LNCrawler

第190話 ガラスタイル

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第190話 ガラスタイル

モザイク用にガラスタイルを作り始めた俺の周りに、興味津々といった感じで集まっている精霊たち。

サファイアを砕いてごりごり。

タンザナイトを砕いてごりごり。

ブルームーンストーンを砕いてごりごり。

サファイアはコーンフラワーブルーより薄い青から黒に近い青まで。もったいないけど粉にして、そこに対応する色の花びらの雫を一滴、二滴。魔力の加減を間違えると、ダマになったり魔石の効果がなくなるので慎重に。

かき混ぜ終えると出番だとばかりに、青い衣をまとった精霊や、青い肌や毛を持つ精霊が集まってくる。他の精霊はちょっと残念そう。

各魔石は手持ちと、無ければ買った。でも対応する色を持った花とか都合よく同じ季節で揃うと思うなよ!? みたいな。

青い矢車菊は少し前に咲いていたのを覚えていたので、ちょっと北上して手に入れてきた。スミレも青紫系でちょっとずつ色が違うものを季節の遅れた森の奥で。

途中、山の上で青い 芥子 ( けし ) を見つけたけど、やばい効果がつきそうで止めた。これからは花もせっせと摘んで【収納】しておこう。果実でもいいけど、青系の果実ってあんまりないし、皮と中身で色が違うのも困る。

それにしても、タンザナイトってタンザニアから取れるからその名前だったんじゃないのだろうか? 俺にわかりやすく翻訳されとるのか? そう思って【鑑定】したらこっちでの名前が出た。【言語】さん、便利、便利。

「はい、はい。水の殺菌に協力してくれる精霊もお願いします」

他のガラスの材料の入った容器と混ぜてゆき、精霊に声をかける。

「あ、最後のこの壺は特に殺菌はしないんで自由です。植物育てたり、魚が棲んだりする用です」

しょぼしょぼしている精霊がいたので声をかける。

残りの精霊が全部群がった! 俺は見ないふりをする!

……大丈夫かこれ? まあいいか。直接ガラスがどうこうじゃなくて、上を流れる水に与える効果だし。

「なんだ、つまらん。またガラスか」

坩堝 ( るつぼ ) で材料を溶かしているとヴァン登場。

「これでモザイク作ろうと思って。先日のお礼にダイヤ買っておいたのでどうぞ」

「おう」

ヴァンの見学でガラスを作る。もしかしてこの作業小屋の炉に火を入れるたび遊びにくるんだろうか。そして剣を打つのを待ってたりするんだろうか。

一回目のガラスの時に剣を打ったことを話したら、興味を持った風だった。いつかこの圧に屈して作ってしまう気がするが、確実に怒られるやつが出来上がる。いや、でも外に持ち出さなければセーフ?

ダイヤをつまんでは指先の温度を上げ、発光して消える寸前に口に放りこんでいるヴァン。暇そう。

作業を進め、溶けたガラスを流してガラス板を作る。冷めたら菱形、六角形、三角形、星型。精霊に願って、ガラス板に触れるとぴしぴしと音を立てて割れてゆく。

火の精霊に願って、角をちょっと溶かして丸めてもらって出来上がり。小さくなったガラスを、精霊が持ち上げて覗いてみたり、頬ずりしてみたりと騒がしい。

精霊はガラス質のものを通り抜けられないけど、きらきらひかるものが好きだからガラスも好きなのだ。時々激突して痛い目をみたのか、嫌がるのもいるけど。

「ふーん、綺麗なものではないか。色が気に入らぬが」

ヴァンが一つ摘み上げ、光にかざしたかと思うと握り込む。

拳に渦巻く炎。

開くとヴァンの手の中のガラス片は青から美しいオレンジ色に変わっていた。いや、オレンジを纏う白? 燃える炎を見ているような錯覚を起こす。

「こっちの方が綺麗だ」

「ふん。雫には及ばんが、くれてやろう」

ヴァンが俺の手に色の変わったガラス片を落とす。

「ありがとう」

「ふ……」

ヴァンがニヤッと笑って消えてゆく。

ぬあああっ! 平静な顔して礼を言いましたが、むちゃくちゃ熱いですヴァン! ガラスを溶かす作業用に耐熱手袋してるのに熱いです!!!!

慌てて【収納】して手を冷やす。

作業も終わったし、精霊にお礼を言い作業場に汲みたての水と花をおいて終了。今回は積極的に手伝ってもらったので――作業場から一歩外に出れば、水も花もあるんだけど、まあ気持ちだ。庭の花も増やそう。

風呂に入って汗を流そう、さすがに汗だくだ。……さっきのガラス片、いつでも沸いてる風呂が作れる? 海の見える風呂か!

るんるんと浮かれながら風呂に入って、島の塔の設計を見直す。

元は上からテラスのある戦闘階、武器庫、居住スペース、台所、管理階、ホール、倉庫、倉庫、見張り所。ホールは中庭から見ると二階で、階段を使って入ることになる。で、台所で湯を沸かして、管理階には床に穴があってホールめがけて熱湯をぶっかけて敵を防ぐ感じらしい。

他の塔は地下が地下牢になってたり、ちょっとづつ違うけど大体こんな感じっぽい。もっと階数が少ない塔もあるし。俺の塔は岸壁に張り付くように下にも伸びていて、どうやら城の船着場に行き着く浅瀬のルートを見張っていたっぽい。その証拠に一番下の部屋には矢を打つための縦長の穴がいくつか空いてる。

ホールから城壁の上に繋がってたんだけど、そこは塞いで城壁へは外回りで行けるようにしてもらった。城壁への扉は一箇所そのままだけど、でかい 閂 ( かんぬき ) がかかっている。

ホールはホールでいいだろう。一番下は海を見ながらゴロゴロする部屋、その上は隠し通路の入り口もあるし、作業場でいいかな? 上は倉庫という名の空き部屋。

管理階は一応、接客用のダイニングでも置いて、台所は台所のまま。居住スペースは倉庫、武器庫が寝室になる予定。塔は階段分狭いから一階一部屋みたいな感じ。窓をつけると出窓じゃないのに物を置くスペースができてしまうくらい壁も分厚いので、外から見るよりだいぶ狭い。

風呂はどこに置こうかな。窓つけたいけど、あんまり窓だらけでもバランスが……。どうしたものか。