その時は、マスターを誰にも分からないくらいキュートに仕上げて差し上げます》

《……嫌な予感しかしないんだけど》

《大丈夫ですよ、マスターの人生で一番可愛い状態になるだけですから》

《それが嫌なの、分かる?》

《いえ、マスターの気持ちより可愛さ優先です》

当然だと言わんばかりに、ピクシーは言い切った

《はぁ……そんなことよりも、今は隠れるのかデザート取りに行くのか考えないと》

《バレたくないなら、諦めるのが一番いいですよ》

《そうだけど……あるなら食べたいじゃん?》

《シモンさんかミアラさん、どちらかに取りに行ってもらえばいいんですよ》

《……出来れば自分で選びたい、デザートにも個性があるから見た目が気に入ったやつを食べたい》

《ワガママ言うなら食べなくていいですよ、諦めましょう》

《食べたい》

《なら、素直に取ってきてもらえばいいんです》

《……うん》

「……シモンさんでもミアラさんでもいいので取ってきてください、お願いします」

「自分で選ばなくていいの?」

「本当は選びたいです、だけど見つかるリスクと天秤にかけた時、圧倒的にリスクの方が大きいので諦めます」

「ならこれ持っててくれ」

「はい?」

シモンはそう言って、自分の取ってきた皿をベルに渡した。

皿を受け取ったベルは首をかしげる

「取ってくんだろ? ならその間持っててくれ」

「わかりました、ありがとうございます」

そんなベルが少し微笑むのを、2人は見逃さなかった

「なんでもいいのか?」

「はい……本音を言えば全種類食べたいですが、取れそうなものだけでいいですよ」

「わかった、ちょっと待っててな」

そう言って、シモンは机へと並べられたデザートを取りに向かった

「デザートが好きみたいだけど、よく食べるの?」

ベルの嬉しそうな表情を見て、ミアラが尋ねる

「まぁ……はい、夕食後に子供たちと一緒に食べてますね」

「そういえば子供たち保護してるんだっけ、なら子供たちも喜びそうね」

「はい。他にもミーファたち3人に振る舞う際も食べたりしてます」

「女の子はみんな甘いものが好きだもんね」

「……私をその女の子枠に含めてませんよね?」

「……さぁ、どうでしょう?」

ミアラは小さく笑って、とぼけてみせた

そう話しつつ待っていると、すぐにシモンがデザートを乗せた皿を持って戻ってきた

「ほら、頑張って全部とってきたぞ」

「ほんとに全種類!? ありがとうございます!」

ベルは感謝の言葉を述べ、頬を緩ませて瞳を輝かせた

「一つの皿に4つってのが3つある、どうする?」

「いただきますね」

そう言って皿を受け取り、宙へ並べる。

ベルの前には、デザートを乗せた3枚の皿がふわりと浮かんでいるように見えた

「なにこれ?」

「浮いてんな」

「ただの空間魔法です、返しますね」

預かっていたシモンの皿を返した

「サンキュ……空間魔法でこんなことできるのか?」

「その場の空間を固めて置く、ただそれだけなので簡単ですよ」

「んなわけないが、まぁいい。隠しててやるから好きに食べろ」

「ありがとうございます、いただきます」

「追加が欲しいなら言えよ」

「はい」

ベルは笑顔で返事をした

「新しい妹ができたみたいで、ちょっと楽しい」

「それわかる、ミーファは甘えてくれること少なくなったもんな」

ミアラがそう言うと、シモンも同じ気持ちだったようで、2人ともなんだか嬉しそうに話していた

2人の会話はしっかりとベルの耳にも届いていて、少し照れながらもデザートを口に運んでいた

こうして宴会は楽しく進み、やがて料理や会話も一段落を迎える。

会場のあちこちでは、満足そうに腰を落ち着ける者、名残惜しそうに談笑を続ける者、追加の料理を手にする者など、それぞれが思い思いに最後の時間を楽しんでいた。

笑い声やグラスの触れ合う音が響き、和やかな雰囲気が広がっていた