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第25話 ご飯は三度三度

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第25話 ご飯は三度三度

さて、俺も夕飯。

昼はサンドイッチだったから夜は餃子にしよう。強力粉、薄力粉、少しのラード、生地をこねて寝かせている間に具の準備。

ひき肉……はないのでひき肉並みになるまで細かくして粘りが出るまで練って、後から野菜を混ぜる。野菜を混ぜる時は潰すと野菜から水が出てきてしまうのでそっと。刻んだ野菜は絞ってはあるけど、ここで肉までビシャッとしたら台無しだ。

キャベツとニラ、白菜とニラの二種類の餡。生地はたくさん作ったので、後でエビの揚げ餃子も作ろう。朝焼いたパンも焼きたてのままだし、【収納】便利。入れた時のまま保存されるので、氷を作ったり冷やせない点を除いて冷蔵庫より使いかってがいい。

ごはんと餃子と中華風スープ。餃子の皮はつるっともちっと、焼き面はかりっと。噛めばじゅわっと。

リシュは餃子には興味がなさそうだったけど、今日は水のほかに肉を少々。おいしそうに食べている。犬に味のついたものをあげるのは罪悪感があるので、リシュはこれでいい。

だいぶ幸せ。

食事を終えて、風呂に浸かってさらに幸せ。やっぱり食と住は大切だと思う。

寝る前にちょっと働く、精霊に片っ端から番号振るだけだけど。姉が落ち着くまで名付けは終わらない感じだろうか。毎日やる気はなかったのだけど、集まってくる数がちょっと溜めたらまずい感じ。

一仕事して牛乳を飲んでおやすみなさい。

早起きをしてリシュと散歩、ブラッシングが日課になりつつある。いつもならその後に朝食と続くのだが、今日は早めに借家に移動。

ガランとした三階の部屋から出て、階段を降りる。寝ていると思っていたアッシュは起き出しているようで、一階から物音がする。

「おはよう」

「おはよう」

何をしているのかと思ったら、台所の水瓶に井戸から水を汲んでいた。シャツの腕をまくって水を汲み上げる姿が無駄にかっこいい。

「動いて平気なのか?」

アズがアッシュの肩から俺の肩に移って体をすり寄せる。アズもおはよう。

「ああ、すこぶる快調だ。昨日の言葉に甘えて風呂もいただいた」

どうやらすでに風呂には入ったらしい。風呂といっても盥だが。

昨夜、台所と風呂や薪は自由に使っていいと伝えてある。寝起きが悪いので三階には近づかないでくれとも。

「朝飯は?」

竃 ( かまど ) に火を入れながら聞く。風呂の湯を沸かした名残か、炭に火のオレンジが残っている。細い薪を足して火かき棒で炭を崩すようにするだけで燃え出した。

「まだだ」

「パンとチーズとかでいいか?」

棚にある保存用の木箱を開けて大きな丸いパンを取り出す。こんなこともあろうかと、一通り仕込んであるのだ!

「ありがとう、いただく」

そう言って水を汲むためにまた中庭に出てゆくアッシュ。力仕事だし、 普通は ( ・・・ ) 毎日のことだから大変だ。

これも木箱のおが屑の中から卵を取り出して塩漬け肉と焼く。卵は家から持って来た、こっちの卵はサルモネラ菌が怖い。

ベーコン……っぽいものは、こちらでは保存期間最優先なのか塩っ辛く硬いものが多い。それはそれでスープに放り込むといい感じなのだが、この時期はもう少し柔らかいものが出回っている。

秋の終わりに、冬に向けて農家が養えない分の家畜を潰して売るからだ。冬は飼料の調達が難しいから、とディノッソが言ってた。生肉はともかく漬けたばかりの塩漬け肉がまだ安い。さらに冬が深まると今度は値上がりするけどね。

適当な厚さに切って、パンも軽く 炙 ( あぶ ) る。塩漬け肉の焼いたやつと目玉焼き、パンにチーズとスモモの甘酸っぱいジャムを添えて完成。野菜? 野菜はスープで。こっちはあんまり生野菜食う習慣ないみたい?

「ありがとう。できたぞ」

中庭で井戸の手入れをしていたアッシュに声をかけて、作業場の机にトレイを運ぶ。

あ。目玉焼きが半熟派か固焼き派か聞くの忘れた。

特に目玉焼きの焼き加減や、何をつけるかで争うこともなく食べ終えた。こっちに醤油とかケチャップがないからかもしれない、あとソース。塩胡椒の不戦勝だ。

「おいしかった。特にこのパンにチーズとジャムを乗せると絶品だ」

アッシュの表情はあまり動いてないけど、気に入ったのか声に力がこもっている。

「ありがとう」

ジャムは森で採ったスモモを俺が煮た。けっこう酸っぱいのだが、白っぽいこのチーズにちょっとつけると酸味と甘みがいい感じだ。

「ところで小鳥のことなんだけど、寝ている間に改名した。すまん」

「――なんと付けたのだ?」

アズをなでながらアッシュが聞いてくる。

「アズ」

「いい名だ。名付けを受け入れたということは、精霊が君を好いているということだ、謝ることではない」

「アズはアッシュにも懐いているように見えるけど」

アズには拘束されていたというのにアッシュを嫌っている様子はなく、むしろ肩に乗りたがっている。

「そうか?」

「うん」

ちょっと嬉しそうなアッシュに肯定を返す。

「少し休んだらギルドがどうなってるか顔を出しに行くか?」

「ああ。ジーン殿にも泊めていただいた代金を払わねばな」

さて、アッシュの騙された分を取り戻しに行くか。その前にピンク頭の精霊がなんとかなってればだが。