第202話 材木調達
第202話 材木調達
薬師ギルドからの依頼でしばらく森通いだというレッツェと別れて、本日は北の地へ。
岩ばかりで荒涼として、申し訳程度の草が生えているような土地。ただ、大樹の精霊の強かった大昔、この辺りも森で覆われていた。
図書館の記録では雪がかかるような寒さの中でもなお、枝を伸ばし、青々とした葉を茂らせていたようだ。で、その森が水に沈む場所が残っているそうで、材木を取りに来た次第。
木材は水中に沈めると、中にあるチリやホコリが樹液とともに外に流れ、水と入れ替わる。水と入れ替わることで 辺材 ( そとがわ ) と 心材 ( ちゅうしん ) がほぼ均等に乾燥が進む。不思議なことに水の中でも木の乾燥はするらしい。
均一に乾くので、割れや反りが発生しにくくなる。収縮して変なところが割れるのを防ぐために、先に入れておく背割れをしなくてもよい上、木の中の不純物が無くなることで、その木が持つ綺麗な肌が現れる。
あれです、乾燥が進んでいるので使えるまでの待ち時間が短い上に、綺麗な木目のお高い木の山――いや、湖なんです。
ここもまた、気温が低い、食い物がない、飼い葉になるような草もないで、進むのが大変な土地。
「うをうっ!」
そして魔物が魔法を使ってくる土地……っ!
噴石のような燃える石を『斬全剣』で斬り弾く。待って、待って、調べたんです、図書館で調べたんですよ! 防御魔法!!
「ファイアボール!」
ど忘れしたので、とりあえず相手の攻撃を上回る高火力を向かってくる魔法にぶつけて押し勝つプレイ。攻撃魔法はゲーム系のイメージですぐなんだが、防御って属性なんだ?
……って、倒した。押し勝って、そのまま本体に当たったようだ。そしてこのタイミングで思い出した、地の結界とか、鋼の盾とかだ。
避けてもいいんだけど、避けようのない広範囲魔法を使ってくる魔物とか出てきたら困るので学習しないと。
でも、戦闘に余裕を持てるようになってからにしよう。敵が魔法を使ってきたり、突然現れることに慣れるのが先だ。
茶色い丸い顔に赤いピノキオのような長い鼻、チェシャ猫のように三日月型に開いた口にギザギザの歯。赤い三角帽子にボロボロのローブ、赤い布靴、岩陰から湧き出るようにケケケと笑いながら現れて、魔法を放ってくる小人。
冷静に観察すれば、小人の使う魔法の軌道は真っ直ぐで避けやすい。三本ツノの狼の爪より遅い。
何より【探索】を使うまでもなく、現れる時に笑い声がするのでそこに向けて攻撃魔法を放てば、小人が何かする前に倒せることも判明。
周囲の音を聞くともなく聞き、進む。風の音と自分が歩く音、魔物の笑い声と破壊音。
んー。魔法は便利だけど、横着しすぎるといざという時とっさに動けなくなりそうで怖いな。それに使う魔法を考えないと素材が取れない。
生き物の気配がしない大地で実験をしながら、湖を求めてうろうろと。
地図を見て【転移】してきた。当たり前だが、実際の世界は地図よりはるかに広いのでどうしてもズレが出る。近づくこの過程も楽しいんでいいけど。
実験の結果、どんな属性の魔法でも編み針程度に細くするか、薄く刃のようにすればいいようだ。スピードは速く。
倒すだけなら派手な魔法でいいんだけど、精霊の労力を減らして素材も手に入れるには、最小限に絞ったほうがいい。絞った方がいいんだけど、精霊がですね! 面白がって力を送るのはやめろ!
すごく調整が難しいです……。
赤い帽子、黄色い帽子、青い帽子、色でそれぞれ属性が違うらしい。森の魔物は動物に憑いて変質したもの、ここの魔物はなんだろう? 生き物としての小人がいるのか、それとも元の精霊の姿の方に寄ったのか、どっちだ?
魔物化していない小人がいるなら会ってみたいな。でもきっとこれは生きた小人じゃない。何故なら手足が木製で、倒すとがらりと音を立ててバラバラになる。どんなに気を使って倒してもばらけるので、これはこういうものなのだろう。
素材として使えるんだろうかこれ? 【鑑定】してみると、どうやら魔力を帯びた木材で、魔法や占い用の短い杖や、タクトの素材になるらしい。細くて短いんで使い道は限られるようだけど。
歩いてきたところは気づかないくらい緩やかな上り坂。それが急に落ち込んで目の前に湖が広がった。
黒いような鈍色の水の中に、枝を広げるたくさんの木が見える。深い水の中に俺が両手を広げたよりもはるかに太い木々が沈んでいる。
さて、どうやって引き上げようかな? 根元を切って【収納】してしまえばいいのだが、何せ湖の底が見えない。
とりあえずこの湖にいる精霊に名付け、何かいい方法があるか聞いてみようか。
そういうわけでせっせと名付ける。湖一号とか、二号とか、湖大気一号とか、湖岩二号とか。
相談しても飛び込めとか無茶言ってくるんですよ、こいつら。