LNCrawler

第126話 坑道

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第126話 坑道

坑道の入り口は整えられ、壁が崩れてこないように木で補強されている。山を掘ったものではなく、地下鉱山。

「ここに出るのは主にミミズ、甲虫の幼虫類、ネズミだな。大物はイラドっつーツノ持ちの牛と鹿の中間みたいなヤツ。周囲を食い荒らして地盤がやばいことになってることがあるから気をつけろ。あと何でジーンは棒持ってるんだ?」

入る前にディノッソが簡単に注意事項を口にする。

「松明調達の係の人にもらってきた」

ここの魔物はどいつも土も石も食って腹のなかに魔鉱石を貯めてる、その魔鉱石が目当てだ。最初に聞いた時はガンガン石を掘り崩すのかと思ったけど違った。ツルハシ用意しなくてよかった。

「棒なんかもらってどうするんだよ」

「中で使うだろ? 床、コンコンもできるし」

あとカンテラを下げるのに便利だし。

ディーンに聞かれたので答えたらなんか呆れた眼差しを向けられた。ディーンには普段の狩りで、俺が無意味に枝を振り回している現場を見られている。今回もそう思われている気配、おのれ。

松明に火をつけて坑道を降りる、最初は緩やかとは言えない坂だ。中はウォームグレイっぽい岩肌、時々赤錆色。入り口から離れると光源が松明になったせいで色はあまり分からなくなった。

松明を持っているのはレッツェとティナ。子供達は三人疲れたら交代で、レッツェは俺と交代。

「湿気がすごい」

「うむ、外とは違うな」

アッシュも坑道は初めてなのか、あたりを見回している。

「タイミング悪く雨降ったからな。水没してる通路もあるんじゃねぇかな」

レッツェ。

地中に染みた雨が坑道内に溜まるらしい、場所によっては地下水や温泉も。なかなか水が引かないので、昔は奴隷が水を汲み出していた。

鉱物を溶かした水は有毒なことが多くって、ついでに有毒なガスが発生することも。大体鉱山の奴隷は犯罪奴隷で使い捨てだったそうだ。

特に一酸化炭素は空気よりやや軽くて、無色、無味、無臭。まあ、火災が起きるような真似をする坑夫は今いないので平気?

こっちの世界でも毒ガス検知に 小鳥 ( カナリア ) を持ち込んだりするんだろうか? いや、むしろダイレクトに人間だな。可哀想な小鳥はいない。

ディノッソと執事がその辺の小石を拾っている。普通の鉱物も落ちてるのかな? 俺には普通の石に見える、反則して【鑑定】しちゃダメだろうか。

坂を下りきって、平らになった坑道の床は水で濡れ滑りやすくて厄介。掘ったあとはごつごつしてるんだけど、よく歩く場所だったところは角が取れてつるつる。昔は板が敷いてあったのか、朽ちたものが砕けてちょっと残っている場所もある。

「うをっ」

足元を黒い物体が走り抜けてゆく。

「おっと」

ディノッソが先ほど拾っていた小石を弾く。

松明の明かりが届かない先で、ギッ! っと嫌な声が上がって気配が消えた。あれか、小石はネズミ用武器か! 絶対当てられないヤツだ!

ネズミは怪我をしていたり、寝ているところに集団で寄ってきて齧ってくるとか、大量に湧いていて物量で襲ってくる。だが、普通に遭遇すると逃げる。素早くて倒すのは結構大変そう。

ティナが松明で鳴き声が上がった場所を照らす。尻尾を抜いても四十センチはありそうな黒いネズミが血の泡をふいて倒れているのが目に入る。

額にぷっくり盛り上がりが見えるので、ツノなしの魔物のようだ。

「餌ができたな」

「少しネズミ狩りをして数を稼ぎますかな?」

ディノッソと執事の会話。

「とりあえずツノと腹の中確認するわ」

レッツェが解体を始めるみたいなので、松明を代わりに持つ。

「おう、よく見とけ。この兄ちゃん上手いぞ」

ディノッソが子どもたちに向かって言う。

解体っていうか解剖かな? ツノを採取して、心臓に魔石がないか、腹に魔鉱石がないか確認。相変わらず無駄のない手さばきで、汚れも少ない。

子どもたちが興味津々といった感じで、真面目に覚えている。さすが家畜飼って、鶏も自分たちで締めている農家の子。

俺もだいぶ慣れたけど、ウサギや鹿みたいに食い物になるものか、オオトカゲみたいに見慣れないファンタジーな生き物以外、実はまだちょっと苦手だ。

もう少し奥に進んだところで、ネズミを餌にネズミをおびき寄せるという作戦が決行された。ネズミの死体を放っておいて、休憩とも言う。

「なんか風がある?」

「空気入れるのにところどころ立坑があんのよ」

「おお」

ディノッソの言葉にちょっと安心した。

温かいお茶を飲みたいところだが、ここには薪がない。朽ちた板が少ないのは先に潜った冒険者が燃やしてしまったのだろう。

なので本日は度数の低いお酒か、お酒を水で薄めたもの。

「おやつ配布、おやつ配布」

おやつは焼きチーズケーキ。

「わ〜い!」

クリームチーズを包み込んで焼き上げた。四角く二口ほどで食える小ぶりなサイズ。

「あら濃厚、チーズね?」

「美味い」

笑顔のシヴァとディノッソ。

「口に入れるとほろっとくずれてるのがいい。チーズの酸味も」

レッツェが気に入った様子。

――アッシュはイマイチかな? 美味しそうに食べてはいるが、クリーム系ほどじゃない。甘酸っぱい苺系のソースをつけたらいいかな?