LNCrawler

672話 プレゼントの後に待つもの

転生して進化したら最強になって無双します — novelba.com · All chapters

672話 プレゼントの後に待つもの

プレゼントを渡す時間が始まり、ベルが一人の暗殺者を拘束してから、しばらく経った。

ようやく――ベルの番がやってきた

「ベルも用意してくれてたの?」

「一応ね」

ほんの一瞬だけ視線を泳がせたが、すぐにいつも通りの笑顔を浮かべる。

そして、手にしていたプレゼントをそっと差し出した

「ありがとう、開けてもいい?」

「どうぞ」

アリアはそう言うと、かわいく包装されたリボンを解くと、珍しい紙の包み紙を丁寧に開けていった。

破らずに丁寧に包みを開くその仕草には、王女としての品格と、紙を粗末にしないという意識が感じられた

「これって!」

そう言いながら顔を上げ、ベルの顔を見つめた

「はい、アリアさんにお気に入りの紅茶を教えてもらいました。だから、そのお返しとして、私の好きなものをプレゼントします」

「そっか……ありがとう」

お礼を言うその表情は、これまででいちばんの笑顔を浮かべていた

「そのまま飾っても、紅茶などに浮かべても映えるので、お好きなように使ってください」

「わかったわ」

「それから、これもどうぞ」

そう言って、今度は空間収納から1つの品を取り出して、そっと差し出した

「これは?」

「始まる前に“私の晴れ姿、しっかり目に焼き付けてね”って言われたので、忘れないように念写にして残しておきました」

「すごっ……」

その念写はピクシーによる加工が施され、まるで1枚のポストカードのようにとても美しく仕上がっていた

「そしてもう1つ、こちらもどうぞ」

続けて、もう1枚の念写を差し出した

「これもすごいわね、ありがとう」

心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべていた

「それぞれ3枚ずつ用意したので、アリアさんと、そのお父様、お母様に1枚ずつ渡してあげてくださいね」

「そっか、ありがとう」

「それじゃ、私はこれで」

「うん、ありがとう」

そう言って、ベルは列を離れた

列を離れたベルは、シモンたちが来るのを静かに待っていた

《マスター、そろそろ隣にいる緑髪の男を捕まえた方がいいかと》

《やっぱり?》

《はい。このままだと面倒なことになりますよ》

《そっか》

ベルはわずかに視線を動かし、男の方を見た

「ねぇおじさん、それ何?」

ピクシーの助言を聞き入れ、ベルは子供のようにそう尋ねた

「ん? お嬢ちゃん、どうしたの?」

隣にいた緑髪の男は、どこか作り物めいた爽やかな笑顔で聞いてきた

「手に持ってるそれ、何?」

「これ? これはおもちゃだよ。待ってる間、暇だったから遊んでたの」

男の手には、手のひらほどの大きさの丸い玉が握られていた

「おもちゃ? ちょうだい!」

無邪気な子供のように笑顔で両手を出した

「ダメダメ、これはおじさんのものだからあげられないな」

「えぇ〜」

「おじさん忙しいからさ、あっちで遊んでな」

そう言って、男はベルの背中を軽く押した

「……それが暗殺のための道具だから渡せないの?」

「っ!?……なんのことかな? おじさんそんなことしないけど?」

「嘘だね。だってその玉――どこかで用意されている魔法陣を起動するための魔道具でしょ?」

男は言い逃れようと一瞬息を呑んだ

「……バレてんなら仕方ないな」

言い終わるや否や、緑髪の男の手が滑り、ナイフの鋭い先端がベルの首筋に押し付けられた。刃先が微かに震え、冷たい金属の感触がこちらまで伝わってくる。男の目は険しく、低い声が会場の喧騒にかき消されるほど鋭く響いた

「死にたくなけりゃ大人しくしてろ。お嬢ちゃんは殺すつもりはねぇからな――だが、動けば終わりだ」

その言葉には脅しだけでなく、どこか焦りも混じっていた。周囲に気づかれぬよう振る舞っていたつもりの男が、追い詰められていることを隠せていない。ベルは冷静に刃先を受け止めるように視線を1点に据え、声を抑えて答えた

(あんまり心配はかけたくないんだよね――でも、捕えないといけない。どうしよっか)

耳元でピクシーの小さな囁きが届く

《さりげなく後方の騎士に合図を》

《了解》

ベルは微笑むように身体をわずかに傾け、低く穏やかな声で男に言った

「そんな雑な道具で人を巻き込みたくないでしょう? ここで止めてくれたら、証拠も残さずに済みますよ」

言葉と同時に、ベルは無詠唱の風をそっと放った。風は会場奥の灯りの揺れを拾い、自然な"視線の流れ"を作り出す。違和感に反応した数人の騎士が、音を立てずに静かに動き始めた――まだ誰の目にも明瞭には映らないくらいに静かに

男の表情が一瞬強張る。焦りは隠せず、刃先を押し付けたまま周囲を窺ったその瞬間、騎士たちが隙を突いて動いた。数歩の間合いで、制服越しに確かな力を感じさせる動き。次の瞬間には、男の腕は固く掴まれ、刃は手から弾かれて床に落ちた

会場の一角で起きた小さな作戦は、騒ぎになることなく収束へと向かう。ベルは淡い笑みを保ちつつ、息を整えた

「クソッ!」

吐き捨てるように叫ぶと、男は手に持っていた玉へ魔力を流し込み、魔法陣を起動させようとした

「残念。それ、もう接続は解除してあるよ」

「……そうか、残念だったな――お前ら! やれ!!」

床に押さえつけられながらも、男は全力で叫んだ。その声は会場全体に響き渡る――

直後、遠くの方で爆発音が轟いた

「……やってくれたね」

ベルは音のした方へ視線を向け、静かに呟く

「ははは! これでこの国は終わりだ! 滅びゆく光景を、せいぜい楽しむんだな!!」

その瞬間、城の外から――地を震わせるような巨大な咆哮が響いた

「おいベル! 何があった!」

騒ぎを聞きつけたシモンが足早に駆け寄る

「結論から言うとね、こいつの企みのせいで海が埋め立てられ――その結果、リヴァイアサンが激おこです」

「……は?」

「うん、つまり"海の王"が怒ってるってこと。たぶん、何もしなかったら国ごと沈むよ」

淡々と現状を告げるベルの声の奥に、かすかな焦りが混じっていた

――カールン王国最大の危機が、今まさに始まろうとしていた