第211話 砂漠をさまよう
第211話 砂漠をさまよう
森の家もほぼ完成。あとは家具を考えてから調整しよう、家の中の壁はどうしようかな? 白の漆喰でコテ跡を残そうか、クリーム色の珪藻土の壁にしようか。
でも貰ってきたあの木で作った家具は、この素朴な家にはちょっと合わないかな。もうちょっとこう無骨というか、家に合わせて童話の中の家具っぽくしたい。
ああ、やっぱり壁は漆喰でコテ跡付きで仕上げよう。照明はレトロなランプ、一階はシンプルに、二階は絨毯とクッションをたくさん。あとつい買ってしまった謎の雑貨を詰め込もう。
いや、謎ではないか、用途はわかってる。使う予定が全くないだけだな。
また壁を何日かに分けて塗りつつ、好みな絨毯やらクッションを揃えるとしよう。
さて、今日はエスの古い神殿に行く。年のうち一月だけ行けるようになるダンジョンだ。
エス川のそばには、昔から使われてきた水位を測る井戸がある。入り口はその一つ、ただ、大昔に川筋が変わり、建物は忘れられて崩れて砂に埋もれ気味。
砂とほとんど同化したその場所を見つけるのがまず大変! 川の蛇行は変わってるし、周囲はだいたい同じ風景だし。先に見つけておけばよかったと思いながら、【転移】を繰り返し、精霊をとっ捕まえては場所を聞く。
精霊は知らなかったり、知っていても謎の道案内だったり。目印がないんだからしょうがないんだけど。
ゴスッ!
「暑い」
「元気だせよ、ご主人!」
相棒はエクス棒。
エクス棒は木なので乾燥に弱いのかと思っていたら、全気候耐性だった。まあ、砂漠の国とか雪で閉ざされた国に望まれることもあるよね。
そういうわけでバテ気味なのは俺だけ。家に戻ったりしてるんで平気なんだけど、こっちで元の場所に戻ってくると方角がわからなくなるので、川辺に出てそこから砂漠に向かうというのを繰り返している。
エス川周辺以外は砂漠だからね! 砂丘を越えたらすぐにエス川も見えなくなるし。そういうわけで地道に歩いています。
ゴスッ!
「ご主人、だんだん手抜きになってねぇ? オレはこっちの方が楽しくっていいけど!」
「動くと体力消耗するから」
砂の中を移動して、蛇のような魔物やワニのような魔物が襲ってくるのだが、その姿を確かめる前、砂の中にいるうちにエクス棒でゴスッとやっている。
最初は出てくるのを待って戦ってたんだけど、こいつら砂の中を進んでくる時、頭が必ず先になってるから、近づくのを待って急所が突き易いという親切設計。
あんまり待っているとガボッと出てきて噛んでくるので、ガボッとされる直前にゴスッとやるのが一番楽。
エクス棒は戦闘より、見えないものを突く方が好きなようだ。俺が選んだ目的というか、用途というかに合っていることなので存在意義的に嬉しいらしい。
何か執事の顔がよぎったが、なんだろうな?
そういえば、執事の枝を求める冒険は失敗に終わったという話の続きというか裏を聞いた。実は、棒――じゃない、枝自体は手に入ったんだけど、国に帰ったら枝を捧げるべき王子が暗殺済みという嫌な終わり方だったらしい。
枝を得ることに成功した若者がそれを知った途端、枝は消えた。若者の理想のうちには、その王子が国を治めることがメインで入っていたから。
国としてはそんな話は表に出せないから、元々入手に失敗したことにしているのだそうだ。俺は今回のお家騒動の後に教えてもらった。
なお、帰ったら新しく王太子になっていた第三王子は速攻で排除されて、腹違いの第二王子が立太子した模様。
枝を得た若者――勝手に青年を想像してたけど女性で、暗殺された王子の恋人だったみたい。そしてアッシュのお婆ちゃん。政略もあるけど、アッシュのお爺ちゃんの先代公爵がたいへん頑張って口説いたそうだ。
アッシュの国って女性が男前すぎないか? と、執事の話を聞きながら思った次第。
「あら、本当に人だわ」
歩みを止めず、行く手や後ろからくる砂の中の魔物をゴスッとやりながら歩いていると話しかけられた。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
こんなところで話しかけてくるのは精霊しかいない。たっぷりした布からのぞく、 黄金色 ( こがねいろ ) の肌。額と目元に赤い花模様、頭からかぶった布から漏れ落ちる長くゆるくうねる金髪。
でかいし砂漠の精霊かな? ちょっと前に場所を聞いた小さな精霊たちが周りをふよふよと飛び回っている。
「すみません、この辺りに砂に埋もれた古い神殿があるって聞いたんですが、場所を知りませんか?」
聞いたというか、正しくは本で読んだ、だが。
「あら、あんなところに用事なの? 何もないわよ?」
「あちこち巡るのが趣味なので。この目で見ることが用事です」
ものを聞く立場なので丁寧によそ行き笑顔。
「そうそう、ご主人はあちこちごそごそするのが趣味!」
「ごそごそって言うな、ごそごそって」
にかっと笑ったエクス棒の言葉で台無しだけど。
「……ここに木の精霊? 転換期、ということかしら? いいわ、ついてらっしゃい」
布をなびかせて優雅に向きを変える精霊。
転換期? 何だ?
よくわからないけど、連れてってくれるみたいなので喜んでついてゆく。