695話 謎の反応
695話 謎の反応
アマリアがアリアをおぶってから、森をさらに進んだころ
「……あれ、いつの間にか寝てる」
様子を見るために横を見ると、アリアはアマリアの肩に頭を預け、静かに寝息を立てていた
目眩や頭の痛みに耐えながら、無理に体を動かしていた反動なのだろう
意識を保つことをやめた途端、体が勝手に休息を選んだようにも見える
力は完全に抜けているが、呼吸は安定している
その寝息を感じて、アマリアはひとまず大丈夫だと判断した
(今は、できれば相手チームには会いたくないわね)
「ミンちゃん、相手の反応とかはある?」
「ううん、相手チームみたいな反応はないよ……でも」
「でも?」
少しだけ言いづらそうに、ミンちゃんは続けた
「さっき、突然2つの反応が現れたの」
「もしかしてベルとミアラ?」
「わかんない。動いてないから相手チームではなさそうなんだけどね」
ミンちゃんは首を傾げる
「相手チームだったら、私の探知範囲の端から入ってくるはずなんだけど……急に、そこに現れたって感じなの」
「範囲内に入って来るんじゃなくて、いつの間にか範囲内にいたってこと?」
「そう。ずっと探知に意識を向けてたから、見逃すはずないと思うんだけど……気づいたら、そこにいたの」
「不自然ね……」
アマリアは一度だけ足を止め、考える
「どうする? 選択肢は大きく分けて2つよ。その反応が何なのか確認しに行くか、不確定要素が多すぎるから無視するか」
少し間を置いて、続けた
「アリアが起きるのを待ってから確認するって手もあるけど……いつ目を覚ますか分からないわね」
「じゃあ俺が見てこようか? 俺なら結界もあるし、罠でも大丈夫だと思うから」
「それも一瞬考えたけど、却下。今ちゃんと戦えるのは実質ケンちゃんとミンちゃんだけでしょ。そのうち、結界を張れる人を失う可能性があるのはリスクが高すぎる」
「そう?」
ケンちゃんは不思議そうに首を傾げる
「そうよ。それならまだ、どっちかにアリアを預けて、私が見に行った方がマシ」
「それは一番ないと思う」
ケンちゃんは感情を挟まず、淡々とそう返した
「じゃあ私?」
「ミンちゃんも重要な索敵要員よ。今それを欠く選択は取れないから、ダメ」
「そっか」
その後、アマリアは少しだけ黙り込んだ
視線を伏せ、状況を頭の中で組み立て直す
やがて、静かに顔を上げた
「私の魔力がもう少し回復するまで待つ。その後、全員で確認に行きましょ。何がいるか分からないから、近づくときはケンちゃんの結界で全員を守る」
短く息を吐いてから、視線を順に向ける
「うん」
「それと並行して、外部からの介入がないかはミンちゃんが監視。私が攻撃担当ね」
「わかった」
一瞬だけ、言葉を探すような間が空く
「魔力量的に強い魔法とか、持久戦になったらさすがに厳しいけど……今はそれが一番安全……だと思う」
その言葉で、張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ
「なら一旦休憩だね。ここで休憩する? それとも別の場所?」
「相手も近くにいないみたいだし、ここで休憩でいいかな」
「わかった。じゃあ休憩!」
ミンちゃんはそう言うと、迷うことなく地面に腰を下ろし、近くの木へともたれかかった
「どのくらい休憩するの?」
ケンちゃんも腰を下ろしてから、アマリアに視線を向けて聞いた
「ん〜……誰か時計持ってる?」
「持ってない」
「学園には持ってきてない」
「そっか。じゃあ短くて10分、長くて20分休憩しましょ」
「なんでその時間?」
ミンちゃんが、少し首を傾げながら聞く
「相手がミンちゃんの索敵範囲内に入ってきたら10分。来なければ20分って感じよ」
少し考えるような間を挟んで、アマリアは続けた
「20分もあれば、私の魔力もそれなりに回復すると思うしね」
「そっか……アリアは?」
「ちょっと手伝ってくれる? 本当は横に寝かせた方が休めると思うけど、今は敷くものがないから木にもたれかからせるわ。だから、体を支えてほしい」
「任せて!」
「俺も手伝う」
「ありがとう。1番楽そうなのは……あれかな」
そう言って周りの木を見渡し、もたれかかりやすそうな一本を見つけると、そこへと移動した
「じゃあ、私がゆっくりしゃがむから、2人はアリアの体を支えてね」
「うん」
「わかった」
アマリアが木の前で背を向け、慎重に腰を下ろしていく
ミンちゃんはアリアの体が傾かないよう足の角度や手の位置を細かく調節し、ケンちゃんは必要以上に触れないよう距離に気を配りながら、肩の位置をそっと支えていた
やがてアマリアが地面に腰を下ろすと、2人もゆっくりと手を離す
「よし……これで、大丈夫かな」
アリアは背中を木に預けるように地面に座ったまま、目を覚ますことはなく、静かな寝息を立てていた
「ん〜っ!……ふぅ」
アマリアはアリアを下ろしたあと、一度立ち上がって軽く伸びをしてから、その隣へと腰を下ろした
それに続いて、ミンちゃんとケンちゃんも同じ木を背もたれにし、地面へ腰を下ろす
「軽いとはいえ、さすがに腰に来るわ……歳かな」
「アマリアって、そんなに歳上だっけ?」
「今年で18歳よ?」
「それで歳って、18歳ならまだまだ若いでしょ」
「冗談よ、冗談」
ミンちゃんのツッコミに、アマリアは小さく笑って返した
「索敵は任せちゃうけど、2人ともちゃんと休んでね。この後、何があるか分からない場所に行くから」
「わかってるよ」
「索敵くらいなら、休みながらでもできるから大丈夫だよ」
「ありがとう。お願いね」
そうして4人は木にもたれながら、しばらくの間ゆっくりと休息を取った
アリアの静かな寝息だけが聞こえる中、4人は次に向かうことになる謎の反応へ備え、少しずつ体力を回復させていった