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第189話 調べ物はここ

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第189話 調べ物はここ

夕方家に戻り、リシュと遊んで風呂に入る。そしてリシュと一緒に図書館にGo!

相変わらず崩れそうな装いの寺院を通り、図書館へ。暗い通路を進んだ先、扉を開けると広がる空間は明るく広い。何度来てもこのメリハリというか、雰囲気の変化はすごい。

司書さんがじっと見ていないとわからない程度に目を見開く。

「犬は入れるだろうか? 毛も落ちないし、吠えないし、いたずらもしないが」

「――精霊が来ることは禁止していないよ」

入り口で尋ねると許可が出た。

リシュを撫でて足を踏み入れる。

「ガラスの精霊が好む色付け方法とチェンジリングについて、お願いします」

司書の少年は黙って頷き、歩き始める。

ここの床のモザイクは色味を抑えて落ち着いた精巧なもの、地味な色合いなので美しいという印象より見事という印象のほうが先に来る。決して図書館の雰囲気を壊すことなく存在している。

これも精霊作なんだろうな。一体どんな効果なのだろうか? 自分で作ることにした途端、気になってきた。

そういうわけで追加でモザイクに関する本。目的の本を借り受けて、個室に入り込み紅茶を取り出す。リシュは足元で伏せてエクス棒をかじる体勢。

リシュを軽く撫でて、本を開く。まずはモザイクと精霊。こっちの世界、モザイクやオブジェ、特定の石の配置とかで魔法陣の代わりになるようだ。

基本、魔法陣は指定した精霊を呼び出して何かさせるものだけど、モザイクとかはもうちょっと緩やかに精霊を呼び込むみたいだ。水盆置いておくよりは寄ってくる精霊の種類を選べるということらしい。

アラベスク模様で決定しているので、とりあえずモザイクの模様のパターンとそれぞれ寄ってきやすい精霊とかはいいかな? 暇になったら目を通してもいいけど、棍棒持った巨人像とかとくにモザイクで作りたいとは思わない。

次は色つけだ。色付けは物質界での色付けというか、日本的色ガラス製法は学習したんだが、それじゃダメだとやんわり注意されたことがあるので、改めて調べにきた。モザイクはガラスで作る予定なのだ。

なになに? つける色を選ぶ場合、簡単なのは――この辺は俺が使った材料と同じ――に魔石を触媒として入れること。その際に魔力を注ぐのはもちろんだが、望む色の花や葉の雫を一滴垂らすこと。ほんのわずか、望む色を持つ精霊を象徴するものも。

ファンタジーだな。いやでも、本来の材料も使えって書いてあるから現実的でもあるのか?

アラベスク模様で水場に配置するなら青だよな。

全部読むのも大変なので、とりあえず使う色のページを先に見る。……って、精霊の効果が出た場合のことも書いてある。なるほど、触媒である程度望む効果に誘導できるのか。

製作時に精霊が興味を持って寄ってくるとは限らない、とか書いてあるけど。書いてあるけどね? あと俺、普通にお願いしてたな。頼む立場だし、知ったからには気に入る環境を用意するべきだなこれ。

井戸の魔法陣本体はある程度ミネラルを調整して軟水が出るようにした。で、欲を言えば、城や町に生活水として流す水は殺菌して有機物を除き、腐ったり、苔が生えたりしないようにしたい。でも、他はそのまま流して魚が棲めるような水にしたい。

昔、船乗り達が神戸で積んだ「布引の水」は、船が赤道を越えても腐らず、美味しかったって聞いたことがある。そんな水を目指したいところ。

ああ、野菜は硬水で育てても面白いのかな? がっつり入ったミネラル成分は、野菜の旨味にもなるけど苦味にもなる。主塔や町というか村の井戸は硬水なので比べてみるのも面白い。

いくつか利用できそうな色のレシピをメモに取り、本を閉じる。リシュがエクス棒から口を離して、終わったの? みたいな顔をして見上げてきた。

「もう少し待ってくれ」

そう言って膝に抱き上げ、リシュの後頭部越しに本を読む。リシュの胸に手を当てて支えつつ、もふもふを楽しむ一石二鳥。

えーと、黒い精霊のチェンジリング。対象に恨みを持ち、憎しみで執着している精霊が対象に子供ができた時、行う。

興味は興味でも憎しみからくる興味か。

対象の子どもと自分の力の一部で作った子どもを交換する、もしくは対象の子どもの何かを奪い、奪った分自分の力を注ぎ入れて子どもに対象を害させる。精霊自身が取り付く場合もあるが、そっちは魔物化と呼ばれる。

ああ、大きな精霊が力を使うと細かいのが生まれるけど、わざわざ自分の分身になるような力を注いでるのか。

黒い精霊とのチェンジリングは、肌や髪――特に目の周りが黒く染まる。

あれ? 魔物と同じく 隈 ( くま ) ? ファラミアは化粧で隠してるとか? うん?

読み進めると、魔物化みたいにイボイボやシワなどの肌の変質はないみたいだけど、濃い薄いはあるけど隈が出るのは確定らしい。

結論としては、ファラミアは黒い妖精とのチェンジリングではないようだ。

そしてうっかり、朝まで気づかれずに妖精界に連れて行かれた子どもがどうなるか、うっかり読んでドン引き。ペットか、ペット扱いか。

ああでも、俺もリシュをペットにしてるしな。ちょっと悩みかけたけど、今更返せないし、返したくない。

顔で顔をぐりぐりしたら、なめられた。くすぐったい。