LNCrawler

第253話 そそのかす

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第253話 そそのかす

ディーンたちの後をついて行く冒険者は俺の他にも何人かいる。事前に聞いた話でも、ある程度下の層に潜りたい冒険者はなんとなく連れだって行くって話だった。人数が多ければ、魔物が寄ってこないので、早く進めるからだ。

ある程度深い層になると、人間の気配に大喜びで積極的に襲い掛かってくる魔物も出てくるので、騎士団が出るような大討伐でもない限り今度は少人数にばらける。今はまだ浅い層だから、できるだけ集まって、でも剣を抜けるくらいには離れて。

ディーンたちはかなり深い場所に行くので、今ついて行っている人たちは途中で自分の実力に合った層に留まって減ってくんだろうけど。

そういうわけでカーンが目立つことをいいことに、間に何人か挟んでのこのこついて行っている俺。名付けた精霊は冒険者の集団に興味があるフリをして、行進の前に後ろにちょろちょろとしながら俺と念話だか心話だかをしている。

『じゃあ二十層から四十層までほぼ全滅か』

『そう~』

『僕らもね、逃げてきたの』

あれです、俺のコピー商品君が二十層まではおとなしくしてたらしいんだが、大暴れ実施したようで魔物も精霊も四十層くらいまでほとんどいないそうです。しかも鍾乳石や石灰、岩石の精霊たちを消費して何か所か崩落させてる模様。

……。

俺はそんなに考えなしのイメージなんだろうか。ああでも、いずれ全部捨てて出てゆくつもりだったから、あの時周囲にあったのは人も物もどうでもよかったかもしれない。

――よし! 俺のせいじゃない、姉のせいってことで一つ! そもそも俺から積極的に関わりにいったことないし! やっぱりなんかコピー失敗してるぞ。

『とりあえず、溶けたり、欠けたり、痛そうな精霊がいたら教えてくれ。でも 食わ ( とりこま ) れるかもしれないから、近づかないで』

『はーい』

森でユキヒョウに頼まれた馬みたいに、まだ憎しみに飲まれていない精霊がいるかもしれない。

これはあれだ、名付けもこれ以上は目立ちそうだし、下に早く行きたい理由もできたし、別行動決定だな。

勇者たちの尻拭いかと思うとなんか業腹だけど、精霊に名付けるのは俺が力をつけることになるし、【縁切】も強化される。名付ければ精霊が同意なく力を奪われることもない――勇者たちが力を振るうのに光の玉を消費することになる。

ちょっとくらい使いすぎる程度ならあとで大きく成長するから、ってなるだろうけど、ずっと好き放題力を使ってるっぽい勇者たちの「ちょっとくらい」は果たしてどれくらいだろうな?

まあ、この世界に精霊は 数多 ( あまた ) いるので、そう簡単な構図ではないけれど。俺の方が弱かったら、俺と契約してても力を奪われる恐れもあるし。

レッツェたちと休憩の時に話せるかな? 崩落してたり、崩落しそうな場所がたくさんありそうなことを伝えておきたい。ついてく冒険者の間でバルモアと副ギルド長という単語が飛び交ってる上、カーンの筋肉についても漏れ聞こえてくるので、近づけるか不安だけど。

カーンなら精霊と話せるけど、ここの精霊で順序だてて話せるほど人の思考に近い精霊がいない。ある程度こちらの話すことは理解してくれるけど、伝えるのは苦手。単語がでてこない感じ?

あれ、そもそもエクス棒とはしゃべらなくても意思の疎通はできるな。

『えー、テス、テス。ただいまマイクのテスト中』

『……なんだそれは』

カーンの憮然とした声が返ってきた。

『あ、つながった』

どうやら感度良好の模様。

『最初の言葉に意味はないから気にするな。そしてお知らせなんだが、二十層以降に進むと、もれなく黒精霊が体を乗っ取りにかかると思うんで気を付けて』

他に動物いない気がするので、共食いか、のこのこ来た冒険者に取り憑くかの二択だと思う。

『いきなり話しかけてきたと思ったら、どうしてそう突飛なんだ』

『俺も今、精霊に聞いたところだ。早いところ伝えた方がいいと思って』

『精霊はなんと? 俺は枝同士が相殺していて、どっちの精霊も喚ぶ気になれば喚べるが、望んだ方の枝が出る』

精霊を喚んだら白い枝が、黒い精霊を喚んだら黒い枝がでちゃうのか。そりゃ目立つな。

『二十層以降、四十層くらいまで、俺のコピー勇者が好き放題やったらしくって、魔物もいなければ精霊も消費されて黒いのがほとんどだって。あと、精霊を見境なく使ったらしくって、あちこち崩落してるんだと。天井と足元気を付けて』

使っただけではなく、食い散らかしたらしいけど。

『――俺が目立っても良いか?』

『隠しようがないくらいデカイぞ?』

『そういう意味ではなく、な』

微妙に歯切れが悪いカーン。

『副ギルド長に顔を売っとくチャンスなんじゃないか? 王になるんだろう?』

元の国民はもういない。カーンが王だった国は遠い昔に砂に埋もれた。だったら新しく手に入れるしかない。

『お前、本気で言っていたのか……。俺はジーンの『王の枝』なんだが』

『王になりたくないのか?』

カーンは落ち着いてるけど、野心がある。いや、野心というのは違うな、ずっと王様だったから王であるのが当然なのか。

『……』

黙り込むカーン。

気のせいでなければ、カーンに国をなくして無為でいることの虚しさが見える。契約で俺に縛られて、それに甘んじる諦めが。

『王様は枝を手に入れた俺が選んでいいんだろ、何の問題がある?』

人間の王が人間じゃなくたっていいだろう別に。手に入れたいモノもやりたいことも、それを叶える能力も、戦乱という時代も揃ってるのに何を迷う?

『……俺に精霊を集めろ。精霊から聞いたフリをして話そう』

『おう』

どうやら上手くそそのかせたようだ。

精霊たちにカーンの下に集まるようお願いする。きっと精霊が見える人々には、色の違う小さな光がカーンの顔の周辺を巡り、カーンの耳に囁き、目の前で気を引いているように見えるだろう。

俺にはなんか七色アフロみたいに見えるけど。