LNCrawler

第122話 馬の旅

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第122話 馬の旅

「おはよう。なかなかひどい集団」

「しょうがねぇだろ」

ディーンが言う。

君もサンタなら俺もサンタだ状態。今回、城塞によらずに行く予定なので、洗濯物だけじゃなく、旅のための荷物も多い。

ローザたちに鉢合わせしないようにギルドにも寄らずに行く。ギルドの仕事ではないし、届出は廃坑の側の馬を預けるところで出すんだそうだ。

出さなくてもいいけど、出しておくと行程の二倍の日数が過ぎても戻らない場合、坑道に入る他の冒険者に行方不明者がいると伝えてもらえる。

「おはよう、ジーン」

「おはよう」

アッシュが俺の作ったコートを着ている、執事もだけど。

眉間にシワがなければ普通に男装した女性に見える。胸はないけど腰から尻にかけてのラインが丸く。アズか? アズが頑張っているのか? 失礼だとは思いつつ、ついチェックしてしまう。

全員揃ってわいわいと貸し馬屋へゆき、頼んでおいた馬を引き出す。

「ルタ、よろしく」

図書館で馬に関する本も借りた。ルタに積んだ荷物の中にはルタの餌もあるのでよろしくお願いします。

馬は草食で、自然界では六時間くらいもぐもぐしている時間があるらしい。馬は胃が小さくて、一度にたくさんの餌が食えないのだそうだ。

ご機嫌で顔を擦り付けてくるルタに角砂糖をあげる、馬は甘いものが好きだ。

「うわ、賄賂!」

ディーンがちょっと笑いながら言うけど気にしない。ティナと双子の俺を見る眼差しがどうなるか、ルタにかかってるんだよ!

華麗にルタに飛び乗って、出発。あんまり馬が多いのもなんなんで、子どもたちはシヴァとクリス、レッツェに分乗中。ディーンとディノッソは重いから馬に負担にならないように。

俺が除外されてるのは、乗れなかったことを自己申告したからだ。危なく、アッシュか執事に分乗させられるところだった。遠乗りも行ったし、回避回避。

俺以外はディノッソたちと何度か討伐をしているので、子供達も慣れたもの。

「おおおおっ」

「ふっ」

特にクリスはバクに懐かれたらしく、すごい勢いで顎の割れ目を擦られている。ふっじゃない、ふっじゃないだろうそれ、赤くなってるぞ?

思わず顎の精霊がどうなっているのか見たら、対抗して擦ってた……。いやもう、俺以外の見える奴らはなんでスルーできるんだ?

「バクをひっぺがして注意したんだぞ? だが、クリスの方が顎をいじられると何故か落ち着くと言ってだな……」

後半すごく目を逸らしながらディノッソが言い訳してきた。

それ日常的に精霊にぐりぐりされてるからじゃ? いや、子どもの 躾 ( しつけ ) をスルーしたと思ったわけじゃない。

「ジーン、カッコイイ! 後で一緒に乗せて〜」

「あらあら」

シヴァの腕の中からティナが賞賛の声をくれる。

「ダメ! お父さん以外の男と二人乗りなんて許しません!」

シヴァと俺の間に馬を割り込ませるディノッソ。

「お父さん、横暴〜!」

「横暴〜」

「おーぼー!」

ディノッソ親子は通常運転。

「ジーンが混じると王狼一家の気が抜ける……」

「えっ?」

これが通常じゃないのか?

レッツェの言葉に思わず疑問の声を上げる。

「うむ、リラックスしているようだ。ジーンといると心が軽くなる」

あれ? もしや【解放】さんが仕事をしている?

アッシュの言葉にちょっと能力が影響を与えているのでは? という疑惑が頭をもたげる。

「俺は悩みが増えたがな」

レッツェの言葉でもたげた頭は寝た。

「バクもあんな感じなんだろ?」

結論、俺のせいじゃないと思います。

道中こんな感じで、馬たちに水を飲ませるため川やら池へ寄り、多少蛇行しながらまっすぐ目的地を目指す。

そろそろ弱い魔物の出る範囲に足を踏み入れているにも関わらず、襲ってくるものはない。ディノッソとシヴァの精霊が交代で威嚇しながら先行しているためだ。

「この辺に出る魔物は小型の猿の魔物だ。十四、五匹の群れが最大だってのは、レッツェが調べてくれてる。二十を超えるとあぶねぇけど、馬みたいなでかいのや、こんだけの集団を向こうから襲いにくることはまずない。ただ、ばらけると狙ってくるからあんま離れないようにな」

川辺で休憩、ディノッソの注意を聞いてなるべく集団行動。まあ、他の面子の反応を見るに、注意は俺と子どもたち対象なんだろうけど。

ルタに他の馬から離れないよう言い聞かせ、川辺でお茶の準備。高低差のない森を流れる小川は、浅く緩やかに流れている。この川は雨の少ない夏場になると消えてしまうこともあるらしい。

川で顔と手を洗ってスッキリする。その間に執事とレッツェがあっという間に火の準備。こういう準備の早さは俺では二人に及ばない。

「ジーン!」

「おう、果物食うか?」

ティナが抱きついてくるのを受け止めて聞く。

「僕も食べる〜」

「僕も食べる〜」

「食う、食う」

エンとバクに続いてディノッソが答え、ティナを俺からべりっと離す。

「まあじゃあ、全員ちょっと味見を……」

「高っ! お前はまたそういうものをっ」

オレンジを出したらレッツェに叱られた。大丈夫、こっちの世界のオレンジだ。バカ高いけどお金持ちは食ってるのを知っている、セーフのはず。

「ジーン様。冒険者に限らず、振舞われたならともかく、普通は日当より高いものを仕事中に食べません」

執事から笑顔で教育的指導。

すみません、人数分詰めて来てしまったので消費してください。