LNCrawler

第255話 崖下り

転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 — kakuyomu.jp · All chapters

第255話 崖下り

シュルムがちょっかいかけた国が、どこの国なのか後で地図を見ながら聞こう。中原の国を併合してもそう旨味はないから、その先の大国が目標なんだろう。幸いシュルムは海戦には弱いんで、島はひとまず安全なはず。

混ざって話せないのが歯がゆい。ディノッソが何かもぐもぐしているが何を食ってるんだろう。

む、知らないパーティーの一人が代表して、ディーンたちになんか話しかけてる。なんだろう? 握手してるから交渉成立?

休憩を終えて出発。俺はコートローブを羽織って、フードをかぶる。

崖を降りるルートへの分岐で人数がまた半分に減る。この辺で魔物がちょっかいをかけてくることがでてきたけど、全く危なげなく――というか、残った半分のうち何人かは崖降りる気ないな。ディーンたちが倒した魔物を回収してる。

休憩時間に交渉してたのはこれか!

十二層まで降りるのは俺も含めて五組らしく、普段より少ない。迷宮に入る時に金を払った係の人が、勇者が潜った直後にたくさん深い層に行った人たちがいて、今は逆に減ったって言ってた。

なお、無事戻ってきたのかどうかは聞いていない。黒精霊のこと知らなかったし、その前に二十層以降に行っているならまだ戻ってくる時期じゃないので、確認しようがない。

下が真っ暗な崖に、鎖が何本か垂らされている。ここ降りるんですか……? その鎖、大丈夫なの? 錆が浮いてない?

十二層までぶち抜きだけど、岩棚の休憩所が何箇所かあるのだそうだ。俺は最後に行きますよ、っと。

ディーンたちを含む何人かは、剣を取り回しやすいショートソードに装備し替える。崖を降りている最中、コウモリの魔物が時々出るからと聞いている。俺はもともとごく普通の剣を装備してるのでそのまま。

えーと。カーンどうするんだこれ、体重制限に引っかかってない? ああ、ベイリスに手伝ってもらうのか。

そっと風の精霊を先に降りたディノッソに同行させて岩棚までの深さを測る。ある程度距離を知っておかないとちょっと不安だ。

残った冒険者たちが綱で結んだ荷物を降ろす。それぞれのパーティーのメンバーが下で荷物を受け取ってるのだろう。下で明かりをつけたのか、オレンジ色が見える。崖の下の闇が深すぎて心許ない光だけど、目印としては優秀だ。

ここでの明かりは、草をきつく束ねて松ヤニや薬草を塗り、木の皮で巻いて縛ったやつ。三十センチくらいのもっさりしたやつだけど、軽くて扱いが容易なのでよく使われる。大きく燃えないので光源としては微妙すぎるけど、火種が長持ちするので重宝する。

荷物を降ろした冒険者が次々崖を降りてゆく。こう、ショートカットできる資格は崖を降りられる体力とか腕力があるやつなんだな。眼鏡は魔法つかってるけど。

あれ? なんかレッツェが手間取ってる?

「おう、最後だな」

笑って言うレッツェ。

「うん、最後だ」

崖を降りてる途中の冒険者に聞こえる距離なんで、当たり障りのない言葉を交わす。洞窟は響くのだ。

どうやらわざと手間取ってた気配?

「荷物降ろしてやろうか?」

ありがたく降ろしてもらって、隣り合った鎖で降りる。

見える範囲にいるのにいつもの馬鹿話を一緒にできないのは、結構 堪 ( こた ) えていたようだ。今自覚した。

鎖には等間隔で輪が繋いであって、足がかけられる。思ったより降りやすいが、輪にロープを通してレンジャーみたいにスタン、スタンと降りた方が早い気がそこはかとなく。風の精霊によると、下げられてる鎖は大体みんな同じ長さのようだし。

でもあんまり目立つことするのもな。

岩棚に無事到着すると、もう他の冒険者は次の岩棚に向かって下降を始めていた。

今度最後に残ったのはディノッソとアッシュ。ディノッソは無言で俺の頭をフードの上からぽふぽふと軽く叩いてから鎖を降り始めた。

アッシュは頭に手を持っていきかけて止まり、迷うそぶり。ぽふぽふして頂いても構いませんが。――彷徨う手に手を合わせ、もう片手で俺がアッシュの頭をぽんぽん。

久しぶりにアッシュの怖い顔を見た。照れてる、照れてるんだよな? 怒ってたらどうしよう。

さすがに八層分を一気にと言うわけにはいかず、途中の岩棚で長めの休憩。ディーンたちは四層の崖を降りる前に、魔物を回収していたパーティーから水袋を一つ貰ったらしい。岩棚は狭いからそんな会話が聞こえてきた。

聞き耳を立てながらまた干し肉を食べる。歩きながら食うために細く裂いて持ってきてるせいで、なんかスルメ噛んでる気分になるなこれ。

いっそスルメを出そうかと思ったが、あれは結構匂うことを思い出して止まる。

休憩を終えて鎖を降りていると、魔物からの挨拶が少々。俺を含む大多数は片手で剣を振るったり、短剣を突き出したり。だが、大多数のコウモリの魔物は、眼鏡の魔法で落とされた。

なるほど、魔法は手が離せない時とか距離がある時は便利だな。あと素材の回収を気にしない時。白色雁の時は魔法で仕留めても、回収できなくて困ったのを思い出す。ケースバイケースだな。

鎖を降りるのはちょっと面倒だったけど、いいことがあったので良しとする。